assault -強襲-
敵を見つけた。
基地からそんなに遠くではない、第二防衛ラインの少し外側の草原の入り口である。
この草原はこの地域一帯ではもっとも広い。身を隠せるような山は草原の入り口ぐらいにしかなく、基地を襲撃しようとするものは、否応なしにその身体を敵にさらけ出さなければならない。
こちら側にとって、絶好の狙撃ポイント。
この立地条件から、私の基地は第二防衛ライン以内への敵の侵入を未だ許したことは無い。
そんなことは、もちろん特攻のやつらも分かっているだろう。恐らく草原に入ったら特攻用のブースターを起動するはずだ。あれは少し厄介だ。ほとんど直進しかできないとはいえ、あれを使えば第二防衛ラインの砲台の迎撃はもしかしたら間に合わないかもしれない。私も、狙って撃ち落せる自信は無い。
というわけで、私はやつらがそれを起動する前に攻撃を仕掛ける。幸い、まだ見つかってはいないようだし。まぁ相手のレーダーの範囲からは全然距離はある。人間の目でも、絶対に見つからない距離だ。
私は隊長が言っていた新兵器の発射準備を整える。話の通りなら、これで一機はやれるはずだ。
翼の格納スペースから細長い、先端のとがった、棒状のものが出てくる。…大きな槍のようである。
敵のロック。どれにしようか?
…一番端っこでいいや。
私は端っこの機体を見つめる。ほぼ直線にいるから細かく狙わなくてもいけるだろう。
「いってらっしゃい」
そう言って、私は新兵器-「ロンギヌス」を敵に飛ばした。
解き放たれたロンギヌスの後部は凄まじいまでの爆発を起こし、その推進力はロンギヌス自体のスピードを上げる。
そして、かつて神を突き刺したとされるその槍は、特攻兵の少年の肉体ごと機体のエンジンを貫き、山へと落ちていった。
「まず、一機。」
コードネームUnknownは表情一つ変えず、そうつぶやいた。
「え?…」
何だこれは?どういうことだ?俺の左側--健二の機体が貫かれ、火を上げている。コックピットの強化ガラスは大きな穴が開けられている。中は確認できない。ガラス全面に血が付いていて中が何も見えない。
「健…二?」
そう呟いた瞬間、目の前が真っ赤になる。健二の機体は爆発したのだ。破片が俺の機体にいくつも当たる。灼熱の爆炎が視界を覆う。健二からの通信は騒がしい雑音しか入ってこない。
「な……え…?」
隼人も呆然としている。
その時、レーダに反応があった。
遥か前方、一直線。まだ、爆炎は俺の視界を隠し続ける。
熱い。たがそんな状況の中で、俺は冷や汗を掻いていた。まずい。
「…えか……」
隼人の機体は健二とは反対側だ。爆炎は届かない。だからきっと、隼人はレーダーの敵を目視したのだろう。だから呟いた。まずい。
「隼人っ!!」
「お前が…健二を…」
だめだ、今行けば、絶対に死ぬ。確証は何も無い。だが、確信はある。
「落ちつけっ!隼人!!」
隼人は何も聞いていない。俺の声は届かない。
「お前が…健二をおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
隼人が叫んだ瞬間、爆音が聞こえた。
何が起こった?何も見えない。
なぜこんなにも長い?爆炎が包むのは一瞬のはずだ。なのにその一瞬がとてつもなく長く感じる。まるで爆炎が凍り付いているような。
だが、呪縛は溶ける。爆炎が晴れる。視界が戻る。
そして俺が見たものは、特攻用のブースターに点火し、凄まじい勢いで、肉眼ではほとんど見えない位置にいる敵に猛進していく隼人の機体だった。
その姿をみた瞬間、なぜか絶望を感じた。ああ、なぜこうも嫌な予感しかしないんだ…!
「隼人おおお!!!やめろおおおお!!」
俺は隼人にそう言いながら、頭の片隅で考えていた。
俺は運が良かったのかもしれない。もしも爆炎が俺を包まなければ。もしも俺が隼人と同じように敵の姿を己の目で見たなら。俺は隼人と同じことを叫びながら突っ込んでいたかもしれない。
「絶対に!!!ぶっ殺してやるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
貫いた機体が爆発する。
あの武器、確か後で爆発するんだっけ?回収するんだっけ?
隊長が何か言っていた気がする。まぁ私には関係なかったはずだ。
隊長に通信でも入れようか。
-そう思った瞬間、爆発した機体の反対側の機体がいきなりスピードを上げた。
特攻用のブースターを点火したみたいだ。
ああ、めんどくさい。いっそ見逃して、防衛ラインに任せようかな。多分、なんとかするだろう。
と、その機体はこちらに向かってミサイルを撃ってきた。っていうかあの進行方向はどうみても逃げるつもりじゃない。私に向かってきている。なるほど、標的は私か。
とりあえずミサイルを機関銃で撃ち落す。
しかし、いまいち分からない。私を狙うとしてもなぜこんな馬鹿みたいな突っ込み方をしてくるのだろう。こんなの、撃ってくださいといっているようなものだ。
…馬鹿、なのだろうか?
まぁとりあえず照準を定める。
あ…この進路は下手したらぶつかるな。なるほど、それを狙っているのかもしれない。だとすれば特攻の名に恥じぬやり方だ。甘いけど。
相手が機関銃を乱射してくる。思っていたよりも距離が随分と近くなっている。
『体』を少しずらし、避けながら、機関銃のついている敵の左翼を狙う。
-ロック完了。徹甲弾、発射。
右翼から射出された徹甲弾は、猛烈な速度で突っ込んできた敵機体にぶち当たる。
左翼の、根元。うん、ばっちり。
徹甲弾は敵の左翼を根元から抉り取る。
元から、制御出来ていたのがおかしいくらいの速度で飛んでいた敵機体は一瞬でバランスを崩し、高速で回りながら地面へと落ちていく。
あれなら不時着なんて出来無いな。脱出もあの状況では無理だ。
彼女はそう思いながら、ミサイルのロックを合わせる。それは、落ちている最中の機体に向かって。
「万が一とかめんどくさいし…」
やるなら徹底的に。
-ロック完了。ミサイル三発、射出。
パシュッ
そんな音ともに、ミサイルは放たれた。ミサイルは落ちている最中の機体に追いつき、右翼、エンジン、ブースターにそれぞれ命中した。
直後、爆発。完璧なまでの破壊。
「あと、一機。」
下のほうで飛び散っている破片にはもはや一切目もくれず、彼女は、最後の一機を見た。
戦闘シーンとか好きなんですけど書きずらい…
今回は途中で視点を変えてみました。
もしかしたら読みにくかったかもしれません……
出来たらその辺も含めた感想をおねがいします><