2話 遭遇
草原のど真ん中でしばらく呆然としていたが、
しばらくたって多少冷静になってきた。まだあわてるような時間じゃない。
記憶がどうも曖昧だが、仕事に出勤しようと家を出た記憶まではある。
しかしその後がどうも思い出せない。
なぜこんな所にいるのか、さっぱりだ。
ふと自分の格好を見ると出勤時のスーツ姿だった。
しかし朝持っていたはずのカバンはなく、
スーツのポケットを触ったが財布やケータイ、家の鍵も無くなっている。
てかポケットに入れていた物が全部ないんだが。
おいおい、拉致られて追いはぎにでもあったのかよ。
日本の治安の良さはどこいった?
グー○ルマップがいれば……グー○ルマップがなんとかしてくれたのに。
しかも金ないとか帰れんのか? 俺やばくね?
まぁうだうだ考えていても仕方がない。
とりあえず街がありそうな所まで行くか。はぁ、めんどくさい。
改めて回りの景色を見渡すと、遠くに道らしきものが見えた。
よかったよかった。それをたどっていけば街にでるだろ。
でるよね?
さきほど見えた道らしきものを歩いているんだが。
まったく舗装はされていないし、道幅は3~4mで草がなく土が見えている。
本当にそれだけの道だ。そうとうな田舎だなぁおい。
都会っ子に無理させないでほしい。まじで革靴で歩く道じゃないな……
田舎道を歩くのはアニメの中だけでいいなのん。
それに虫もいっぱいいるし。最悪だ。
そんな事を考えつつ10分ほど歩いたところで、第一村人発見!
若い女性がなにやら花や草を抜いていてる。何に使うのかわからないが。
ともあれこれでこの道を歩いていけば、街に行ける事がわかったな。
当然だが道を聞く事はしない。
ぼっちが見ず知らずの人にいきなり道とか聞けるわけないからな。
別に声かけて無視されたらどうしよう、とか経験則から恐怖心を覚えているわけではけしてない。
本当にあれはやめて欲しい。勇気出したのにあれやられたらもう一生、人に話しかけられなくなるだろ。
逆に考えれば俺が話しかけない事で声をかけられて迷惑を被る人も、無視されて傷つく俺もいなくなる。これがいわゆるWin-Winの関係か。
やはり人に話しかけない事。それがぼっちの真理
何事もなかったかの様に通り過ぎようとしたら、こちらに気づいたのか目があった。あ、かわいい。
その瞬間。
「―――! ―――!」
女性は驚いた顔をし、何かよくわからない言葉を発して走っていってしまった。
あれ?目から液体が出てきそうだよ?
そこまであわてて逃げなくてもいいじゃないか。
そんなに俺の見た目があれだった?
こんな人畜無害なぼっちを捕まえてひどいぜ。
俺の人間不信が加速しすぎて加速世界の王様になれるんじゃないかってぐらい加速してる。俺にも加速世界に連れて行ってくれる先輩がいればなぁ……
まぁ実際いてもあんなめんどくさそうな事したくないし、格ゲー苦手だし。王様にもなりたくないし。断るね。
結果いなくよかった。ぼっちでよかったわー。やはりぼっちは最強。
それよりさっきの女性のしゃべった言葉。日本語じゃなかったんだが。
あれれー?おかしいよー?
ここ日本じゃないのか? もしかして。マサカ ハハハ
スカーフみたいなのを頭に巻いてたから遠めではわからなかったが、目が合った時見えた女性の顔は日本人ぽくなかった。
それに女性の話していた言葉は英語ですらなかった気がする。
センター130点の俺が言うんだから間違いない。うん。
まったく自慢になってないのは気のせいだと思いたい。
俺は飲み込みは早くてそこそこの点数は取れるけど、そこから伸びない早熟タイプなんだよなぁ。
器用貧乏といわれたりもする。まぁただ飽きっぽいだけかもしれんが。
英語圏ではないとするとヨーロッパか? わからんが。
ともかくこのまま行けば街に行けそうだし、ついてから考えよう。
そうして俺は女性の後を追うように歩き出した。
次回予告:見知らぬ土地で初めて人と会った彼。その後街に入ろうとするが?
次回 3話 能力開花