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異世界人は話が通じない  作者: 肉といえば鶏肉
7/22

7話 武器屋

 剣術スキルを取得したはいいものの、手に持っているのは枝だけ。

 スキルの持ち腐れだな。これは。

 せっかくスキル覚えたんだし、剣を買わないとな。

 善は急げで、さっそく武器屋に行くことにした。

 武器屋の場所は、以前街を散策した時に見たのでなんとなく覚えている。



 

 結論から言おう。


 剣は高くて買えませんでした。

 値札見る限り平均銀貨5枚ぐらいで、今の手持ちでは無理。


 貧乏人は木の枝でも振ってろって事ですね。わかります。

 ドラ○エの初期装備でも、もっと良いもの持ってるぞ……

 逆にドラ○エと違ってモンスター倒さなくてもお金稼げるから、こっちの世界の方がましか。

 今思うとモンスター5体とかにいきなり囲まれたら、絶望だよな。

 あんな世界じゃなくてよかったわ。まじで。


 

 しかたがない、とりあえず採取系の依頼をこなしてお金を稼ごう。

 魔物に遭ったら逃げるしかないな。

 リスク高すぎぃ!


 

 採取の依頼は受任から報告するまででも1回2時間程度で終わる。

 魔物にさえ遭わなければ簡単な仕事だ。

 実際に依頼の草を探す時間は15分程度なんだが、街の外とギルドの往復にかなり時間がかかっている。

 魔物を警戒して周囲を見回しながらだから余計にだ。

 しかし1回の依頼で体力的には問題ないのだが、精神的にはかなりの重労働で困る。

 魔物に遭うかもしれないというストレスがはんぱない。

 胃に穴が開きそうだ。まじで。早く剣買わないとな。

 剣を買うか胃に穴が開くか、いい勝負すぎる。

 そういえば、こっちの世界の医療とかどうなってるんだろ。なんでも魔法で治せそうだが、そんな伝手もないからほんと怪我には注意しないと。

 いや、フラグじゃないからね。フラグじゃないよね?





 1日で3回依頼をこなした所でタオルが投げ込まれた。

 もうゴールしてもいいよね?

 

 まだ昼過ぎだがもう行きたくない。心が折れたよ……完全にな……

 冒険者は毎日こんな生活してるのか? 精神力どんだけ強いんだよ。

 鋼どころかオリハルコンの心持ってそうだ。異世界だけに。

 まぁ俺も剣を手に入れて自衛手段を持つ様になれば、逆に魔物狩りが楽しくなるかもな。


 

 ゴブリンの首ゲットだぜっ! そしてさわやかに笑う俺。



 想像してみたけど……うん。ありえないね。もはやここまでいくと、それは俺じゃない誰かだね。

 

 正直高望みはしていない、自分の才能は自分がよくわかっている。

 街の外に出ても死なないだけの強さと、週休6日で生きていける稼ぎがあれば、それだけでいい。

 週休7日なら言う事ないけど6日でもいいや。俺ってばなんて謙虚。


 

 さてギルドに報告も終わったし、今日はこれで休もう。

 そういえば3回目の依頼報告の時、受付が若干驚いた様な顔してたが、なんだったんだろう。

 採取なんて簡単で安全なものばかりやってるから、成長しないやつだと思われたのかもな。はぁ、欝だ。

 友達いない受付のくせにむかつく。ぼっちは会話をしない上に迷惑がられる事が多いから、人の顔色をうかがうのは必須スキル。

 受付もプロだから隠そうとしてはいたんだが、ぼっちマスターの俺の前ではそれも無駄な努力だったな。



 気分を盛り上げる為に脳内BGMで歩いて帰ろうを流しながら、俺は宿に向かうのだった。

 今思うと、俺の元いたあっちの世界の曲はもう聞けないんだな、ちょっとさびしい。

 

 歌は結構好きでカラオケにはよく行ってたっけ。

 とりあえず最初に5曲ぐらい入れるのが常識。

 その5曲歌っている間に5~6曲入れれば大体1時間になる。カラオケは1時間がちょうどいいんだよな。

 10曲も歌えばさすがに飽きる。

 鉄カラしたわ(笑) とか言うやつはそんなに歌う曲あるのがすごい。

 あれ? あぁ、そうか。何人かで行けばその分自分の歌う曲は少なくなるのか。

 正直、その発想はなかった。

 俺には一緒にカラオケに行くやつなんていなかったからな。

 いやーまったくまいったね。



 はぁ……リア充絶滅しろ……

 


 世界がぼっちであふれればいいのに。

 そしたら争いも無く世界は平和だぜ?

 ぼっちのぼっちによるぼっちの為の世界。

 

 平和だろうけどすぐ滅びそうだな。

 やっぱ俺の目に見える範囲だけぼっちならそれでいいや。

 うん。やっぱり俺ってば謙虚。ぼっちは高望みしないもんだ。




 ***




 その後も採取の依頼をひたすらこなしていった。


 時々この前の剣士と魔術師の冒険者を見かけては追跡ストークして

 スキル向上の為に見学(覗き)しているんだが、やっぱり動きがすごすぎて参考にならなかった。

 剣術LV1じゃあ真似できないのか。チッ


 もちろんその他の冒険者達もいるが、むさいおっさんの後をつける趣味は俺にはない。

 


 採取ばかりやっていたら『採取』と『植物知識』のLVが両方とも2に上がった。

 LV上がって採取にかかる時間が15分から10分に。

 あと食べれる草か食べれない草か見分けられるようになった。


 やったね! これで食うに困らない! 嫌だな。そんな生活。

 まぁ街と街を移動する様になったら長旅になるだろうし、かなり便利かもな。

 なんかどんどん街の外での生活能力が上がって来てる気がする。

 人がいない方へいない方へ行こうとするのは、ぼっちの習性だからしょうがないね。うん。




 ***



 

 1週間自畜した成果が出て、ようやく剣を買えるお金が貯まった。

 あっちの世界では座り仕事だったから、ここ何日か歩きっぱなしでかなりつらいわ。

 てか銀貨8枚も稼ぐとか我ながらがんばった。実際は6枚あればいいんだが少し余裕を見て稼いでおいた。生活費もあるしな。

 もともとの手持ちは1週間の生活費になったので、今の所持金は銀貨8枚。

 1日大体大銅貨3枚あればご飯が食べられて宿に泊まれる。

 ほんと自分をほめてあげたいね。誰もほめてくれないからな。俺だけは自分をほめてやる。

 そういえば銀貨10枚で大銀貨1枚なのだが、大銀貨は普及していないのか?

 どの店も銅貨、大銅貨、銀貨での値札しか見ないな。

 まぁ大銀貨なんてあっちの世界で10万だし、こっちの世界ではそんなもの置いてあっても庶民には手がでないか。

 

 座り仕事といえば自宅警備員ニートだけども、それは何年か前に卒業した。

 バイトで稼いだ貯金が無くなってしぶしぶだったけどな。

 あの頃は主食がもやしだったわ。もやし料理のレパートリーなら誰にも負けない自信がある。

 いやはや懐かしい。お金たんまり稼いだらまた自宅を警備する仕事に就こうかな。いつになるかわからんが。

  

 さーて、それじゃあ武器屋で剣を購入しに行くかな。

 そう思い、宿屋のベッドの上で数えていた硬貨をしまい、部屋を出て行く。大銅貨中心だから割と重くてだるい。

 財布代わりの袋は適当に雑貨屋で買った。

 巾着がこっちの世界にもあったのには驚いたな。

 てか下着とかも割りと普通に売っていて、変なところで進んでるから面白い。

 洗濯とかもできるし、風呂も入れるのも良い。

 割と衛生面では現代っ子の俺でも満足いくレベル。

 仕組みはよくわからんが、たぶん魔法とか使ってるんだろう。

 どうやってるかなんてわからなくても、使えればそれでいい。



 

 そんな事を考えている内に武器屋に到着した。

 

 武器屋だけあって品数は豊富だ。

 その中から軽く振ってみてしっくりくる物を選ぶ。

 常に腰に下げてるからあまり重いのはいやだし、かといって軽すぎると魔物を倒せるか不安になる。

 なかなかしっくりくるのがなかったが、店に置いてあるのをひたすら振っていいのをようやく見つけた。

 値段は? 銀貨6枚か。よし買えるな。

 

 「あ、あのー。これを……」

 

 静かな店内にか細い声が響いた。


 我ながらこのコミュ力の無さには悲しくなる。でもしょうがない、だってぼっちだからね。

 店主は強面のおっちゃんだったが、無言で剣をひったくると俺の事をじろりと睨む。

 買うのは明日にしようかと俺が思い始めたぐらいになって、おっちゃんは睨むのをやめて店の奥に引っ込んでいった。

 

 おっちゃんは1分ぐらいで、剣を腰に下げる様のだと思われるベルトと鞘を持ってきた。

 お前には売らないから帰れって意味かと思ってびびったじゃないか。

 本気でへこんだまま宿に帰る所だったわ。

 

 「銀貨6枚大銅貨5枚でいいぞ」


 恐ろしく無骨な声がした。いや怖すぎるよ、おっちゃん。

 あれ? 剣が銀貨6枚な所を考えると、結構安くしてくれてるんじゃね?

 ベルトもすごい作りがしっかりしていて、いいものっぽいし。

 見た目に似合わずやさしいな、おっちゃん。


 言われた通りのお金を支払ったら、ベルトまで着けてくれた。

 あれれ? このおっちゃん、ツンデレなのか?

 おっちゃんのツンデレとか、需要皆無だろ。

 供給過多で値崩れが激しすぎる、むしろ見せられた俺にお金払ってもらいたいまである。


 

 俺はついに剣を手に入れた! テッテレー


 しかしスラックス&ワイシャツに剣は似合わなぇな……

 この格好だと動きにくくてうざいな。

 お金はまだあるし、動きやすい服でも見繕うかな。

 武器屋があれば防具屋もあると思うが、防具は防御力上がっても動き遅くなるからやめた方がいいのだろうか。

 普通の一般着のがいいかな。少なくとも靴はしっかりとしたブーツが欲しいが。

 素人の俺には何を買えばいいのかさっぱりだな。どうするか。

 わからないし、適当に動きやすそうな一般着でも買うかなぁ。



 そんな事を考えて街をうろうろしている時だった。




 「ねぇ、あなた。その格好で魔物と戦うつもり?」




 黒髪の美少女剣士に声をかけられたのは。


次回予告:ぼっちの彼にとって、最大の試練(コミュニケーション)が始まった……


次回 8話 防具屋

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