え、謁見?
「謁見だからね。これを着て。」
教科書の中で見た服だ。
確か、召還されたものが着ている服だったと思う。
日本で言う着物のようなものだ。
袴タイプで、振袖のようになっている。
上は白から白に近い灰色で、下は薄めの灰色から限りなく黒に近い灰色だ。
いわゆるグラデーションになっている。
「後これも。首につけていて。召還獣の証だから。」
丸い真珠のような球体のついたネックレス。
球体は白銀色で、何かがびっしりと彫られている。
俺は着慣れない服にやっとの思いで着替え、ネックレスをつけてもらう。
何か自分が自分じゃないみたいだ。
「さて、陛下のところに行こうか。あ、陛下の名前はディルファーナ・カルゼムディア。俺の従兄弟だから。」
まさかの親戚だったのは驚きだ。
「陛下、俺の新たな召還獣を連れてきました。」
王座の間といわれる部屋に、俺とシエルはいた。
なんか、王の前では跪いて挨拶をするのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
軽く頭を下げただけだ。
「ほう、その子が血の契約の・・・。私はディルファーナ・カルゼムディア。一応この国の国王だ。
よろしく頼むぞ、霧風蛍登。いや、ケイト・ノタール・カルゼムディア。ケイト・ムディアという名もあったな。ふむ、どれがよいかな。」
イメージとだいぶ違う。
話し方はイメージした王様と同じなんだが、とても若く、まだ20代半ばくらいにしか見えない。
身長は高く、パッと見180cmは超えている。
紫色の髪に、目は緑。ということは、雷と風属性か。
「あ、よろしくお願いします。お好きに、呼んでください。」
俺はとりあえず頭を下げた。
「そうかしこまらなくてかまわんよ。ケイトと呼んだので構わんかのう。
シエルはそう見えてまだまだ子供じゃ。そなたはシエルよりしっかりしておるように見える。シエルを頼んだぞ。」
「あの、陛下。俺のほうが年上です。というか、俺のほうが頼りになります。
ケイトは向こうで15歳、こちらの年齢で考えると10歳ですよ?俺は15歳です。」
シエルが国王の言葉に意見した。
その発言が子供っぽく見せていることはきっとわかっていないのだろう。
「俺は必要なときはシエルのそばにいます。シエルのそばで、シエルを護ります。それが契約ですから。」
「俺だって護ります。大切な召還獣ですから。」
俺の言葉に、シエルも決意を固めた目で国王に言った。
「そうか。そなたたちは国を支える立派な柱じゃ。無理は禁物じゃが、がんばってくれよ。」
言葉の一つ一つから優しさがにじみ出ている。
がんばれというのは簡単だ。
けど、無理はダメだと言うあたり、相手を思いやっている感じがある。
「はい。」
「わかっています。で、別件ですが、最近たまに変な魔力を感じます。ねっとりと、へばりつくような気味の悪い魔力。
まるで、どこかで闇の禁呪でも使っているかのような・・・。気をつけてください。」
シエルはそれだけ言うと部屋を出て行った。
俺もシエルの後を小走りで追いかけようとする。
「ケイト。シエルを、頼むぞ。あれは厄介ごとに首を突っ込んで自滅するタイプの人間だからの。」
「・・・はい。俺がシエルを護ります。何があっても。」
契約だからではなく、シエルは俺の恩人だから。
そして、短時間でも一緒にいてわかった。
彼がいかに皆に好かれているのか、頼られているのかを。
俺はそう返事をしてシエルを追いかけた。
・・・のだが、見失ってしまった。
広い城内、ほんの少しの間に消えてしまったシエル。
どっちに行ったのかわからず、俺はとりあえず来た道を戻っていった。