え、いつもの日常?
朝、いつもと同じ時間に鳴る目覚ましにちょっとだけ苛立ちを覚える。
「あー、もう。面倒だな。」
けたたましい音を鳴らしながら朝を知らせる目覚ましを少し乱暴に止めて、制服に着替えてリビングへと向かう。
「おはよう、蛍登君。」
母親がキッチンの中から話しかけてくる。
「おはよう。今日はなに?」
身支度を整えながら聞けば、母はできた料理を食卓に並べていく。
「和食よ。」
そっけない一日の始まりの会話。
本名は霧風 蛍登という名前で、毛糸でマフラーを編んでいたときに破水して生まれたからその名前にしたそうだ。
よく漢字を間違えられるが、そのあたりはもう慣れっこだ。
父はサラリーマンで、俺より朝早くに出て夜も遅いからあまり会うことがない。
母はパートで、10時から4時まで働いている。童顔で若く見られがちだが、これでも40過ぎだ。
妹が一人いて、今小学5年生だ。運動能力は女子にしては高く、学力はいいほうだ。
俺は高校1年生で、成績も運動能力もいいほうだが、それでも暗記科目が飛びぬけていいだけの一般的な人間だ。
和食は妹の光が大好きなメニューだ。
「光を起こしてくるわ。」
母はそういって妹を起こしに行った。
母は妹の光を溺愛している。俺にはあまり愛情を注いではくれない。
きっとこの目の色のせいだろう。
俺は真っ赤な血の色のような目の色だから。
学校や外に出るときはカラーコンタクトをして隠しているが、普段は疲れるのでしていない。
「・・・また、遅刻ギリギリまで起きて来ないんだろうな、あいつ。」
そう呟いて俺は食事を取った。いつものことだった。
そのあと俺は学校に行って、友達と雑談をして授業を受けて部活に行って・・・。
何の変哲もない日常の一日を送った。
そう、本当に、ここまでは何の変哲もない一日だったんだ。
始まってしまいました。
はじめのうちは定期連載で行きます。
毎週火曜日の17時です。