・・・え、ここどこ?
・・・ここはどこだろう。
目が覚めると、そこは高級なベッドルームだった。
「目が覚めたか。おはよう、ケイト。」
そこには死にかけたときに意識の端っこで捕らえていた人物がいた。
「たしか、シエル・・・だっけ。」
「そうだよ。改めまして、俺の名はシエル・ノタール・カルゼムディア。ここは君の住んでいた世界とは違う世界。君はあちらの世界では死んだことになっている。」
いきなりの衝撃発言に、寝ぼけている俺は夢だと思った。
「夢じゃない。君は俺と契約を結んだ。血の契約をね。君を助けるにはそれしか方法がなかったんだ。覚えているかい?ちなみにあれから3日経ったよ。」
シエルはそういって俺が寝ているベッドに腰掛けた。
あれは夢ではなかったらしい。腹を刺され、死に掛けて、何かよくわからない契約を結ぶとか言われたあれは。
そしてその件からすでに3日が経過しているらしい。
「君の身体はこっちで創りなおした。違和感や異常はないかな?」
そういわれて俺は身体を起こした。
腕が細い。というか、体全体が細身で、まるで子供のようだ。
「違和感ってか、なんか、子供みてぇ。」
そう言った声も子供のように少し高めだ。
「君の年齢をこちらの時間で換算するとそれくらいなんだ。外見で言うと10歳くらいかな。」
そういって差し出された鏡を見て俺は固まった。
顔は小さい頃の自分とほぼ同じ。けれど、赤だった目の色が黄緑と紅に、真っ黒だった髪の色が銀と金が混ざっている不思議な色合いになっているのだ。
「それは属性の色。黄緑は風の上ランクで嵐。紅は火の上ランクで炎。銀は光、金はめったに現れない時を操るもの。」
やっぱり君は力が強かったと、楽しげに話しているシエル。
嵐だの炎だの言われたところで、まったく意味がわからない俺にとっては力が強いといわれてもピンとこなかった。
「この世界には魔法がある。使い間も存在する。一応君も使い魔になるんだけど、力が強すぎて人の形になったみたいだ。血の契約でもあるし。」
前々からきいていたが、血の契約とは一体何なのだろうか。
「あの、血の契約ってなに。」
俺は勇気を出して声に出してみた。
「血の契約ってのは、この世界では禁忌の術でね。なぜかって言うと・・・」
そこから語られたのは、俺が真っ青に青ざめるようなないようだった。
血の契約とは、契約対象にするものを半殺しにして、その血を主な材料として契約を行う。
本来使い魔はもとの世界で暮らして呼ばれたときだけ召還されるのだが、血の契約の場合は強制的にこちらの世界で生活させられる。
そして、契約主の絶対命令を受けるとその通りにしか行動できない。
絶対命令は契約の際に決められ、俺の場合はシエルを護ること。
強い使い魔を血の契約で契約した場合、そしてさらに絶対命令をした場合、命令内容によっては世界を滅ぼす悪魔となるらしい。
過去に世界を滅ぼし自分が王になると言う契約をした使い魔は、死ぬまで世界を滅ぼすために動いたそうだ。本人の意思ではなく、契約主の命令で。
使い魔にも種類があり、大きくて人に近ければ近いほど強いそうだ。
「じゃぁ、完全に人の形をしている俺はめちゃくちゃ強い・・・のか。」
「そういうこと。さて、何か聞きたいことはあるかな。」
シエルがそういったときに、コンコンと来客を告げるノックがした。
シエルが扉を開ける。
「シエル様、お茶と軽食をお持ちいたしました。」
メイドさんが持ってきた押し車には、二人分のサンドイッチと飲み物が置かれていた。
「ありがとう。そこに置いてくれるかな。」
シオンはベッドの近くを指差してメイドに指示をした。
「かしこまりました。では、失礼いたします。」
メイドさんは食事を置いて部屋から出て行った。」