異世界バトル、終焉です。
テストも終わったので、改稿作業をしていこうと思います。
話数が少なくなったり、変わる点があると思われます。でも基本的には変わりません。
大幅改稿は面倒ですから。
瞑鬼の視線が瑞晴に当たる。二人の間に生じる見えない光のぶつかり合い。黙って見ていた千紗の方が押され気味だ。
何秒か視線を交わしたことにより、瑞晴も瞑鬼の思惑を察してしまう。そしてそれに気づいた瑞晴が、瞑鬼を止めないわけがない。
「……神前くん」
「……なに?」
「……そんなことして、どうするの?」
「……最後はきっちりと、な」
その言葉は、果たして誰に向けてのものだったのか。
頭蓋骨をかち割られた《なにか》に対してのものなのか。それとも、瞑鬼の友達になってくれた3人に対するものなのか。
誰も瞑鬼の考えはわからない。この場にいる四人は一人の例外もなく友人関係にある。そしてその絆は、一日やそこらで築かれたものではない。
瞑鬼だけは知っている。一年と少しの間、確かにそこに僅かながらの友情があったことを。一年間も同じ教室で同じことを勉強すれば、いやでも芽生えてしまう。
元の世界では芽吹くことのなかったそれを、瞑鬼はこの世界で手に入れた。
自分の力で得たものだ。これだけは間違いようがない。
濁った目が、世の中の淀みをためたような目が瑞晴を射抜く。
「……悪いな」
誰ともなくそう呟くと、瞑鬼は包丁を空に向けて抱え上げる。安い刑事ドラマの最初にあるような、最後のトドメを刺す瞬間を彷彿とさせる格好だ。
瞑鬼の目は、目の前で黙りこくる《なにか》に向けられている。倒れて目が見えないのならば、いくら瞑鬼の目で睨まれても問題ない。
止める気が無くなったのか、それとも止められないと悟ったのか。夜一はそっぽを向いていた。
瞑鬼は音もなく包丁を振り下ろす。全てに決別を告げるように。
しかし、包丁が《なにか》の頭を貫く一瞬前、瞑鬼の腹部に激痛が走る。ちょうど、明美と戦った時にも味わった、鋭いけど鈍い。そんな痛みだ。
「……ぅ……ょ」
脳が焼け切れるような痛みを感じながら、瞑鬼の目は自然と下を向いていた。くだらない情報が集まってくる。突き出された《なにか》の手。そして手だけが魔法で鉄化している。
事もあろうに、その腕は瞑鬼の腹を突き破り背中まで貫通していた。なんて事は無い。《なにか》は生きていたのである。
最後の力とやらを振り絞って、一人でも抹殺しに来たと言ったところだろう。全く、都合よく近寄ってしまったものである。
《なにか》はただでさえ醜い顔を歪め、ぐにゃりと微笑んでいる。
しかし、瞑鬼の意識は途切れない。まだやる事は残っていた。それをやり遂げるまでは、死んでも死に切れない。
「……よかっ……たな……。お前の……大……好きな……」
王だよ。最後の言葉は小さく、また弱い。
瞑鬼は持てる力の全てを持ってして、包丁を振り下ろす。
衝撃が手を伝った瞬間、瞑鬼の身体は傾いていた。
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瞑鬼は暗闇の中にいた。周りには何もない。
死を経験するのはこれで実に3度目となるが、それでも決して慣れたとは思えない。たとえ何度この世界に送られたとしても、死は適応できないようになっているのだ。
果てもない暗闇の中、瞑鬼は思い返していた。
なぜあんなことをしてしまったのか。後悔の念がないと言えば嘘になる。
確かに、夜一はいろんな感情で押しつぶされそうだったし、瑞晴と千紗もあのままだと罪悪感を背負いきれなかっただろう。しかし、せっかく手に入れた仲間たちだ。一緒に悩み、償う未来も十分にありだったはずだ。
それなのに、瞑鬼は一人の道を選んだ。自己犠牲に酔っていたと言われればそこまでだが、あの時点では瞑鬼は確かにそんな感情とはかけ離れた考えで動いていた。
アレに名前をつけるなら、例えるならば贖罪。何もできなかった、弱い自分への罪の意識があったのかもしれない。
死んで蘇るのは、この世界では瞑鬼一人だけだろう。恐らく、どこのとんな世界に行こうと、同じような魔法を持つ者は見つけられない。
いるとしたら、それは瞑鬼本人以外にはありえないのだから。
こんな感情は、きっと普通の高校生が持つべきものではない。それに、持てるものじゃない。
でも、瞑鬼は持っている。日本のごくごく普通の、ちょっとだけ複雑な家庭に生まれただけなのに、持っている。
常々思っていた。世界はつまらない。この世界は黒である。
変えたかったし、変えれるものなら変えていた。力さえあれば、瞑鬼は迷いなく世界を救う道を走っていただろう。
なんでこんな考えが自分に沸いているのかわからない。世界だとか、罪だとか罰だとか。本当は要らないのはずなのに。
次起きた時は、果たしてどんな世界が瞑鬼を待っているのだろう。元の世界に戻ることはない。この世界に、瞑鬼の居場所はできてしまったのだから。
また、一人になるのか。誰もいない空間の中で、瞑鬼は一人言葉を漏らす。
形のなかった心なんてのが、次第に象られて言ったような気がした。
何もないはずの空間に、一筋の光が生まれてくる。それはだんだんと迫ってきて、やがて瞑鬼の身体を包み込む。
シリアスな空気です。
胃が痛くなりそうです。




