え、魔法って簡単?
「さて、解除の呪文を教えよう。インビジブルアウト。だ。体の中を巡る血の流れを感じながら、目を閉じて心を静めて。」
俺は無心の状態になり、体の中を流れる血を感じながら言葉を聴いて復唱した。
「血の流れ、ね・・・・・・インビジブルアウト。」
静かに唱えた呪文とともに、俺の体が光りだす。
「うわぁ。可愛いね。というか、魔力の流れを掴むのが早い。」
目の前にいるシエルがうれしそうに笑っている。
「え、どんな姿なんだよ。」
自分の姿が見えなくて不安になりつつシエルを見る。
「年齢が関係しているみたいだ。ほら。ミラー。」
目の前にちょっと大き目の鏡が現れる。
魔法は便利だな・・・って、なんだこれ。これが俺の姿なのか?
鏡に映ったその姿は、成人男性とほぼ同じ高さの真っ白な狼だった。
「ウォーウルフの子供か。ちょっと色が違うな。ウォーウルフは灰色だから。白銀の狼・・・レジェンドウルフ。伝説の白銀狼。」
俺の頭をなでなでしながらすごいものを見たかのように驚いている。
というか、成人男性とほぼ同じ高さの狼が子供ということに驚きを感じた。
「レジェンドウルフ?」
俺はその名を聞いたことがなかったので、首を傾げる。
「再生前に存在したといわれる最強の陸上生物だ。その割には温厚な性格を持っていて、大切なものを護るために戦うらしい。」
レジェンドウルフの説明をしてくれるが、どうやら今は存在しない種族らしい。
「もうこの世界にはいないのか。」
俺がちょっと会ってみたかったなと落ち込むと、にやりと笑うシエル。
「どこかに生き残りがいるらしい。もしかしたら会えるかもしれないな。」
俺のフサフサとした毛に顔をうずめてくる。
俺もやりたいのに。
「再生ってなんだよ。」
俺はもうひとつ気になった言葉を質問した。
「この世界は一度滅んだ。大昔に大規模な魔術での戦争が起こって。生き残りが必死に立て直した世界が今の世界だ。」
真剣な話をしているのに俺の頭を撫で続けるシエルにちょっとイラっとしながらも、俺は真剣に話しを聞いていた。
「世界大戦の大規模版か。・・・で、俺はこの姿にならなければいいんだよな。」
さすがに人でないのがもろばれな今の姿に学校でなれるわけがない。
「そ。あと、変装してもらおうかな。髪の色を銀にしよう。くれぐれも、時の魔法は学園では使わないようにね。俺の弟として入学させるから。」
「え、シエルって何歳なんだよ。」
弟というくらいだからまだ若いのだろう。確かに父親というにはまだ若い気はするがそれでも20歳くらいだろう。
「15歳だよ。こう見えて高等部の1年生。学校では大魔道士であることは隠している。名前も、シエル・ムディアと名乗っている。」
「じゃぁ、俺はケイト・ムディアになるのか。で、本名がケイト・ノタール・カルゼムディア。召還されているときは霧風蛍登。」
「そうだよ。理解が早くて助かるね。君はそこら辺の初等部の子たちよりよっぽど頭がいい。向こうの世界で高校生をしていたからかな。」
年齢を聞いたからか、シエルのことがものすごく老けて見える。
しゃべり方というか、落ち着き具合というか、まるで大人のようだ。
だから俺は自分より年上で20代だと思ったのだ。