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すれ違い  作者: 麻沙綺
12/15

伊織side5

頼の言葉に琉生が、こちらを振り返る。と同時にソファーから立ち上がって、無表情で足早に近付いてくる。

もしかして、怒ってる?

そう思ったら、恐れからか足が一歩後退してしまう。

気がつけば、抱き締められていた。その腕は微かに震えている。

えっ……。何が起きてるのかわからず、戸惑っていれば。

「やっと会えた。一日半会えなかっただけなのに、オレって女々しいかも……」

そんな言葉に顔を上げれば、ホッとした顔つきと今にも泣きそうな顔が混在してる彼の顔が、妙に愛しく見えてしまう。

私は、彼の胸に額を押し付け。

「ごめん…ね」

そう口にした。

「もう、こんな思いしたくないから、社内でも一緒に居よ」

琉生の切羽詰まった言葉に私は、首を横に振る。

「何故?」

琉生が、疑問に思うのも無理はない。

「琉生が、女性社員に人気があるから…嫉妬の視線に私が耐えられない……」

社内だけじゃなく、社外でも人気がある。

私のところにまで、噂が上ってくるぐらいなんだから…。

「それが本音?だったら、オレが護る。何がなんでも、オレが大切に想ってる相手を傷つけるやつは、後悔させてやる。だから、婚約してることを話してしまおう」

琉生に突然の言葉に、頭がついていかない。

えっ…婚約……。

何時、婚約したの?

私が疑問に思ってたことがわかったのか琉生が。

「今、ここで」

と口にする。

へっ?

今って……。

益々わからなくなる私に。

「本当は、この間のデートの時に言おうと思ってたんだ。だが、あいつのせいで流れた。だから、今から伊織は、オレの婚約者な」

って、堂々と宣言されてしまった。

うっ……。

これって、答えは始めから決まってるものだと言われてるみたいだ。一方的ではないのかって思ってしまう自分がそこに居て……。

これといって、拒む理由なんて、何もないから頷くしかないわけで……。

あれこれ悩んでると。

「うおっほん!」

と、突然の咳払いにその方を見れば、頼がジと目で私たちを見ていた。

あっ、ここ頼の家だった。

私の顔は、羞恥心で赤面顔になってるに違いない。

「あのさ。人の家で燃えるのやめてくれない。一人身の俺には、キツすぎるんだけど。続きをしたければ、他所でやってくれ」

頼に呆れた声。

琉生の顔を見上げれば、彼では珍しく赤面顔。

私たちは、慌てて離れると。

「ごめん、頼。帰るね」

と声を出せば。

「あぁ。また、喧嘩したら来れば」

って、そっけない言葉が返ってくる。

「頼くん、ありがとう。伊織の事、絶対に幸せにするから」

彼が、真顔で言う。

「お願いします。今までの彼氏達と違って、琉生さんなら任せられると信じてますよ」

頼も真顔で答えてる。

この二人、短期間で仲良くなりすぎでは?

疑問視しながら、二人を交互に見る。

「あぁ。伊織、行くぞ」

そっけない返事を返す彼が、一瞬の内に私が持っていた鞄を奪って、空いてる方の手で私の腰に回してきた。

「頼。ありがとうね」

私は、振り返り頼にそう言うと。

「ん。今度は、大丈夫だから、心配せずに琉生さんに着いていきな」

寂しそうな目をして、言う頼。

「また、来るからね。今度は、ダブルデートできたらいいな」

口許を緩めて言えば。

「……善処します」

頼の小さな声が聞こえてきた。



頼、ありがとう。

頼りない姉で、ごめんね。


心の中で、そう告げると玄関を出た。









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