7月の診察。
今回は、7月の精神科受診について綴ろうと思う。
今回の受診は以前受けた知能検査の結果を聞く日だったので、元々は和が行く予定だった。しかし桜良たちの存在が発覚し、様々な事実が明らかになる中で和はキャパオーバーとなり、失声の症状が出た。しかも今回は数日症状が続いた為、受診は俺が代わりに行く事になった。そして検査結果の説明等の受診時の様子はスマホで録音させてもらい、和に共有する事にした。
まずは検査結果から。和が今回受けた検査は、WAIS-Ⅳという知能検査だ。様々な問題を通して言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度と呼ばれる下位項目の能力を数値化し、そこから全般的IQを算出する検査だ。和のIQは76。これは『低い~平均の下』の水準で、境界知能と呼ばれる数値だ。主治医によると医学的には、先述した4つの下位項目の数値にばらつきがなく、その水準が低い場合に知的障害などの診断になるという。
しかし和の場合、【言語理解:110 知覚推理:69 ワーキングメモリー:88 処理速度:50】というように項目間の差が激しい。言語理解は平均~平均の上なのに対し、処理速度は50と非常に低い。下位項目の差が最大60ある。こういったばらつきは、知的障害ではなく発達障害特性の現れとして受け止めるべきだという。また和の場合は脳性麻痺の影響も大きいのではないかと俺は考えている。脳性麻痺は運動機能の他にも視覚認知障害が現れる事がある。その視覚認知障害や運動機能障害から処理速度は特に低下しやすい傾向にあるらしい。
以前も触れたと思うが、和は16歳の時にWAIS-Ⅲを受けている。その時の数値は、【全般的IQ:92 言語理解:111 知覚推理:75 ワーキングメモリー:94 処理速度:52】だった。数値を比べると低下傾向に見えるが、下位項目の数値をグラフ化すると波形は殆ど変わらない。この検査は能力のバランスを見る事に長けているという特徴から、波形が非常に重要視されるらしい。波形に変化がないという事は和の特性に変化がないとも言えるのだ。その為、数値の低下についてはあまり気にしなくていいらしい。
低下の原因としては、まずWAIS-ⅢとⅣで算出方法が変わった事。そしてこの検査自体が同年齢の平均と比較して数値を算出する事から、16歳の時点では同年齢との差が目立ちにくかったが、年齢が上がった事で徐々に周囲との差が出てきた事が挙げられるだろう。
ただ、フィードバック用紙に記載された特性はまさに和のそれで本人も納得できる結果だったようだ。むしろ、今まで理解されにくかった周囲との差が数値にも表れた事で安心した部分もあるかもしれない。
検査結果を聞いた後は、普段通りの診察だった。まず伝えたのは桜良たちの存在が発覚した事。そして桜良が一時的に統合していた事。桜良の統合時期は和の検査時期と被っていたので検査結果に影響がないのか尋ねてみた。すると、「全くないとは言い切れないが、大きく変わる訳でもないのではないか。」といった旨の返答だった。
3人の詳細について聞かれる事はなく、名前さえ聞かれなかった。(桜良についてはこちらから言及している。)仲良くできているかという確認があった程度だ。ただこちらとしては、内界が2つに分かれている現状をどうにかしたいと考えていたのでその点について相談した。結論として、内界を1つにする事は不可能とは限らないらしい。しかし目指すべきは、内界を1つにする事ではなく、コミュニケーションを取れるようにする事だそうだ。確かに内界が別でも互いに声が届けばQOLは格段に向上する。まずはそこを目標にし、メモや動画などを通してコミュニケーションを取るうちに内的会話も可能になる可能性があるとの事だった。そしてやはり、安心安全な場所に身を置く事が何よりも重要だそうだ。
今後の方針としてはメモやスマホ、動画などを活用し、向こうのメンバーとも積極的にコミュニケーションを取る事にした。長い内容はスマホで動画を撮影し、交代時は時間をスマホに記録する。そして連絡事項を書けるようにホワイトボードも導入した。ホワイトボードは伝言板としても、やるべき事のメモとしても活用出来るので重宝している。
こうした毎日の積み重ねがいつか実を結び、3人と会える日が来るのをとても楽しみにしている。