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上書き勇者の異世界制覇  作者: 天地 創造
逃亡の魔女編
145/252

インザ保健室

二千文字も前書きをかけることに驚愕中です。

一体何を想定してこれにしたんだろう……。


懐かしさを感じる薬品の匂いと、頭に乗った冷えピタの感触。気のせいか、誰かが手を握っている気がした。背中から伝わってくる感触からして、今はベッドの上にいるらしい。

全身がだるかった。【改上】の後遺症である筋肉痛じゃない。今瞑鬼の身体を蝕んでいるのは、紛れも無い外傷での痛みである。


痛みがあると言うことは、今回は【改上】できなかったようだ。気を失ったと考えるのが妥当だろう。

薄ぼんやりと開いた目。そこに映ったのは、なぜだか見覚えのある天井だった。でもどこかは思い出せない。確かに記憶にあるのに、うまく場所がわからない。


霞みがかった記憶を呼び覚ます。最後の記憶はマーシューリー・リストラストとの戦闘。完膚なきまでに叩きのめされた屈辱と怨念が、瞑鬼の中を渦巻いているのを感じる。

記憶はそこで途切れていた。誰かが来た気もするが、それが何者なのかは不明なまま。そして何よりも問題なのは、安否が不明な瑞晴たちだ。


「…………行かねぇと……」


無意識の使命感に駆られ、瞑鬼は身体を振り起こす。違和感を感じたのはその直後だった。

右腕及び右脚にはしる激痛。骨ごと断裂されたような過剰な痛覚に、瞑鬼は思わず悲鳴をあげる。

記憶が正しければ、瞑鬼は腕と脚を叩き折られている。一応応急手当てはしてあるらしいが、こうも綺麗にひしゃげていては意味がなかった。


体を引き裂くような痛みを抑えるため、限界一歩手前まで魔法回路を展開。死にかけの頭を繋ぎ止める。


「…………ん?」


瞑鬼が声をあげると同時に、もぞもぞと布団が動く。ふと見ると、瞑鬼の右腕側に人一人分くらいの膨らみがあった。

小さな手が、鈍痛の続く瞑鬼の手を握っている。訳がわからない状況に、異常慣れした瞑鬼も頭を悩ませてしまう。

急ぐべきは瑞晴とソラたちの安否確認。けれど、恐らくは手を握ってくれていたであろう人をそのまま放ってはいけない。


恐る恐るとした手つきで布団を剥ぐ。そこにいたのは、瞑鬼がよく見知ったガキだった。まさかとは思ったが、ここが夢でない限り真実からは逃れられない。

瞑鬼の手を握って眠りこける人物。柔らかショートと貧相ボディに、憎ったらしくも可愛らしい顔つき。憎まれ口御用達の五衣朋花が、そこにいた。

朋花がいると言うことは、ここは桜青果店だろう。瞑鬼はその考えに至るも、直ぐに自分の意見を否定する。こんな部屋はどこにもなかったはずだ。


瞑鬼たちがいる部屋。カーテンで周りが仕切られていて、中は微妙に個室っぽくなっている。あるのはベッドとゴミ箱。それと手荷物が置ける小さな台程度。

やはり瞑鬼はこの部屋に見覚えがあった。コーヒーと薬品が混じったような匂い。多分隣にもう一つか二つ、似たようなカーテン区切りがある。

眠る朋花の手をそっと解いて、カーテンの向こう側へ。瞑鬼がいたのは、部屋の中で区切られた部屋だった。


ベッドの向こうには、会社やら職員室で使われているような、少し大きめのデスクが二つ向かい合うようにして置かれている。

その後ろには大きな丸机。4個くらいの椅子。ふかふかなソファーらしきものもある。これだけでほとんど場所は分かっていたが、極め付けは硝子棚に置かれていた、薬用ラベルの貼ってある瓶軍たちだ。


「…………保健室……か?」


天道高校の保健室。瞑鬼の記憶が正しければ、ここは確実にその場所のはずだ。

しかし、自分の現在地がわかったところで、疑問が消える訳じゃない。なんでこんな所にいるのか。なぜ朋花までいるのか。

窓から覗く空はまだ暗い。何時間ほど寝ていたかは分からないが、月の位置から察するにまだ日付は跨いでない。


ふらつく身体と鈍痛がやかましい右腕。それらを休ませるために、瞑鬼はソファーに腰掛ける。

保健室にお世話になったのは、高校生になってから10回程度。怪我と仮病が大半だ。だから見間違えるはずがなかった。

状況がわからない中、やれる事は限られてくる。取り敢えずは瑞晴への連絡が最優先だろう。


魔法回路を展開。第二の魔法で連絡を。しかし、使いすぎたせいか全くと言っていいほど魔力がなかった。

仕方なく携帯に頼ることに。流石は保健室だけあって、ベッドまでは手すりがある。リハビリをする病人のように、瞑鬼はそれを辿ってゆく。すーすーと寝息を立ててうつ伏せる朋花。叩き起こして聞き出したいが、瞑鬼もそこまで鬼じゃない。だから一発のデコピンで我慢した。


「…………んっ。んっくぅ〜」


不機嫌なおっさんみたいな声を出して起きる朋花。半開きの目が瞑鬼を睨む。


「……起きろ。遅刻すんぞ」


「うぇっ?もっと早く起こしてよバカぁぁ!」


寝ぼけているのか、朋花が反撃に出る。正直本当に遅刻だとしても悪いのは朋花なのだが、今の瞑鬼は文句を言わない。そんな事よりも聞き出す方がはるかに優先度が高い。


蚊の鳴くような声力で何発か殴り終えると、気も晴れたのか次第に朋花の目が開きだす。


「あれ?起きたの瞑鬼」


「……おう。お前もようやくお目覚めか」


「うっさい。……って、ここどこ?保健室?」


「お前も知らんのか?」


「なんか……、そう言えば陽一郎と一緒に来たような気も……」


何個か質問をするが、朋花はあまり覚えてない模様。陽一郎と一緒に来たのは確定だと言っていい。そうでなければ、ここに来れる筈がない。

しかし、肝心の陽一郎の姿が見当たらなかった。恐らくは、半眠りの朋花を連れて来たという所だろうが、瞑鬼にはその理由が不明だ。居たのは瞑鬼と朋花だけで、それ以外は誰もなし。しかし遠くで人の気配はするので、閉じ込めれたなどの類いでは無さそうだ。


「まぁいい。ガキは寝てろ」


「私思ったんだけど、ロリコンと保健室で二人きりって、かなり危ない状況だよね」


「…………うっせ」


マーシューリーの前で堂々とロリコン宣言をしただけに、瞑鬼も完全に否定しきれない。

下らないことをしている場合じゃないと、自分の置かれた状況を再確認。台の上から携帯をとって瑞晴に連絡しようとするも、電池がないのかスマホは息をしていなかった。


仕方なくスマホを隣のベッドに放り投げ、自身はソファの上へ。骨折した腕が痛む。幸いなことに複雑骨折まではいってないが、剥離しているのは確実。なけなしの魔力で痛覚を麻痺させているものの、それもそう長くは続かない。

きょろきょろと部屋の中を見て回る朋花。瞑鬼だって部屋から出たいが、腕をぷらんぷらんさせて歩くわけにはいかないだろう。


「……誰か来たね」


「……来たな」


久しぶりの朋花登場回。相変わらずの生意気っぷりがこぎみよい。

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