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上書き勇者の異世界制覇  作者: 天地 創造
異世界制覇、始めました
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異世界探索、その眼前に。

何を思ったのか、連続で投稿しようと思ってしまいました。

三日坊主にならないように。

靴を脱ぎ、そのまま持って部屋に上がる。万が一帰って来たときに、勝手口に誰かの下足なんてあったら、その時点で警察さんがご出勤だ。そんなリスクをぽいぽいと置いておける瞑鬼ではない。


久々に嗅ぐ自分の家の薫り。青果店である瑞晴の家は、それはそれは果物の匂いで満たされていた。特に匂いのきつい物を仕入れた日なんかは、その日一日中フルーツ臭が部屋に充満しているといっても過言じゃないほどだ。


しかし、この家は違う。うまく言葉で表現できないが、確かにここが自分の家だという確証が、瞑鬼にはあった。それは、よくよく考えれば両親の匂いがあるから当たり前のことだったのだが、今の瞑鬼にはそんなことは関係ない。ただ、自分の居場所さえ確認できれば、それだけで満足だ。


まず始めにするのは、貴重品のチェック、及び魔女関連の書籍の有無だ。現状、神前明美には魔女である容疑がかかっている。そして、もし本当に明美が魔女なら、家に有害指定とされた本があってもおかしくない。瞑鬼の目的はそれだった。


台所の棚を漁り、通帳などが入ったケースを取り出す瞑鬼。両親の金のありかなど、小学校の時に確認済みであった。


さっと一覧に目を通すも、特に不審な点はなし。


いつも通りに会社から金が振り込まれており、電気もガスもきっちり払っている。


ここに来て、瞑鬼はある疑問を抱き始めていた。


それは、ひょっとしたら義鬼は関係ないのではないかという事。ひょっとしたら、魔女に関係があるのは明美だけで、義鬼は何も知らずにたまたま一緒に暮らしているだけなのではないか、と。そんな砂糖菓子よりも甘っちょろい戯言が、不意に瞑鬼の口からこぼれそうになる。


それを必死に抑え、瞑鬼は探索を続ける。ここまで来たら、最早義鬼が関係あろうがなかろうが、その事自体が関係ない。等しく、ただ殺すだけだ。どうせ謂れのない瞑鬼を殺した父親だ。他に手を染めた悪事は腐るほどあるだろう。今更誰かに殺されたところで、文句を言える筋合いではない。


重要そうな書類や、貴重な何かは全て眼前に揃っているはずだ。なにせ、神前家の財宝と呼べるものは全てここに眠っているのだから。


亡き瞑鬼の母が、家の管理を一人でしていた名残である。


台所が終わると、次はいよいよ本命の二階となる。義樹の書斎や明美のメイクルームに行けば、手がかりの一つでもあるだろうと、瞑鬼は踏んでいた。


登り慣れた古い階段を上がり、少し埃っぽい二階を視界に捉える。瞑鬼がいた時と同じように、物で溢れてごちゃごちゃとしているのは相変わらずだ。


二階にある部屋は三つのみ。元々は三人家族の神前家。それ以上増やす予定のなかった親にとっては、家はこの程度の部屋数で十分だったのだ。


ふと、気がつくと瞑鬼は自分の部屋の取手に手をかけていた。


「……どうなってんだろ」


ただ単純に気になったのか、それとも考えがあっての事なのかは分からないが、とにかく今、瞑鬼の精神は目の前の部屋を素通りできなかった。


この世界に、神前瞑鬼と言う人間の痕跡が無いのは確認済みだ。学校にも、家にも、その他瞑鬼が関わったであろうどの場所においても、瞑鬼は存在していなかったものとなっている。つまり、ここにいる瞑鬼は、この世界では完全にアンノウンな存在なのである。


しかし、ここで一つ問題が発生する。瞑鬼がしたのは異世界転生では無く、異世界転移だ。身体はそのまま作り変えられ、魔力と魔法回路がプラスされた状態での召喚。


しかし、召喚者も召喚術式もないとなると、超特大の問題が発生してしまう。


仮にどこかの王様が、魔王に支配された世界を救うため、異世界から勇者候補を召喚するとする。すると、そこには大掛かりな術式と触媒が必要とされることだろう。そして、呼び出された勇者は触媒に受肉し、生を受ける。


しかし、瞑鬼のケースだと、溺れたのは川で触媒は無し。それに見た限りでは何も召喚の準備などされていなかった。


つまり、人間一人分の質量が、この世界に加算されたことになる。質量保存の法則があるこの世界で、そんな事をしたら行き場をなくしたエネルギーが暴走してしまうだろう。だが、そんなことは起こっていない。


魔法があるから。その一言で片付けようと思えば片付けられるだろうが、どうにも瞑鬼は納得がいかなかった。


「…………俺の代わりに、あの世界へ行った奴がいる……かもしれないのか」


瞑鬼の目には、一つの部屋が止まっている。自分がこれまで住んでいた、六畳余りの普通の部屋。

しかし、それは異世界では恐怖の扉となっていた。

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