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異世界人は話が通じない  作者: 肉といえば鶏肉
9/22

9話 討伐

 実はギルドに依頼を受けに行く前に、バックパックを探して買っておいた。今まで1個ずつ依頼受けていたが、4~5個一気に受けた方が効率がいい事に気がついた。

 それには採取の草花が大量になるから、バックパックが必要になるって事だな。

 行き帰りの時間も短縮されてるし、これだけ受けても2時間ぐらいで終わるだろう。これでかなり効率上がって報酬でうはうはだな。週休6日いけんじゃね?

 とはいえ実際は将来の不安もあるし、貯蓄したいから稼げるときに稼がないとな。

 

 何もしないで生きていきたい。がちで仕事したくない……

 印税とかフランチャイズで稼げないかな。物流的に無理か。

 ま、今は諦めよう。もうちょい安定したら考えればいい。


 

 さーて、今日もギルドで採取を受けるかな。

 ギルドについた俺は採取系の依頼を5枚手にとって受付にそっと置く。

 前回もそうだったが受付の顔に、にじみ出る驚きの表情。

 もうやめて! 俺のHPはゼロよ!

 いつもならすぐに笑顔になり受任の確認作業を始めるのだが、今回は申し訳なさそうな顔をしている。

 あれ? どうしたの? 俺の事が哀れすぎてそんな顔になっちゃった? 死にたい。


 「申し訳ございませんが、依頼の受任は1度に2つまでとなっております。

お手数ですが、それ以上については達成報告を行っていただいてから、再度依頼の受任をお願いいたします」

 

 と思ったら違った。まじでか、乱獲とかそういう関係か、一度で大量に受任して失敗したりとかの防止か。

 理由を聞いたところでそのルールが変わるわけでもないし、クレーマーっぽくなるのは嫌だから素直に従おう。

 3つ適当に選んで戻してから2つだけ受任する。てか2つでも効率は倍だからよしとしよう。うん。

 受任もしたし、恥ずかしかったからさっさとギルドを出よう。




 ***




 ここ数日毎日の様に採取系の依頼を、一日で大量に達成する冒険者がいる。

 彼はギルドの受付の中で、密かに噂になっていた。

 なぜか私かもう一人の同僚の所にしか依頼書を持ってこないので、大きな噂にはなっていないが。

 その日も彼はギルドに姿を見せた。

 いつもと違って以前は持っていなかった背嚢はいのうを背負っている。

 通常採取系の依頼は専門知識と大変な根気が必要で、1つの依頼に早くても半日、遅いと数日かかる事もざらである。

 それを彼は2時間足らずでこなし、しかも一日にそれを夕方までいくつも繰り返すのだ。

 並みの技術ではない。いったい彼は何者なのだろうか。このギルドで冒険者登録をしたのはつい数日前だというのに。

 そんな事を考えていたら。

 

 その彼はいつの間にか依頼書を持って私の前に立っていた。

 私の前に出された依頼書は……

 

 なんと5枚もあるではないか!

 

 出された瞬間目を疑ってしまう。一瞬言葉が出てこなかったが仕事をしないわけにはいかない。

 気持ちを持ち直して私は彼に説明を行う。

 2つまでと言われた彼は、苦笑いを浮かべていた。

 規則は一般的な冒険者の能力を基準に決められている。通常の冒険者では3つ以上の受任は失敗の可能性が高い為、規則で禁止しているのだ。彼は理由を説明せずとも理解したのかすぐに2つだけ受任し他は戻していた。しかし彼には他の冒険者が無能に思えたはずだ。彼には一日でその何倍もの数の依頼をこなせるのだから。


 まったくもって信じられない新人である。ギルドカードの等級も、このペースだと1ヶ月もあれば昇級するだろう。通常1年かかるのだが。

 見た目は完全に冒険者成り立てであるのに、中身はまったくの別物。

 今後彼がどこまで高みに上るのか、凡人の私にはまったく想像がつかない。



 ***



 心の傷を負いながらも俺は今日も採取系依頼。どんな蔑みを受けても、安全には代えられないからな。

 はぁ、鈍感力スキルまだかな。


 俺は街の外に出て依頼の草の群生地にいつも通り向かっていく。

 最近魔物に遭遇しないので、依頼が非常にスムーズに進んでいる。

 このまま遭わないならそれに越したことは無いんだが。

 

 チッ、そう上手くはいかないか。


 俺の歩いている先、大体20mぐらいだろうか。

 そこに全身緑色の小型で人型の魔物、ゴブリンがいる。

 ゴブリンもこちらに気づいたのか、こちらを見て近づいてくる。

 

 やばいやばい。剣術のスキル上がったけど倒せるのかよ。

 でももう相手結構近くまで来てるし逃げられない。死にたくねぇ。


 あれ? なんか前よりゴブリンの姿にプレッシャーというか、威圧的なものを感じない。

 動きもゆったりだし。いけるかも。いや油断をしてはダメだな。

 もうゴブリンは目の前だ。

 

 牽制のために俺は相手の首を狙って突きを繰り出す。

 

 「ギャギャギャ!」

 

 倒れるゴブリン。

 

 え……あっさりやられてるんですが。倒れてひゅーひゅー言ってるんですが。あ、動かなくなった。




 ――――テテロン♪――――


『レベルが1上がりました』




 お、レベル上がった。


 いや待て。おかしくね? 早熟とはいえ早すぎるでしょ。

 あー、あれか。剣を一日中振り回してたのも経験値になってたのかな。

 どうせ考えてもわからないし、いいや。

 とりあえずステータスを確認してみるか。




 ――――テロン♪――――


 『ステータスを開示します』


 LV:1+1

 HP:40+10

 MP:10+2

 力 :3+3

 体力:3+1

 敏捷:4

 知力:9

 器用:9+2


 スキル:

 『異世界語(オーセル語)LV2』

 『植物知識LV2』

 『採取LV2』

 『ハンネス流剣術LV1』



 アビリティ:

 『早熟』



 おおう。力が結構上がってる。

 このプラスの後の数字がレベルアップで増えた数値か。

 たぶんどのステータスに関わる事をしているかで、レベルアップ時のステータスが上がる数値が決まるんだろう。

 知力が上がってないのは魔法系の事をほとんどしていないからだと思う。

 剣を使えば、力や器用が。魔法なら知力等が上がるって事だな。逆に両方使ってればバランスよく育つって事でもある。

 

 そういえば魔物とはいえ、生き物を殺したのに罪悪感や嫌悪感が全く無い。

 こっちの世界に来て変になったのかもしれない。まぁ都合はいいんだけどね。

 転がってるゴブリンの死体は討伐依頼を受けているわけでもなく、買取してもらえる部位がどこかもわからないんで放置しよう。

 だって処理の仕方とかわからないし。ゴブリンは土に還るのだよ。


 レベル上がって剣を軽く振ってみたんだが、体の動きが違うのが自分でもわかる。

 振りやすいものを選んだとはいえ結構重かった剣は軽く感じる。

 それに体のキレもよくなっている。

 これこのままいったら俺、割りと強くなるんじゃね?

 まぁある程度稼げればいいし、危ないこともする気ないし、そこまで強くならんでもいいんだけどな。


 でもやっぱり魔法は使いたいよね。便利そうだし。楽できそうだし。

 採取の依頼報告したら図書館に行って魔法について調べてみるかな。


 そう考え、俺はぱぱっと依頼の草を採取し街へ戻った。

次回予告:因縁の相手でもあるゴブリンを初めて討伐した彼。魔法を調べる為に図書館に向かうが・・・?


次回 10話 疑惑

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