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上書き勇者の異世界制覇  作者: 天地 創造
異世界制覇、始めました
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異世界秘密、バラします。

友達に秘密を打ち明けるだって?……正気じゃないですねぇ。無理ですねぇ。

僕には秘密が多過ぎますねぇ。

瑞晴が帰ってくるまでの何分間かの間に、瞑鬼は大体のことを話し終えていた。魔女特区から逃げて来たという設定や、両親がいないということ。


更には死ぬけど生き返るなんて到底信じがたいことすらも二人に教えたのだ。


当然最初は話半分だった二人だが、瞑鬼が魔法を二つ持っているということを鑑みて、あながち嘘だとも言い切れなくなったらしい。二人してなにやらボソボソと話したかと思うと、次には瞑鬼のいうことを信じていた。さすがは魔法の世界の住人。突飛な話にも耐性はついているらしい。


千紗のカップかき氷が完全に水と化した頃、瞑鬼のお伽話は終了を迎えた。


ホームランの当たりを引き換えてきた瑞晴が、3人の間に漂う不思議な空気に気づく。それと言うのも、夜一と千紗が難しい顔をして考え込んでいたせいである。


どうしたの?と訊ねるも、帰ってくるのは生返事だけ。今二人の頭の中では、大量の自問自答が繰り広げられていることだろう。正体不明の友人から、こんな話を聞かされれば当然と言える。


「……マジでどうしたの?神前くん……」


一人だけ蚊帳の外にいる瑞晴。その不安はかつての瞑鬼がずっと感じていたものだ。正直なところ、気持ちは痛いほどわかる。


「いや……、俺のこと話したらこうなってさ」


「それって、出身とか魔法とか?」


「あぁ」


「あぁ……」


何かを察した顔をする瑞晴。瞑鬼のことと言われて何か思うところがあるらしい。


そのまま暫く二人が帰ってくるのを待つ瞑鬼と瑞晴。シャクシャクという音だけが、田舎の無駄に広い駐車場に広がっている。


「まあ……、何であろうと瞑鬼は瞑鬼だな」


「……そうだね。もうそれでいいや」


なんとも雑な答えが出され、瞑鬼の話題は終了する。たとえどんな人生を歩んできたとしても、今ここにいればそれで良いという考え方だ。


二人も帰ってきたことで、とりあえず今日のところは解散となる。だからと言って、四人とも帰る方向が同じなので、結局同じタイミングで帰ることとなるのだが。


蝉のオーケストラが鳴り響く道を、四人の高校生が歩いている。商店街まではあと十分といったところだろう。明日がテストということもあり、四人の足取りは若干急いでいるようだ。


時折誰かの携帯がピロリンとなる度に、その都度誰かが携帯を開いてメールなりの返信をしている。


「……神前くん」


メールを開いたまま、瑞晴が口を開く。


「……ん?」


「お父さんから、『今ニュースで魔王軍が街に現れたらしいから早よ帰ってこい』って来た」


「あ、それ私のママからも来たよ。なんか一人だけらしいけど、危ないからって」


「……だとすると、俺に来たメールも本当らしいな」


「……まじか」


さっきからやたらとピロンピロン煩いと思っていたら、どうやらそんなメールが出回っていたらしい。瞑鬼の携帯を知っている人間はこの世界にいないので、一人だけ連絡が回ってこなかったのだ。


「……普段からそういうのあるのか?」


鞄を持つ手に力を込め始める瞑鬼。元の世界でいう不審者目撃情報のようなものだろうが、こっちは出会ったら冗談ですまない。注意しておくに越したことはないだろう。


普段からこんなことがあると言うのなら、警備体制も整っていることだろう。しかし、今回が初と言うのなら話は別だ。


「何年かに一回はあるかな……?」


「そうだな。それにいつもは出てもすぐ捕獲されるからな……。今回はなかなか捕まってないらしい」


その言葉を聞き、瞑鬼の不安はより一層深まってしまう。人類と魔王軍は一応は協定を結んでいるというのに、町に魔王軍が現れること自体が問題だ。それなのに、今回はまだ捕まっていない。


それに、こうした大々的に情報が回される、それも高校生にまでという事は、相手は何かと人に言えないことをして逃走中という事だろう。


この時間なら朋花はとっくに家に帰っている。あの陽一郎が用心棒としてついているのだから、そこについては問題ない。あとは自分たちの身を案ずるだけだ。


ここに来て、瞑鬼は自宅で見た書類のことを思い出していた。あそこには、黄金条約の撤廃が画策された書面があった。という事は、義鬼がこの事件の犯人ということも十分にに考えられる。あの義鬼のことだ。魔王軍に入っていたと言われても、なんの疑問もなく受け入れれる。


遠くでサイレンの音が聞こえる。今頃警察はさぞかし大急ぎで騒ぎの元凶を探し回っていることだろう。


「……大事になって来たな」


「……だな。まぁ、普通にしてれば会うこともないだろ」


最悪の場合として、この四人のパーティーで出会うことが考えられる。そうなった場合は、戦えるのは瞑鬼と夜一だけだ。


不安になればなるほど、考えれば考えるほど、それは近くにやってくる。それが瞑鬼という人間で、それが世界の選択だ。


そう。瞑鬼は知っていた。この世界は自分を嫌っていると。そして、それは常に自分の不幸として降りかかってくると。


街灯がゆらぐ。チカチカと。


漆黒の粒子が空間を漂い、明るいはずの光の元を黒く染め上げている。


「……普通にしてれば、ね」


デデドン!

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