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第一説 始まりの旅

前回のあらすじ

ナンパをするろくでもない十八代目国王レイジ。その自由すぎる性格は切羽詰まる国とは相反するものだった。縛り付けられるのが嫌な彼は、旅に出ようとする。

 不貞寝した次の日の早朝だ。まだ皆が寝ている時を狙って、レイジは宮殿を抜け出し、デグラストルから出ようとした。しかし、そこに立ちはだかるものがいた。彼の側近であるヴィント・エニシだ。彼はレイジの行動を監視しているため、すぐにばれた。


「ちぇっ……やっぱ気付かれるかぁ」


「当たり前です。さあ戻りましょう。窮屈なのはわかっています。ですが勝手に出歩かれては困ります」


「むぅ、お前が女だったら口説いて一緒に連れて行こうとしたんだが、くそぉ、なんで男なんだよ。俺は男が嫌いなんだ。こうやって邪魔してくるしな」


「お巫山戯なさるのも大概にしていただきたい。この国には貴方が必要なのです」


「ちょっとくらいは良いじゃねえか、な?」


 片目を瞑ってみるが、彼は無反応だ。


「ダメです」


「どうしてもか?」


「ダメです」


「ぐぅぅぅ……じゃあ戻る」


「ダメです……あっ」


「今戻ったらダメだと言ったな? 言質取ったからな?」


「こんな古典的な茶番をしている場合ではありません……!」


「……何故そこまで俺は必要なんだ? わかんねぇな。大した運動神経もないし剣術も強くない。この国の王というだけだ。たったそれだけで俺は縛られるというのか」


「本来ならば王という立場だけで安易に行動することは許されません。確かに、歴代の王様、特に天地の勇者様は自由に行動をなさっていました。しかし、時代は変わりました。帝国側は何度も攻撃を繰り返してぎす。毎回の撃退も、限度があります。その上、帝国側は段々攻撃の間隔を短くしてきました。王がいなければ軍の士気は上がりません。どうかご理解なさってください」


「ほんっとわかんねえ。帝国はなんでデグラストルに執着するんだ」


「それは零代目レイズ様に関係してきます。昔からの因縁です」


「……ふざけんな」


 彼は、何で王になってしまったのだろう。何故この国に生まれてしまったのだろうと後悔する。


「この国の決まりもふざけてる。何で十五歳で王にならないといけないんだ。父さんも勝手だ。光の国に隠居したせいで助言も聞けやしない。時代は変わったんだろ? だったら決まりごとも変えてやる」


「それは不可能です。どうしてこのような決まりになったのかよくお考えください。天地の勇者様は寿命が短く、早めに跡取りが継がないと国の存亡にかかるからです」


「……尚更不自由な期間が多いのが腹が立ってきた。もう、良い。止められるなら止めてみやがれ。俺はとにかく旅立つ。まあ……帝国軍が襲ってきたならそんときはそんときで帰ってくるから」


 そう言って、彼はヴィントの反対側を走りだし、翼を広げ飛んで行った。


「また胃痛が……」


 ヴィントは体が優れないため、少しでもストレスが溜まると胃痛が生じてしまう。この後会議があるので、そこでみすみす彼を逃してしまったと言うことは更に辛いことだ。それらを考えると今度は頭痛までしてきた。とにかく宮殿に戻り、会議の決定次第ですぐにレイジをデグラストルに戻すつもりである。




 さて、レイジはどこへ逃げたかというと、光の国だった。何故ここに来たのか、それは早々と隠居した父親に対して文句を言いに来たのだ。その前に女王であるライトの元へと向かった。


「ライトさあああああん‼︎」


 彼は宮殿に降り立つと、走り、ライトに飛び付く。


「どうしたのレイジ」


 首を傾げながら苦笑いする彼女は尋ねた。


「あのアホ達が俺を国に縛り付けるんだ。もっと自由に生きてえよお」


「ああ……そうね、昔と違って今は緊張状態にあるから」


「皆そんなこと言うんスよ……でも俺は旅をしたいんだ。俺の中にいる何かもそう訴えているんだ。どうにかならないっすかね」


「私が代わりになってあげられると良いんだけどねぇ。十七代目はどうしてるの?」


「父さんならこの国に隠居してますよ……人の気も知らないで」


「あら、そうだった? いつもの事だし気にしてなかったわ」


 もはや役目を終えた王が光の国に隠居するのはデグラストルの伝統に成りつつある。


「……とにかく、俺は自由になりたい。そのためにはどうしたらいいんすか」


「そうね、そこまで言うのなら……何かを成し遂げないといけないわね」


「成し遂げる?」


「具体的には思いつかないけど……例えば私の夫は元々敵だった。だけど邪神を倒し、魔界の民のために泣き、世界を守ろうとした。それを成し遂げたとき、私は彼を認めたのよ。だから成し遂げることは誰かに認められる、それできっと貴方は初めて自由になれる」


「そういうものっすか……なら、帝国をぶっ潰してやる。それで良いっすよね?」


「貴方には無理よ。理解出来ないだろうけど、私には見えている」


「ぐっ……ライトさんに言われると何も言えない」


「それにまだ貴方は覚醒してすらいない。してないということは平和なんだけどね……」


 とは言うものの、一時的な平和にしか過ぎないわけであるが。


「少し良いことを思い付いたわ」


「なんすか」


「宝玉を世界中に散りばめるのよ。次の勇者のために」


「は、はあ? そんなことしたら俺戦えなくなってしまいますよ」


「良いのよ、別に戦う必要なんてないわ。そうねえ、いざとなったら私が戦うし」


「……今ある宝玉は十二個っす。でもなんでそんなことを?」


「試練よ。次の勇者はひたすら厳しい試練を受けるわ。だけどそれで全てを終わらせることができる。貴方にはそれを仕立ててもらうわ。これなら大義名分として成立するし、宝玉を扱えるのは貴方しかいない。そしてこれを成し遂げることで……これ以上は言う必要もないわね」


「なるほど……さすがはライトさんだ」


 ライトはレイジを抱きかかえ、地面に降ろし、そして立ち上がった。


「早速、エニシのところに行ってくるわ。貴方はデグラストルに帰る必要はないから。それじゃ、気をつけてね」


「は、はい! 俺頑張るっすよ!」


 彼は拳に力を込め、気合を入れて返事をした。


 旅の風が彼を導く。放浪せよと心に動かされる。これから始まる旅は、決して楽なものではなかった。その旅の途中に、彼を変える大きな出来事に襲われる。

次回予告

父さん、俺は後世のためにやるべきことがある。止めないでくれ。俺は俺の勇者としての役目を果たす。その道は過酷かもしれない。だが、それで俺が強くなって、のちの世代に繋がれば、きっとデグラストルの未来は明るい。


次回、VAGRANT LEGEND 第二説 俺の道

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