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上書き勇者の異世界制覇  作者: 天地 創造
異世界制覇、始めました
12/252

異世界異能、確認です

どうやら、陽一郎も瞑鬼本人に興味を持ったらしい。


「でも、どうやるんですか?」


「なぁに、その点は俺に任せろ」


にやりと陽一郎の顔が笑ったかと思うと、次の瞬間に瞑鬼の両頬はごつい手に捕まれていた。頬骨をおらんとする勢いである。


咄嗟に目を瞑る瞑鬼。何をされるかわからないが、まさか自分の目で惨劇を見たいなんて思わない。


「目ぇ開けろ瞑鬼」


陽一郎が穏やかな声で言う。未だ掴まれたままの両頬に関しては、諦めるほかなさそうだ。大人しく従うのが吉だろう。


目の前に何かがある気配を肌で感じ、瞑鬼はそっと目を開く。


「…………っお!」


次の瞬間、目に飛び込んできたのは間近まで迫った陽一郎の眼光だ。その距離およそ五センチ。少し顔を動かせば、見事眉間に頭突きをお見舞いすることができるであろう距離に、陽一郎が迫っていた。


近くで見れば、人の顔というのは印象が変わるものらしい。さきほどまで瞑鬼が見ていた陽一郎とは、別人が目に映っている。


瞑鬼がなんとかしてこの状況を理解しようとしていると、猛々しい光を帯びた瞳が語り出す。


「俺の魔法はな、間近くで目を見た相手に憑依するってもんなんだ。俺ならある程度魔法回路に仕組まれた仕掛けくらいわかる。お前の魔法を見つけてやるよ」


その声を耳が受け取ったかと思うと、同時に陽一郎の目が赤く光り、瞑鬼は意識を失う。


糸の切きれた人形のように、ぐったりと重力から離れる瞑鬼。咄嗟に瞑鬼の身体を掴んだ陽一郎も、支えを失ったぬいぐるみよろしく床に伏す。ちょうど、瞑鬼の身体を抱きかかえる形で。


その様子を傍観していた瑞晴だったが、一応視界の端には留めておいたらしい。頭を打たぬように、落ちる直前に座布団を準備していた。


数秒間の沈黙が部屋を満たす。抱き合って倒れる男が二人。それを側から眺める女子高校生の図は、切り取って描いたならば後世に残る芸術作品となっていたことだろう。


しかし、画家が光景を捉えるより前に、意識を失ったはずの瞑鬼の身体がぴくりと脈打つ。


「ん……、あぁー。久々の高校生の身体だ……」


そう言って起き上がったのは、目も虚ろに頭をかく瞑鬼だった。寝起きの高校生のように、いかにもダルそうに身体を起こす。


「重っ。俺の身体ってこんなに重かったのか……。ダイエットせにゃならんな」


そう言って、瞑鬼は力なく倒れる陽一郎の身体を起こす。高校生とはいえ、全く意識のない大人一人を抱えるは至難の技らしい。おっさんくさいかけ声が漏れる。


それから、瞑鬼は自分の体を確認するように動かす。どうやら、陽一郎の憑依は成功したらしい。今瞑鬼の体に入っているのは、陽一郎の意識なのだ。


意味もなくじっくりと高校生の体を堪能する父親に対し、瑞晴が諭すような口調で話しかける。


「余計なことはしないの、お父さん。高校生に憧れるのはわかるけどさ……」


はぁ、と盛大なため息をつく瑞晴。実の父親が自分の友人の体を占領しているのだ。それも、普通の親ならいざ知らず、稀代の娘大好き親父が、だ。これ以上健全な男子高校生の肉体を、無防備に渡しておくわけにもいかないだろう。

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