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前編~少女はまたも命を落とす~

 少女は何度も『お約束の命に係わる展開』に遭遇しては、考えるより先にその状況に首を突っ込み死に遭遇していた。しかし彼女は最初の死の時に出会った死神によって、いつも無傷で現世に送り返されるのだった。

 Youtubeでお友達の声優系Vtuber『桂木アヤタ』さんに死神さんのボイスドラマ投稿してもらってます。

 私がその衝撃を受けたとき、まさしく、という感情が頭によぎった。

 道路に飛び出した子供を助けるために追いかけ背中を押し、今まさにトラックに轢かれそうになっていたのを助けたまでは良かったが、駆け出す時の勢いが足りず、自分の身体はトラックの角にぶつかっていたのだと思う。世界をスローモーションに感じながらも一瞬で意識を失ったので定かではないけれど。

 目が覚めた今、自分が精神世界と呼べそうな真っ暗で、けれど自らの姿をはっきり認識できる場所にいることから息絶えてしまったのだと確信している。

 というのも。私がこの場に来るのは1度や2度ではない。


「あーあ、まーた死んじゃった。もー、君ってばすーぐに突っ込んでいっちゃうんだから」


 呆然とする私の前に、闇の中からすぅっと現れた男が呆れている様子で、しかしそれにしてはやけに楽しそうにクスクスと笑う。


「これで何回目だっけ?」

「覚えてません」

「あー。まあそうだよね。そんなの数えてたらキミ、もう壊れてるか」


 彼は死神のアヤトさん。つんつんとしたショートカットの銀髪に、獣を思わせる鋭くもどこか優しい爽やかな目つき。黒いシャツにジーンズという現代的な格好は私のセンスに合わせての格好らしい。細身だけれど筋肉の線がシャツの上から感じられる程度に鍛えられた健康的な体も私の好みに合わせてと言っていた。

 そんなこの人外は、私の恋人である。


「お兄さんに会いたいのはわかるけどさぁ。もうちょっと命大事にしてもらわないと嫌いになっちゃうよぉ?」

「そんなにこにこで言われましても……」


 アヤトさんに出会ったのは私が初めて死んだ日。まあ死神なので当たり前かもしれないけれど、2年前のことになる。

 往来で痴話げんかするカップルを宥めようとして近づき、丁度どちらかが取り出して振るったナイフにて私の一度目の生は終わった。


「本来はまだ死ぬはずのない魂なんだよなぁ」

「え、そうなんですか!? やだ、今日発売の限定ケーキ食べたかったのに!!!」


 と、私の魂を回収しに来たアヤトさんに、思わず叫んでしまったことで、私は死を免れることになったのだ。


「お前、その状態で意識あるの?」

「え、ええ」

「じゃあ、俺が見えてる?」

「は、はい」

「どんなふうに」

「えぇー……?」


 質問攻めにされ、全部に正直に答えるとアヤトさんは嬉しそうに頷いて私の身体を修復し、そして何故か黒一色のローブ姿から今の姿になってついてきてケーキをごちそうしてくれた。

 そうしてもらう理由がないと言えば、好きな女の子には俺優しくしたいし、甘やかしたいんだよねと笑う。

 相手は選び放題であろうヴィジュを持ちながらなぜ私なのかという疑問はあったが、あまりの笑顔と甘いセリフの破壊力によって、それを言葉にしてぶつけるよりも先に首を縦に振ってしまっていた。

 以後、私は何度かトラブルに首を突っ込んで死んではこの暗黒の部屋でアヤトさんに身体を再生されるのだ。


「嫌いになっちゃうのは、やだな」


 そんな風に出会った時のことを考えながら思ったことをぼそりと口にすると、アヤトさんは聞き逃さずににこにこ顔をにやにや顔になるまで口角を上げる。ちょっと憎たらしいけれど、救っていただいてる手前こちらはそれに文句を言わずむくれることしか出来ない。


「嘘嘘、うーそ。まあそういう果敢で無謀でおろ……かわいいところも好きだしね」


 今もしかして愚かって言われかけたかな。いや、実際愚かか。


「とはいえ、君の飛び出した内臓や抉れた皮膚を修復する僕の身にもなってね?」

「うっ……。はい、ごめんなさい」


 トラックに轢かれたのだ、今回の死に方もなかなかに悲惨だったらしい。いやなものみせちゃったなあと素直に反省し俯くと、アヤトさんが私の肩を掴み甘く囁いた。


「さ、身体見せて。恥ずかしがってないで……」

「で、でも……」

「いいから、見せろよ」


 こちらも恒例行事である。私の寝てる間に済ませておいてくれたらいいのに、アヤトさんはいつも戒めだと言って意識を取り戻した後で体に触れ、傷口が残っていないかをチェックして来る。

 意地悪でそう言ってるだけで、多分見えないところに痛みが残っていないかを私の意識があるときに見て触れて確かめてくれているんだろうけど、それを確認するのも恥ずかしい。


「ん。よし。傷は残ってないね」

「だね、本当にありがとう」

「これ神経使うんだから。もし復活させた君に傷が残ってたらと思うとお兄さん気が気じゃないよ」


 言葉は重いが、飄々というアヤトさんにきゅんとしてしまう私。時間があるならこのままアヤトさんに抱き着いてもっと確認してくださいとイチャイチャモードに入りたいところではあるのだけれど残念ながらこうして死んで生き返った時、アヤトさんのほうから激しいスキンシップをしないときは彼が勤務中で、就業間近でもないことを表している。


「っと、もう少し一緒にいたかったんだけど、そろそろ時間だね。他の死神に見つかる前にさっさと現世に戻りな」


 私を復活させているのは私を好きだというアヤトさんのエゴ。だから私は復活したらすぐに現世に戻らないといけない。生死の境をさまよっている状態であると、まだ他の死神が思っているうちに。

 本当なら私は予定外の死ということで流行の異世界転生をすることになるらしい。けれどそうすると私の記憶の一部は洗われて、消えてしまうそうだ。

 アヤトさんが教えてくれた時その中には私たちの出会いの記憶もあるのだと悟った。私が何もかも覚えていられるならきっと、アヤトさんが私を態々復活させる理由がない。

 私もアヤトさんが大好きだから、忘れるのは嫌だ。


「そうですね。もう少し一緒が良かったですけど……」

「次は君が死ぬ前にちゃんと会いに行くから、いい子で待ってるんだぞ。いつまでもお兄さんが見逃してあげられるわけじゃないんだから、頼むよ?」

「いや、別に、会いたいからわざと死んでるわけでは……」

「わかってるよ、もしそうなら君の死は確定されてごまかしようがないからね」


 望んだり、逃れられない死は全ての死神が共有する台帳に書き込まれ、集団で魂の回収に来ることになるという。初めての時は偶然非番のアヤトさんが通りかかったから助けられて、今はアヤトさんが私を見守ってくれてるから他の死神が気付く前に死を無かったことにできているだけ。


「私、まだまだ食べたいものや行きたい場所がありますから」

「そうだったな」


 偶然流行の転生ものみたいな死の現場に居合わせているけれど、わざと死ぬのは死んでもご免だ。


「今日の俺もかっこいい?」

「はい。すごくかっこいいと思いますよ。髪切ったんですね」


 私の長生きする意思が変わらないのを確認し安心したアヤトさんは、いつものように自分の容姿について問いかけてくる。それに応えれば先ほどまでの胡散臭さが消えたピュア度100パーセントの笑顔に胸を鷲掴みにされた。


「だろー! 明後日には会いに行けるから、おしゃれしてまっててくれよな」

「はい。楽しみにしてます。ちゃんと変なことに首ツッコむのも控えますので」

「いい子だ。じゃ、いつものキスは、現世で会える時までお預けな。いってらっしゃい」


 こうして死神に愛された私は、今日も異世界転生を回避する。

よろしければ感想、スタンプ、いいねなど下さい! 欲しいです!!!!

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Xから来ました! 情景がとっても浮かんできて楽しめました! 今後も頑張ってください!
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