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14/14

女神の巫女は狸をきめこむ

いつもより短いのは内容的にキリのよいところをみたので、すみません。いつもそんなに長くないのにさらに短くて………


楽しんでいただけたらうれしいです!





「…っぷはぁ!! んー、やっぱおいし〜っっ!」


 護衛の兄ちゃん達へ、昼間から酒かよって白目で見てごめんよ、と心で謝る。

 だって、昼間から酒飲んでんのここにもいたから。二人も。


「ティナ、アンタ本当にいい飲みっぷりだねぇ!」

「そういうリーザもね! やっぱり動いたあとは」

「「冷たい麦酒!!」」


 コンッ、と木製コップを打ち合わせて何度目かの乾杯をしてるのはフィロの母親・リーザと、ティナだった。




◇◇◇◇◇◇◇




『ん〜、じゃあお昼を一緒にどうですか?』


 ティナの言葉に呆気にとられたけど、そろそろ昼時で腹も減ってたからちょうど良かった。けど、まさか呑むとは。いや、酒好きっぽかったけども。

 リーザとフィロが泊まっている宿屋が料理も出していてなかなか美味しいというので四人でそこへ向かった。

 昼の料理は鶏肉の照り焼きと野菜のスープ。これにパンか揚げ芋ってのをつけてくれる。

 揚げ芋ってなんだ? って思ってたら。


「リアは揚げ芋を知らんのか!?」


 知らない方がおかしいとでも言うフィロになんかムッとした。そしたらリーザがフィロの頬をむにぃっと引っ張る。


「揚げ芋ってのはね、リアちゃん。すりつぶした芋を平たくして多めの油で焼いたものだよ」


 よく伸びるフィロの頬をむにむにしながら、笑顔で教えてくれるリーザに少し引きつつ揚げ芋には心惹かれる。美味そうだ。


「へぇ、じゃあわたしは揚げ芋にしようかな」


 ティナからリアはどうする? と聞かれたけどそんなん揚げ芋一択だ。

 注文して少し待つと出てきた四人分の料理と。


「果実水二つと、麦酒二つねー!」


 ドドカッと置かれたコップ四つ。果実水はあたしとフィロの前に。

 ティナは怪訝そうだが、リーザがニヤリとした。


「イケる口だろ?」


 これにティナもニヤリと応える。


「少々、ですよ」


 どちらからともなく軽くコップを合わせると、二人は麦酒を一気に飲み干した。


「ん〜! 生き返る〜!!」

「っかぁ〜! いい飲みっぷりだねぇ! 女将〜、麦酒もう二杯頼むよ!」


 まだ飲むのか!?

 唖然とするあたしの向かいでフィロはそんな母親たちに目も向けず肉にガッついている。あたしもそうする。

 出された料理は美味かった。控えめに言っても美味かった。

 鶏肉は甘辛で香ばしいタレとよく絡んでいて、スープはしっかりした味付けなのにあっさりしている。

 それからなんといっても初めて食べる揚げ芋。ホクホクとして美味かった。多めの油で焼くって聞いたからくどくないか不安だったけど、塩気と油を程よく吸った芋の甘みがいい塩梅だ。


「揚げ芋美味いだろ?」

「ああ。すっげー美味い」


 あたしの美味い、にフィロは満面の笑みだ。

 ってもお前が作ったんじゃねーだろうに、なんでそんな自慢げなんだよ。


「その芋な、オレが今朝掘ったんだ!」


 マジか。


「この宿屋には畑があってね、この子の手伝いの一つが頼まれた野菜の収穫なんだよ」


 リーザの説明で腑に落ちた。

 それであの笑みか。


「楽しそうに収穫してくれてるって女将も言ってた。だからそれをリアちゃんが目の前ですっげー美味いなんて言って食べてくれたから相当嬉しかったんだろうねぇ」


 リーザに頭を撫でられてるフィロ。さっきからずっと笑ってる。


「なぁ、フィロっていくつなんだ?」

「年齢かい? もうすぐ十になるよ」


 とおっ……四つも下!?


「じゃあリアとそんなに変わらないね」

「そうなのかい? リアちゃんは落ち着いててしっかりしてんねぇ」


 そりゃ本来の年齢は十四だから、十のちびっ子と比べたら落ち着いてるように見えるだろうよ。


 料理を堪能してから、リーザとティナはフィロがしたことと、その顛末を話し合った。

 大の大人に向かっていくその勇気は不要ではないけど、自分の身を守れるようになってから発揮すべきとリーザはフィロを諭していた。

 フィロは元気よく「わかった!」と言ったが、こいつホントに分かってのかあたしは疑問だ。


「二人にはホント悪いことをしたよ。特にティナには話も聞かずに拳を向けたし」

「まぁ子どもが攫われると思ったら仕方ないと思うよ」

「うちの息子、前も『お菓子食べるかい?』で攫われかけたことがあってね」


 マジか。


「フィロお前、お菓子に釣られたのか?」


 向かいのフィロに小さな声できくと、芝居がかったような仕草でフィロはおでこを押さえて呻く。


「ああ。あれはオレのくろれきしだ」


 くろれきしって、なんだよ。


「知らない大人についていくなって言われてただろ」


 リーザのことだ、母親としてフィロに言ってないわけないと思った。あたしですら口酸っぱく言われたんだ。


「知らない大人じゃなかったからな!」

「そうなんだよ。その女、行商仲間だったんだ」


 仲間?


「織物や糸や雑貨を扱ってた女なんだけど、裏じゃ人を攫って売り買いするヤツらの下っ端だったんだ」


 人が人を売り買いする?


「行商人が人買いの仲間なんて最低だね」

「本当だよ。よく気のつく人でね、アタシも信頼してたのに、すっかり騙されちまった」


 信頼していたはずの仲間に裏切られる、それはあたしにはわからない気持ちだ。

 だってあたしは神殿の誰も本当に信じてはいなかったから。

 神殿長も上級巫女たちもあたしを孤児だったってだけで見下していたし、同じ下級巫女はたちそのうちに上級巫女の言いなりになるかもしれないと思っていたから。

 巫女長は、もしかすると信じられる人だったかもしれないけど、いまさらだ。


 裏切られるのがいやなら、信じなければいい。


「そういやぁ、昨日ここに連れてこられた人攫いの三人を捕まえたのアンタかい?」


 リーザがティナを見ながら言った。なんだそれ。そんな話あたしは知らねーぞ?


「積み荷を盗っていくケチな盗っ人が捕まったって聞いたんだよ。相当手を焼いてたけど、そいつらとうとう人攫いに手ぇ出し」

「リーザ」


 遮ったティナの声が低い。


「わたしが捕まえたんじゃない。運よくわたしを含むみんなで捕まえることができた、それだけ」

「みんなで?」

「今回護衛についた六人みんなで、だよ」


 静かに互いを見据えてるティナとリーザ。リーザの隣でぽかーんとティナを見つめるフィロ。

 うっすら寒くて重苦しいこの空気感にあたしはまだ少し温かい野菜スープをぐいっと飲み干そうとして、思い切り噎せた。




◇◇◇◇◇◇◇




「なんだ、あの子は何も知らないのかい」

「教えてない」


 飲みたりなさそうなティナとリーザに明日に残るほど飲まないことを約束させてあたしは夢の中に行きかけているフィロを教えられたニ階にある部屋へ連れてきた。

 明日からまた旅が始まるから、そこで酒盛りはさすができないだろう。

 フィロが眠る寝台に腰掛けて、遅くなった夕のお勤めを終えてティナを待っている間にあたしも眠ってしまったらしい。近くでリーザとティナの声が聞こえた。気が済んで戻ってきたのか。

 起きようと思ったけど、寝落ちした時の体勢が悪かったからか体が強張って動かない。目が冴えて、そのうちに聞こえてきた二人の話をあたしはそのまま聞くしかなかった。


「薬で眠らされて連れ去られたなんて、わざわざ知らせないよ。あの子に落ち度もないことだし」


 あたし、攫われたのか。


 違和感はあった。

 野宿最後の朝にあたしだけ寝過ごしたこと。

 ティナや護衛仲間たちや他の客たちからなんやかんや気遣われていたこと。


「アタシはちゃんと教えたほうがいいと思うよ。あのナリだ、これからだって」

「ないよ。わたしがさせない」


 夜が静かに降りてくる中、あたしは息を潜めていた。寝息を立てるフィロの体温を近くに感じながら、あたしはティナたちの話にずっと耳を澄ませていた。


 この話、あたしは聞いていないことにしよう。

 全てが終わるまで。ティナと離れる、その日まで。





読んでいただきありがとうございました♪

話タイトルの候補としては他に「女神の巫女は子守熊になる」がありました。でもこの世界にコアラをいさせていいのか悩んでやめました。

来週と今回は再来週もお休みになります。すみません。

次回は3/14予定です。

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