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Online Story  作者: 絶英
序章「始まり」
3/8

0.2

 夕方の5時あたりまでソロでダンジョンに潜り(朝飯、昼飯は食べてます)そこからARU熊が入ってきたので、PTでダンジョンに行った。なかなか湧きが良くARU熊も俺もステータスLVが大分上がってしまった。


 とうとう、巣穴占領戦開始の10分前になってしまった。巣穴占領戦は22時から24時まで、その間なら何度巣穴を襲撃しても構わないことになっている。

そして、今回宣戦布告してきたギルドは10つ。他に攻めるとこはないのか……。少数ギルドもあるが、ほとんどが大規模ギルドだ。これは大混戦になりそうな気が……。

「ジュン、そろそろ始まるぞ。守兵設置してる?」

 守兵というのは、その名の通り巣穴を守る兵のことである。町にいるNPC「傭兵隊長」から守兵を購入しそれを設置する。1人20Gで、今回設置したのは500人で1万Gだ。

このゲームのゲーム内マネーは現実と同じ価値に近くなるように作られている。つまりかなり手に入れにくいのだ。実際に、敵のドロップからGは出てこず敵のドロップするアイテムを売って儲けることになる。そのアイテムも初期の敵からでは3G程でかなりのプレイヤーが金欠になり助けを求めていたのを覚えている。まぁ俺もだけど……。

「おう、迷路の中においておいた」

「おっけ。じゃぁ打って出るぞ」

「おう!」

 そう言って、俺とARU熊も迷路の中に入っていった。

 露店で購入した、設置型カメラ――現代で言う監視カメラが撮影する光景を俺は迷路内で、ウィンドウで見ていた。それにしてもすごい光景だ。巣穴を取り囲んでいるのはプレイヤーの大軍だ。あのギルドマークは「Gaia Gaia」で、数は70近くってとこだろう。あれは、大規模ギルド「VIP帝国軍」のものだ。数はGaia Gaiaには及ばないが50近くってとこだ。ガチ勢が勢ぞろいだ……。

「さっきから何見てんだ?」

「カメラ設置しといたからそれの映像だよ。ガチな奴らが勢ぞろいだぞ」

「まぁ、MOBが所有してた最後の巣穴だからな」

 そう、ほとんどの巣穴は大規模ギルドやランカーが集まる少数精鋭ギルドが所有しており、普通の小規模中規模ギルドでは占領は難しいのだ。だから、どこのギルドもこの巣穴を血眼になって落とそうとしていたわけなのだ。

「そろそろ時間だ」

 そう言われ、俺はもう一度映像に目を傾ける。

 巣穴を取り囲むプレイヤーがゆっくりと、ゆっくりと巣穴の迷路に近づいてくる。そして……。

『22時になりました。巣穴占領戦が解放されました。両軍奮闘してください』

 女性の声のアナウンスが空高くから鳴り響くと同時に、ゆっくりと近づいていたプレイヤーが猛スピードで突進してくる。

「来るぞ!」

 俺はそう叫び忍者刀を構える。ARU熊はすでに戦闘準備に掛っておりバフをかけていた。

「早くしろよ。守兵はメタルアント並みに弱いんだ。1ギルドならまだしもこの大軍勢ならすぐ抜かれるよ。そっちもバフかけろ」

「お、おう」

 そう言い俺もバフを掛けた。そんなこんなで5分経った。俺たちが守っている迷路の出口付近に敵の先頭が姿を見せ始めたころだった。

「抜かれるのはや!」

 守兵弱すぎだろ……。

「期待したらだめだろ」

「そりゃそうだ。んじゃもう1回確認しとくけどリスポーンしたらその場待機。出口を敵が潜ったら撤退」

「了解!」

 ARU熊が返事をするとともに俺たちは迷路の中に突っ込んでいった。



「こいつ強すぎてワロタ……」

 倒れながら言うのはランカーで、総合順位6位のPOPO(ポポ)

 今俺は迷路に来る敵を真っ向から排除している。どんなに弱くステータスLVが低い相手であろうとも容赦はしない。倒しても倒してもリスポーンしてくる。だがそれらを倒しまくる。叫びたい。俺TUEEEEと。

 何て考えているうちにHPバーが黄色になっていた。前衛が俺の気を惹いている間に後衛が弓で俺を撃っていたのだ。一発のダメージが低かったので全然痛みが無かった。減っている感覚も皆無だった。これは本当に計算外だ。体力が減ったなら回復すればいい。だが、相手がスイッチをして永続的に攻撃をしてくるため、回復薬を取り出し飲むという時間を作ることが出来ないのだ。

「いったん撤退だな……」

 俺は思考操作チャットを使ってARU熊に撤退を告げる。

『アル。そろそろ撤退するわ。弓に撃たれて体力後3分の1』

『じゃぁ撤退するわ。そろそろ危険域の赤に突入するから』

『分かった。雷神御札使って逃げるぞ』

『了解』

 チャットを終えるとアイテムBOXから取り出していた雷神御札を投げつけ、雷柱に相手が驚いている間に巣穴内に撤退した。

 俺とARU熊が合流したのはオブジェがある部屋だ。ここを後1時間30分守れば陥落は免れるのだ。途中途中の部屋に守兵を隠しておいたので足止めはできるし、オブジェの部屋にも守兵を数人設置しているので敵戦力の分散にもなるだろう。それを考えると敵が到着するのは30分遅れて23時。そこから1時間守り続ければこちらの勝利となる。

「まぁ予想通りだな」

 予想通り23時に敵の軍勢がやってきた。何かみんな仲良いね。他ギルドとドンパチやるのが普通なのに。

「さて、こっからはオブジェの取り合いだ」

 大ギルド――「Gaia Gaia」の軍団長らしき人物が叫ぶ。やっぱりオブジェ部屋でドンパチやるんですね。こっちとしては嬉しいことだけど、大混戦になると思うんだが……。

「強敵は2人だ。突撃!」

 数百のプレイヤーがオブジェの部屋に雪崩込んでくる。既にギルド対ギルド戦が始まっているようでオブジェ部屋の前では少しでも戦力を削るために戦いが起きている。ありがたいことだ。

 俺の周りにうじゃうじゃとプレイヤーが集まってくる。俺はその集団の中に突進していき、敵の目の前で最大速度を出しその速度に乗って敵の腹を忍者刀で切り裂く。そして、少し過ぎた所で地面を蹴りあげオブジェの方に戻るようにムーンサルトして落下時にさっきとは違う敵の頭めがけて忍者刀を突き刺す。その勢いを回転へと使う。空中で前転するかのごとく回転し落下と同時に剣を振り下ろす。これで3人倒した。

 その、防御しようのない異様な光景に体を固まらすプレイヤー。それらにさらに威圧を掛ける。高速スピードで円の中心に一番近いプレイヤー達の少し前を高速スピードで通り抜ける。勿論これは攻撃だ。高速移動の際に剣を敵の首元あたりに移動させ標準の背の高さなら首が切れるようになっているのだ。敵も防御しているが首がガラガラになっている。

そのため容易に倒すことができた。これで合計10人倒した。

「こんなの……ありかよ……。前衛はタンクだぞ……」

「ありがたいな。このPvPに関しては相手を倒せば経験値がもらえるからな。こんな低いHPのタンクならいくらでもかかってきてくれ。うまうまだ」

 俺は相手を嘲笑い、敵を挑発する。

「これだけ人数がいる。スキルは使うだろうから、いつかはスタミナ値が切れる。それがチャンスだ……。とにかく全軍かかれぇ!」

 AOではスキルを使うとともに、スタミナ値が減少していく。スタミナ値がなくなると、スタミナ値を自然回復するまで一定時間動けなくなる。スタミナ値を即効で回復させる回復薬はなく、あるのは自然回復量を増加させるスタミナ回復促進剤というアイテムだけだ。

「残念ながらそれは無理なんだわ。なぜなら俺は極力スキルは使わない。使うとしたら危ないときだけだからだ。スタミナ値がスキルにより減少しても次のスキル使用まで時間が空くから自然回復するというわけだ」

 俺はそう言い、プレイヤー集団(1つのギルドの集団)を指揮していると思われる重装甲+盾+片手剣を装備するタンクの元に素早く駆け寄る。

「俺は倒せない」

 そう言い放ち、忍者刀を無防備になっていた背中に差し込んだ。重装甲タンクは蠢きながらも剣を振り上げ剣の柄で背中に打撃攻撃を与えようとする。が、そんなものを食らうわけなく、剣を一時手放し左足を重心にしてバスケのバックロールターンのようにくるっと回り相手の背後に行く。重心においていない方の足がつく前に剣を抜き、足をつくと同時に剣を横に払い重装甲タンクの背中を切り裂く。

 叫び声をあげるタンクだが、俺の動きには全くついていけてない。重装甲タンクの背中を切った所で周りにいるプレイヤーが武器を構えながら近寄ってきたのでムーンサルトでさっきまでの位置に戻る。着地と同時に高速移動で重装甲タンクの目の前に行き1回切る。重装甲タンクが呻き、そちらの方向に目を傾けている隙に低い姿勢で右にサイドステップし1回切り、さらに左にサイドステップして1回切る。その時点で重装甲タンクのHPバーは残り3割程になっていた。

 3割だとあのスキルで一撃で鎮めることが出来るはずだ。そう思い、アイテムBOXから閃光玉を取り出し相手の方に投げつける。目を瞑り一瞬の閃光を回避したおかげで俺はなっていないが、他のプレイヤーは一瞬の閃光を目にしてしまったので視界が一気に明るくなり目が見えない状態になっているのだ。そこには大きな隙ができる。この隙を狙っていたのだ。

「フラグビー……」

 そう呟き、溜めに入る。溜め時間は3秒だ。閃光玉の効果は5秒。余裕で間に合うわけだ。

 俺は、高速移動し重装甲タンクの腹にスズメバチの針のような強力な一撃を忍者刀で与える。

「ぐふっ!」

 重装甲タンクのHPバーは一気に減り、HPバーが消滅する。

「高速移動は通常スキルじゃないのか……」

 死にそうな声を発する重装甲タンクに向かって俺は「違う」と吐き捨てた。重装甲タンクは地面にゆっくりと倒れ、地面にその装甲が触れる前にポリゴンの欠片となり消滅した。

 俺の高速移動はスキルでもなければ、敏捷Lvが高いからこうなっているとか言うわけじゃない。敏捷Lvが上がることで恐ろしいぐらいに早くなるのは間違いない。だが、俺が使っている高速移動はまた違う。

俺の高速移動は、他のMMORPGで言う職業スキルをプラスしたようなものだ。AOにはスキルはあるが、職業スキルなんてものは存在しない。職業自体存在しないのだ。だが、AOの運営は筋力Lvが高い人などに職業スキルに近いもの――筋力上げの人なら「バーサク」を時々配布したりしてるのだ。俺の高速移動もまさに運営に配布されたものだ。俺のはAO内で一番敏捷Lvが高いため配られたらしい。と、まぁこんな感じで俺は敏捷Lvでの素早さに高速移動のスキルを付け足したようなものなのだ。因みにその俺の貰った高速移動はスタミナ値を一切消費しない仕様になっているのだ。

 視界が回復してプレイヤーは驚愕とした。

「ギルマスがやられてんじゃ……」

 完全に戦う意欲をなくしている。こういう奴らと戦うのはどうも気が進まないがしょうがない。俺は忍者刀を構え突進した。


 

 後5分……。疲れ切った体を何とか動かして、襲いかかってくるプレイヤーを連撃を加える。ARU熊はどうしただろうか。チャットがないからまだ奮闘してるのだろうか……。

 俺はそう思いながらも自分のHPバーを見る。5割を切っていた。流石に1時間ここで戦い続けるのは精神的にも疲れるのだ。不意を突かれてプレイヤーの攻撃が当たることもある。

 そしてとうとう……。

『24時になりました。巣穴占領戦は終了です。速やかに撤退してください』

 守りきったのだ。2人だけであの人数のプレイヤーを相手に守りきったのだ。俺とARU熊は言葉に出せない喜びを抱えていた。

「また2日後。大変だな」

 ARU熊が地面に座りこんで「リスポーン7回したわぁ。疲れたぁ」と嘆いている。

「明日巣穴ダンジョンでウハウハするか」

 俺はそう言って座り込むARU熊の肩を叩いた。

「あぁ」

 ARU熊はコクっと頷き立ち上がろうとした。その時――。

「アル! どうした」

 突然ARU熊が地面に倒れたのだ。俺がARU熊に駆け寄ろうとした。

「うっ……」

 突然の眠気が俺を襲った。抗うことが出来ず俺は倒れた。




 ――気づいたら、そこは真っ白な世界だった。



 

次回からデスゲームに行きます

投稿予定日未定。4839文字

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