プロローグ
これまでの無間輪廻のゼロは。
全てを終わらせるレイン、全ての始まりレイズ、デグラストルの始まりレイガ、闇と光を融合させたレイビ。四人の勇者の伝説が語り継がれた。次は、レイビとレインの間を繋ぐ物語。
後世に伝わらない空白の伝説。だが、これは因縁を終わらせるための重要な物語。
「なぁ、俺とお茶しないか?」
デグラストルの繁華街。軽いノリで街にいる若い女性に金髪の男は話しかける。
「え、えっと……あ、あなた王様ですよね?」
その問いに対し、彼は力強く答えた。
「如何にも! この俺はレイジだ!」
その男、デグラストルの国王である。レイグランジ・ダグラス・デグラストル。十八代目国王だ。現在、十八歳であり、王となって三年目である。
「私みたいな俗にお声をかけてくれるなんて……」
「ん? なんか言った? それよりさぁ、俺喉乾いてんだよね。だからちょっと付き合ってよ」
「うぇ、えぇ……いい、んですか?」
「もちろん! さぁさ、ついて来て」
台詞だけではただの不審者だが、王様とわかりきっているため女性はなすがままに彼についていった。
「いやぁ、美味かったな。あれなんだ? あのデザート」
「ティラミスですよ」
ティータイムを終えた後、宮殿に帰る途中の話だ。
「とにかくすげえ美味かった! 普段こういうの食べる機会ないんだよね。上層部の連中うるっさいんだよねぇ」
昔と違い、デグラストルの王だからと言って自由であることはなかった。世界は比較的平和だが、帝国に対しては予断を許さない。
「は、はぁ……」
「ま、ありがとな。付き合ってくれてさ。また機会があればよろしくな。それじゃあ俺は宮殿に戻るからさ。ばいばーい!」
もちろん、次の機会などないのだが。彼は時空間転移術で玉座まで飛んだ。
「不思議な人……」
はっきり言って、歴代最悪の国王かもしれない。自由奔放であるためだ。
「殿下! またどこかに遊びに……!」
「え? いいじゃん別に。まあまあ堅いこと言うなって! そんなんで国傾くわけねえだろ!」
「しかし、十八代目国王殿下であられる上に天地の勇者様でございます。勝手な行動は慎んでいただきたい所存」
そう、彼もまたレイズ、レイガ、レイビを継ぐ天地の勇者だ。その自覚が彼にはない。
外交官を務める者はいつも彼に厳しく当たる。
「あー! もう! わーったよ! もう寝るから。ほっといてくれ!」
不貞寝をしようとベッドに横たわり、彼は考え事をしていた。
「なんなんだよ、こんなつまんねえ人生送って俺死ぬんかな。刺激的なことねえのかな。まあ、戦争は嫌だけどさ。…々んーなんだろ、自分でもわけわかんなくなってきた」
まだ彼の思考は幼かった。だがある時、彼は一つの事件に巻き込まれていく。そこで彼は歴代の勇者のように成長するのか、または情けなく生きていくのか。さぁ、今こそ伝説の始まりだ。
次回予告
もううんざりだ。俺は王様なんだ。なんで俺の言うことを聞かない? こんな窮屈な人生やめてやる! 俺は旅に出るぞ! 今までの天地の勇者だって旅をやってきたんだからな!
次回、VAGRANT LEGEND 第一話 始まりの旅