琉生side
今日、久し振りに彼女とデートが出来ると思ってたのに、なんで彼女以外の女にまとわり着かれてるんだよ。
同期のこいつが、
『仕事の事で相談がある』
何て言ってくるから、同期のよしみで承諾したら二人っきりで…。
当然、待ち合わせの時間にも間に合うわけなくて。
「ゴメン。仕事が入ったから、今日のデート無理」
それだけ言って、直ぐに電話を切った。
彼女以外の女の声を聞かせたくなかったってのが、本音。
誤解されたくないだろ、だから"仕事だ"って言って、安心させようとしたんだ。それが、裏目に出るとは、思わなかった。
同期に連れられて来た場所が、彼女伊織との待ち合わせていた場所だということに、もっと早く気付くべきだった。
「ねぇ、琉生くん。ここに入ろ」
同期のこいつは、遠慮無しに俺の腕に自分の腕を絡め胸を押し付けてくるあんまり近付くなよ。お前の甘ったるい香水が服に移るだろうが…。
それに、いつ俺が下の名前で呼んでいいと許可したんだ。"琉生"って呼んででいいのは伊織(彼女)だけだ。
この時俺は、彼女が俺の名前を呼ぶ声と姿を思い出してたんだ(どんだけ、彼女の事が好きなんだよ俺)。
だからか、その隙をつかれて唇を重ねられてた。
俺は、慌てて突き飛ばし、袖口で唇を拭った。
「何するんだよ!」
俺は、激怒し彼女を睨んだ。
「え~。だって、琉生くんは、私のモノだもの。キスぐらいいいじゃない」
口を尖らせて言いやがる。
全然可愛くないからな。
「何時、俺がお前のモノになったんだ。俺は、お前が嫌いなんだよ」
彼女に冷たく言い放った。
俺は、自分に責任を持てないヤツは、嫌いだ。
「お前は、自分の事を何時も棚にあげて、他人を貶す。そんな奴と付き合おうとは思わない。用がないなら、俺は帰る」
そう言い放って、背を向けた。
そうだ、今日のお詫びに彼女の好きなスイーツを買って帰ろう。
そう決めて、有名なスイーツ店で彼女の好きなものを数種類購入し、家に向かった。
帰り道、彼女がスイーツ見て笑顔を浮かべる姿を思い浮かべながら家に辿り着く。
玄関のドアノブを捻るが、開かない。
普段、俺の帰りが遅いから、鍵かけてるんだな。
関心関心。
何て思いながら、俺は自分で鍵を開けて、中に入った。
けど、何時もなら漂ってくる夕飯の匂い。
今日は、物音もしない静かな部屋。
電気も点いていない。その時やっと異変に気付いた俺。
慌てて靴を脱ぎ、リビングに向かう。
リビングの電気を点けたが、そこには彼女の姿がなくて。
「伊織」
俺は、そう声を発しながら、他の部屋を見て回る。
…が、何処にも伊織の姿がなくリビングに戻って気付いた。
やたらと、ガランとしてるのだ。
よくみると、彼女の物が全て無くなっていた。
漸く、彼女がこの部屋を出て行ったんだと気付いた。
何で…。
何で、出て行ったんだよ。
俺の頬に一筋の涙が溢れた。