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上書き勇者の異世界制覇  作者: 天地 創造
逃亡の魔女編
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君は君でも君じゃない。

どうも。中国語の知識ゼロだけど、取り敢えずは書いてみる天地です。いやぁ、Google大先生には大いにお世話にまりますなぁ。


魔法回路をこじ開けたソラが、首を締めていたヤンキーの腕を噛みちぎる。正確には、血が出るほど深く噛み付いた。


想像を絶する痛みに、ヤンキーが一瞬ひるむ。その虚をついて、ソラが拘束から抜け出した。


魔法回路を開いたまま、金髪ピアスの背中にタックルをかますソラ。瞑鬼を甚振いたぶって油断していた金髪ピアスが、かはっ、と汚れた息を吐く。


瞑鬼の目は、勇気あるソラの姿を捉えていた。それと同時に、焦って、怯えて、立ち尽くす一人の女の子の姿を捉えていた。


「……っのクソガキ……っ!」


すぐに金髪ピアスは立ち上がる。ソラとの身長差は三十センチほど。前に立たれて、この歳の女の子が怖がらないわけがない。


金髪ピアスが腕を振るう。美しく光ったつららの刃が、ソラの頬を裂く。薄皮一枚程度だが、ポツポツと血が溢れ出した。


「やめてくださいっ!」


それまで黙っていたはずのアヴリルが、突如声を荒らげる。その声は、あのお淑やかさは微塵も感じられないほどに、焦燥しきっていた。


しかし、そんなことを聞き入れる頭をヤンキーが持ち合わせている筈がない。必死のアヴリルの制止も無視し、金髪ピアスが氷柱を振りかぶる。


「いけませんっ!カラッ!!」


最後のアヴリルの叫び。それは金髪ピアスに向けられたものではない。


確かに彼女は言った。カラ、と。


ズンっ。音にすると、多分そんな擬音だろう。金髪ピアスが氷柱を振った瞬間に、その音は確かに場にいた全員に伝わっていた。


瞑鬼の方からでは、何が起こったかよく分からない。ただ、殴られたはずのソラも、殴ったはずの金髪ピアスも動かなかった。沈黙が空間を支配する。


「……知りませんわよ」


「…………最悪」


一番最初に語り出したのは、アヴリルとフィーラ。ほぼ同時に、二人の言葉が重なった。


そしてその声には、もう何も孕まれていなかった。ただ、節々から全てを捨てた匂いだけが漂っている。


止まっていたのは、恐らく十秒ほど。しかし体感的には何分も経ったように感じられた。不意に、金髪ピアスの身体が傾く。そのまま地面に吸い寄せられたかのごとく、頭から地面へ。


ごんっ、という鈍い音がなった。それでも金髪ピアスは反応しない。


「…………っかよ」


マジかよ。そう言おうとしたのに、言葉が付いてこない。喉が音を出してくれない。


目の前にある光景を、脳が信じようとしなかった。状況を考えようと思わなかった。それほどまでに、瞑鬼の両眼は痛烈なまでの現実を直視していた。


目下5メートルほど。ソラとの距離は至って近い。だから見えてしまった。あの可愛らしい顔から滴る血が。あの細い腕にどっぷりと纏わりついた血液が。


逆光の夕日がソラを照らす。ほおには魔法回路が浮かび上がっており、全身からは漆黒の粒子。


そして何より、ソラは笑っていた。自分の下で蹲っている金髪ピアスを見て、その目は確かに微笑んでいた。


「…………ソラ」


誰もが動けない。恐らくこの状況を理解しているであろうアヴリル達でさえ、下手に動こうとはしなかった。同様に、他の大学生達も。


沿岸にそり立つテトラポットに、一際大きな波が当たる。潮風の匂いに乗った血の香りが瞑鬼の鼻腔をくすぐった。


好久不見ひさしぶりね


誰もいない虚空を見つめて、ソラが呟く。いや、もはや此処にいるのはソラではない。そんなことは、いくら感が鈍い瞑鬼だって理解できる。


全く状況が呑み込め無かった瞑鬼だが、ソラの一言で目が覚めた。何かの拍子に、ソラがソラで無くなったようだ。


這裡是哪裡ここはどこ?……まぁいいか」


誰もが固唾を飲んで見守る中、カラと呼ばれた少女は一人呟く。


「……匂いがする」


誰にもわからないこんな異常な空気の中、ソラであろう一人だけが冷静だった。そして沈着に、当たり前のようにクールに、金髪ピアスを蹴る。


辺りを見渡すソラ。そしてその視線は、後ろにいたアヴリル達の元に止まる。


本能的にソラが危険だと判断したのだろう。ヤンキー達は顔を見合わせ、持っていたバタへフライナイフを二人の首元に押し付ける。


「…………アヴリル、困ってるよね?」


「……カラ、お願いです。落ち着いてください。私は大丈夫ですわ」


ソラを説得するアヴリルの声は、もはや人質が助けを請うそれではない。心の底から、やめて欲しいと思っているような、悲痛の声。


何も言わなかったフィーラも、ただ黙って首を横に振っている。その行動が何を意味するのか。


何となくだが、瞑鬼は分かり始めていた。この三人が隠しているであろう、その事実に。でも、気づいたからこそ行動に移せない。


ソラが纏った雰囲気は、完全に先ほどまでのそれではない。今は何か、例えるならば別の人格が入っているような感覚だ。


「…………我幫助你たすけてあげる


瞑鬼は中国語なんてわからない。せいぜいがニーハオ止まり。だから、もちろんソラが何を言ったのかわからなかった。


言葉を言った直後、ソラの身体から大量の魔力が溢れ出す。行き場を失った漆黒の粒子たちが、空に向かって伸び出した。


ソラが手を振るう。すると、空気が裂けるような音と共に、大学生の悲鳴が瞑鬼の耳をつんざいた。


間違いない。ソラは魔法を使ったのだ。本来ならば、まだあと一年は使えないはずの魔法を。それも、あの魔力の量に鑑みるに、相当に使い込んであるのだろう。


当たり前だが、魔力回路は開けば開くほど太くなる。そうなれば、魔力の通り道も拡張され、また全身に行き渡らせるのが容易になるのだ。


つい最近その感覚を経験した瞑鬼だからこそわかる。ソラは、あの歳でかなり魔法を使った経験がある、と。


「あぁぁぉぁぁ!!」


「おいっ!大丈夫かっ!」


結論からいくと、アヴリルを捕まえていた男の腕は、肩がぱっくりと割れていた。まるで鋭利な刃物でも通されたかのように、あり得ないくらいに綺麗な切り口で。動脈を切られたからか、止まることなく鮮血が溢れ出ている。


堪らなくなって、アヴリルを突き飛ばす男。解放して、抵抗する意思がないのにも関わらず、ソラの攻撃は止まなかった。


腕を振るう度に、空気を切り裂くような音が聞こえる。その度に、幾度となく地面がえぐられていった。


実際問題、知らない人がいきなり出てきたら

「君の名は」じゃなくて「誰やねん」ってなりません?

関西の人じゃなくても、なんか言ってしまう気が……。

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