表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すれ違い  作者: 麻沙綺
14/15

琉生side5


伊織を頼くんの家から連れ出し、車に乗ったのはいいがどう話を切り出せばいいのやら、わからないオレ。

その間、カーステレオから流れてくるDJの話が、BGM化している。


「琉生……。ごめんね」

突然、小さな声で謝りだす伊織。

「何が?」

オレは、何に対する謝罪なのか見当がつかない。

「勝手に行方を眩ませたこと…と逃げちゃったこと……」

伊織の声は、落ち込んでいて反省のが見栄隠れしている。そんなんじゃ、オレは怒るに怒れない。

無言でいると。

「ちゃんと事情を聞かなかった私が悪いね」

そう言葉を紡ぐ伊織。

チラッと横を見れば、空笑いを浮かべている。

自己嫌悪に陥ってる顔だ。

「変な勘繰りをせずに、琉生に聞けば良かった…。そしたら、こんなにも胸を痛めることなかったのに、ね」

って、何時もよりも弱々しい声で告げてくる伊織の頭に

手をやり、ポンポンと軽く叩く。

すると隣で、"グズっ"と鼻を啜る音が……。

見れば、頬に一筋の涙が伝っていた。

さっき泣き止んだばかりだというのに、また涙して……。

本当に伊織は、泣き虫なんだから……。

普段強がりのくせして、心許した奴の前では感情の赴くまま見せてくれる。そのギャップがいいんだがな。

今までの男どもは、損してるなんて思ってしまう。

まぁ、オレ以外に見せる必要ないんだがな。

「伊織の泣き虫は、治りそうにないな」

オレは柄貝じみた言い方しか出来なかったが、それでも伊織が愛しい人には違いない。自我を忘れたの彼女だけだからな。

泣いている理由はオレの性だろう。

「……ヒック。私だって、泣きたくて泣いてるんじゃない……んだよ」

と言い訳をし出す。

「伊織……。ごめんな。今まで不安な思いさせて……。オレたちの事、話しても良いよな。何かあったら、オレが護から」

伊織と離れて解ったことは、彼女自身を心から愛していること。頼くんがそれをより解らせてくれた。

伊織の隣にオレは、ずっと居たいと……。

こんな時に伝えたいと思ってしまったのだ。

「う…うん」

戸惑いがちの返事だったが、それを聞いてホッと胸を撫で下ろした。


本当は、ちゃんと計画を立ててたんだが、こうなったら仕方ないよな。

オレは、車を走らせなが"あること"を頭で企てた。




家に着き、リビングのソファーに伊織を座らせると。

「ちょっと、待ってろ」

その一言だけ伝え、自室に向かう。

机の引き出しに隠していたビロードの小箱を手にして、リビングに戻る。

伊織が、落ち着き無くそわそわしている。

「伊織……。この間渡せなかった"モノ"今渡させて……」

ソファーに座っている伊織に声をかける。

伊織は、驚いた顔をしてオレを見てくる。

オレは、伊織の前に回り込み膝まずくと。

「今回の事で伊織には不安にさせてしまったかもしれない。だけど、オレは伊織とこれからの一生を一緒に生きていきたいと思う。不甲斐ないオレだけど結婚してください」

伊織の目を見つめながら言葉を紡ぎ、手にしていた小箱の蓋を開けて見せる。オレは、"はい"しか求めてない。

伊織は、息を飲み両手を口許に宛がい、目を大きく見開いた。

「私…でいいの?」

確認するかのように訪ねてくるから。

「伊織しか要らない」

そう答えた。

「……はい。…宜しくお願いします」

か細い声で返事が返ってきた。

オレは、伊織の左手をとり指輪を薬指に嵌める。

指輪は、以前伊織が雑誌で見て欲しがってたものにした。

「伊織……。一緒に幸せになろうな」

オレはそう言って、伊織の目許に口付けた。



その後、もちろん美味しくいただきましたよ(伊織自身を…ね)。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ