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I am Unknown  作者: 雪人
4/7

crash -墜落-

「隼人おおおおおおおおお!!!」

俺は叫んだ。追撃を受け、隼人の機体が爆散する。

あれでは、生存なんて出来るわけは無い。もしかしたら生きているかもしれない、そんなわずかな希望を残すことさえ、敵は許してくれない。


敵を見た。

敵は悠然としている。まさか、戦闘機の癖にホバリングが出来るとは。まるでこちらが動くまで何もしないというようだ。外見も見たことが無い、黒い機体だ。

レーダにはUnknown-未確認機の文字。新型だろう。

先ほどの隼人が撃った機関銃の避け方、そして健二を落としたときの距離。パイロットも、かなりの腕前だ。恐らく、あれに勝てるやつは皇国にはいない。合衆国の中でも多分、最強だ。



…どうして俺は、ここまで冷静に判断してるんだろうな。仲間が二人も殺されたというのに。なぜ、その相手を評価してるんだ。

俺は自嘲気味に笑う。

ここは隼人みたいに切れるべきなのだ。仲間を殺されたのだ。相手を罵倒し、叫びながら、突っ込むべきなのだ。

だが、長いこと凍りついていた心は、どうやら悲しみを表には出してはくれないらしい。つくづく自分の性格が嫌になる。

なんとも薄情なことだ。あいつらに申し訳ない。



…よし、今から謝りに行くとしよう。 

あいつらのところへ行こう。向こうで謝るとしよう。決してお前らが死んだのを悲しんでいないわけじゃないと。

それにあちらに行けば、両親にも会える。兄弟にも、親友にも。

彼女--しおりにも会えるはずだ。

爆撃の前日、お前にプレゼントを買ったんだよ。それをもっていくよ。

 胸のペンダントを握り締める。


-だから、もう少しだけ、待っていてくれ。俺にはやらなきゃいけないことがある。

俺は覚悟を決める。

敵を睨み付ける。無機質な黒色の機体。


…あぁ、きっとお前は最強さ。俺なんかがまともなやり方で勝てるわけねぇさ。

でもな、ただ殺されるだけ、なんて絶対にしねぇからな。


俺は速度を上げ、敵に接近する。待っていろ、二人とも。仇は、討つ。








「はぁ……」

私は、溜息をついた。

残る相手は一機。こいつは、さっきの馬鹿とは違い、突っ込んではこなかった。

だが、変わらないだろう。いつも通りじき終わる。私に敵うやつなど、いない。

合衆国の戦闘機のレベルは世界最強だ。そして私の機体は、合衆国でも随一にして唯一である。そして、それを操れるパイロットは一人だけ。つまり私だけ。


このミッションが終わったら、また暗い部屋で時間が過ぎるのを待つだけだ。

別に苦ではない。苦ではないが、気が乗るわけも無い。勝手に溜息が出た。

あぁ、つまらない。 最近感じる感情はこれだけ。  あぁ、つまらない。


-と、相手が動き出した。さっきの馬鹿よりは遅い。特攻用のブースターは起動していない。

となると、私を狙っているのだろう。全く、不毛なことを。


…私が落とされたら、どうなるのかな?


ふと、そんな考えが頭に浮かんだ。 何を馬鹿なことを。

自分が考えたことを、まるで他人事みたいにあしらい、鼻で笑う。

-ミサイル、発射準備。

これで終わり、か。相手を見る。



「……え?」


思わず、といった具合で彼女は言葉を発した。

いつもの彼女を見ている者から見れば、それは驚愕に値する。

彼女は、動揺していた。







俺は敵に向かって飛んでいく。

…ミサイルを撃っても駄目だ。機関銃も。おそらく他の武器も駄目だろう。

さっきの隼人に攻撃されたときのこいつは、あまりにも早く、的確だった。

まるで機械のようだった。それも、かなり精密だ。


武器は封じられた。ただ突っ込んでも駄目だ。ならば、どうすればいい?

…簡単だ。武器以外に飛ばせるものがあるなら、それをぶつければいい。

正直、無理かもしれない。だが、何かをしてやらねぇと気がすまない。


俺は特攻用のブースターの作動スイッチに手を添える。

そしてブースター離脱装置にも、手を添える。


……やってやるよ。

「止めれるもんなら、止めて見せろよおおおおおお!!!!!!!」

ブースター作動。続いてブースター離脱。

ブースターが爆音を上げる。

そして、特攻用に作られ、出力のみを追求して作られた、その巨大なブースターが独りで飛ぶ。

向かう先は、Unknown。

巨大な鉄の塊は飛ぶ。

味方を殺した敵を、叩き潰すために。






「な、なにあれ!」

彼女は声を荒げる。動揺する。

……彼女が目を覚ましてからの3年間で、それは、はじめてのことだった。


普段の彼女なら、それが射出された瞬間に潰せていただろう。

だが、彼女は油断した。これで終わり、と。敵は生きていて、まだ戦意を失っていないのに、彼女は油断した。あまつさえ、もしも死んだら、などと考えた。だから見逃した。遅きに失した。

……ただ、漠然と死を考え、それを一笑した者が、死を覚悟して、なお戦うことに執着している者になぜ勝てる?勝てる道理があるか?そんな道理は、絶対に通らない--!!


「い、いや!」

眼前に高速で迫る巨大な鉄の塊が見えた瞬間、少女は恐れた。

恐れ、「反射的に」身をひるがえした。

それは、ボールが目の前に飛んできた子供の行動と、同じ原理。

だが、遅すぎる。間に合わない。-いや、生きる、という点においてはある意味、速くて、間に合ったのかもしれない。

彼女の機体は翼をもがれた。翼だけで済んだ。

抉り取られたのは、左翼。根元から。

「ひっ!いやだ、やだ!!」

だが、彼女の意識は機体とともにある。だからそれは、左手をもがれたのと同じ。

彼女は、もはやただの少女になっていた。

目の前の死を恐れる、ただの少女に。


…だからこそだろう。

追撃を仕掛けるために接近して、近距離でミサイルを撃とうとしていた敵を見つけたのは。

人は恐怖を感じたとき、脅威の存在を敏感に感じる。それに対抗する術は知らないが。

だから彼女は、自分が唯一出来ることをした。

-弾薬準備。モード・全弾掃射(フルバースト)



死ぬのだけは

「嫌ああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


少女は叫ぶ。ありったけを撃つ。狙いなんて定めない。なにも見ずに、でたらめにぶっ放す。

それはただの本能。人間が生きるためだけにする行為。

だが、それが功を奏した。徹甲弾の一つが、敵の翼をミサイル管ごと吹っ飛ばした。


だが、当然翼を片方無くした状態でそんなに撃てば、宙にとどまっていることなど不可能だ。

そして、空を飛んでいる最中に翼を吹き飛ばされれば、飛び続けるなど不可能だ。


--そして二人は、墜落していった。


中二病全開で書きました。

いや、思ったよりもむずかしいんですね、これ。

その辺のアドバイスをぜひいただきたいです。

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