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上書き勇者の異世界制覇  作者: 天地 創造
逃亡の魔女編
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作戦会議

夏休みも本格的になる八月の一日。その日は、意外な幕開けだった。


八月最初の一日目。その日は、陽一郎からのモーニングコールで始まった。まず手始めに雑魚寝瞑鬼の毛布を奪い取り、強制起床。猫たちの身体に頭を突っ込んでいた夜一もついでに。女性陣の部屋に入るのはまずかろうと言う事で、そこは断念された。


寝覚めの悪い瞑鬼、起きてから3分は頭が動かない夜一。そんな二人が窓の外を見て亡者の如く太陽を嫌うのを傍目に、中島家から奪ってきた朝食を用意する陽一郎。今日の気合の入り方は、誰の目にも不思議に映ることだろう。


「……なんすか?まだ5時じゃないっすか……」


「瞑鬼よ、早起きは三文の」


「あ、三文程度ならいいっす。一円以下なんで」

「なっ!貴様ぁっ!」


どうでもいい朝の会話を繰り広げ、再び床に着く瞑鬼。ここ最近は何かと身体を酷使しているので、朝は尋常じゃないくらい辛いのだ。


やる気装填の陽一郎と違い、どこか気力が抜けたような二人。いつまた魔女が襲ってくるかわからない。そんな状況でこうものんびりとしていたら、流石に危機感が薄すぎる。


一つため息をついて、頭を切り替える。思い返すは地獄の訓練時代。日が昇ると同時に起こされて、寝起きから戦闘の日々。高校生に睡眠時間を削ってまで戦えと言うのが不憫なのは理解している。だが、ここで心を鬼にしなければ。


タオルケットを剥ぎ取って、エアコンのスイッチをオン。冷風で二人の体温を低下。その結果、見事に野郎たちの目は覚めた。リビングでどたどたやられていたからなのか、寝室の女子たちも起床したようで、ぞろぞろ揃ってリビングに。


混み合う洗面場がちらほら空き始めた頃には、おっさん特製のスクランブルエッグが皿の上に盛られていた。一応はさっぱりした頭をもって、それをペロリと平らげる高校生。


陽一郎は店の改修工事の手伝いがあるとのことで、一旦家を出る。今日の午後からは英雄たちと合流する予定が、瞑鬼の独断によって決められていた。


「……ソラ、あいつらの居場所に心当たりとかない?」


どこか放心したような顔のソラに、気付の意味も込めて軽い質問を飛ばす。はっとしたソラから返ってきたのは、予想通りの返事だった。


「……すいません。大体の予想はできますけど、詳しくは」


「……まぁ、だよな。ソラ的にはどこが怪しい?」


そうですね、と言って顎に手を当てるソラ。まるでいつもの瑞晴を見ているような気分になる瞑鬼。そのことに気づいてか、何故だか自分もミラーポーズをとる瑞晴。


不思議な形が出来上がっていた。


「……前提として、人があんまりいないところは絶対ですね。あと食料も取れそうで、でも、家である可能性は低いって感じです」


「小屋とかか……?魔女って人間界の金とかあんのか?偽装戸籍とか」


作戦を立てる側の瞑鬼としては、今頼れるのはソラたちしかいなかった。自分が魔女特区出身だと言っているのを忘れてか、瞑鬼はソラたちに助け舟を出していた。


しかし、欲しい答えが返ってくる可能性は半々だろう。なにせ魔女の村は戒律が相当に厳しい。子供に言えないことを大量にしているような彼女たちが、人間界遠征の詳細を教えている可能性は低かった。


「……以前、明華さんの机で見たことがあるような……」


「そっか……。それで上出来だ。多分戸籍はある」


「……だね」


どこぞの探偵よろしく、顎に手を当て考えるポーズの瑞晴。きっと今頃、彼女の頭の中ではピンク色の脳細胞がさぞかし活発にご活躍のことだろう。


戸籍がある。瞑鬼がそう考えたのは、あの絵本の内容からだ。明美の持っていた本には、成人した魔女は人間界へ。そして人を攫ってくると書いてあった。だが、人間界とてそれほどザルじゃない。恐らくはどこの地域にも自警団はあるだろうし、船で来るなら審査は厳しいのは確定。


恐らくはグレーゾーンの仕事を偽っては、国内に侵入して来ると言った感じだろう。見た目は普通の人間なのだからから、金さえあれば困らない。


「……あ」


少しだけ短くなってしまった髪を弄りながら、ふと思い出したように呟く瑞晴。


「……そう言えばだけど、言ってたんだよね。魔女の人。なんか、協力者がどうとか」


降って湧いた瑞晴の発言。そのことを知っているのは、本人を含めこの中には四人だけ。野郎陣は知らなかったことだ。


瑞晴が思い出したことでだんだんと記憶が蘇ってきたのか、千紗がそれに迎合。ソラとアヴリルも続ける。


「言ってたね。しかも、多分男」


「村に男の人来てたことあったっけ?」


「……わかんないけど、多分あるよ。夜中に話し声聞いたことある」


ある程度希望的観測が見えてきたからなのか、やけに議論が白熱してくる。話を総合し、可能性を考える瞑鬼。


魔女の協力者。それも、人間界にそっと潜り込ませられる人物で、なおかつ男となると、かなりの数が絞られる。そんな事ができるのは政治家、輸入業者、船の操縦士、後は入国管理官など。だが、一介の高校生がそんな人たちを調べ上げるなど、到底不可能なことである。


だからこそ瞑鬼はチャンスだと思った。あと何時間か経てば、一介の高校生じゃない奴がこの場に来るのだから。


英雄とハーモニーの総力をあげれば、犯人の特定が可能なのではないか。瞑鬼はそう思い始めていた。


「……それもあるが、俺としてはもう一つ考えがあってだな」


皆んなが権力者の介入という線で話を進めていこうとした時に、流れをぶった切ったのは夜一だった。全員の視線が夜一に集中。次の言葉を待つ。


「……まぁ、あくまで案なんだが、初めから魔女が国内に居たとしたらどうだ?魔女特区から来るやつと、人間界から手引きするやつ。協力者と言っていたが、魔女が女を求めないとも限らない」


言ってしまったら暴論だろう。だが、夜一の意見にも微量ながらの説得力はあった。曰く、規制が緩い時に人間側に住み着き、以来魔法で連絡を取り合って手引きしているのでは、と。


みんなして目を見合わせる。ソラたちも、無きにしも非ずといった顔だ。完全に否定しきれないぶん、反駁もできない。机上の空論という奴が、そこにはあった。


しかし、ここで議論していても意味がないと悟ったのだろう。夜一は徐に腰を上げ、窓の外から森を見る。海岸線沿いを辿っていくと、見えて来るのは一軒の家。誰も住んでいないはずの場所だ。


機動力であるバイクを持っているのは夜一と千紗だけ。運転できるのも、当然二人しかいない。


「……そうだな、俺は瞑鬼の言っていた、どっかに隠れてる説を探る」


「んじゃ俺らは、町ん中でそれっぽいやつ探す」

話し合いもせずにそれぞれの目的が決まったところで、フレッシュ総出の準備が始まった。


陽一郎さんの一面、どうでした?

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