さくらとのあについて。
今回は、交代人格のさくらとのあについて綴ろうと思う。
まず、さくらは俺たち交代人格の中で一番最初に生まれた人格だ。和が2歳頃からいたと思われ、和のニコイチ的存在の子供人格だ。つい最近まで3歳と自称していたが、記憶をたどると和が3歳の誕生日を迎える前から存在した記憶があり内界での姿も鑑みた結果、さくらの年齢は2歳に変更された。本人も2歳で納得しているようだ。
さくらは、和とニコイチと言えるほど和に似た人格だ。性格は少し違う面もあるが、内界での姿は幼い頃の和に瓜二つなのだ。和の感情を一方的に受け取る事も出来る。和が小学3年生の春までは内界という概念はなく、『和の隣』に常に居たらしい。名前も戸籍上の名前が“2人の名前”だったと話していて一部記憶共有も可能だったらしい。
そんなさくらと切っても切り離せない関係なのが、のあだ。のあは、和が高校2年生の時に生まれた人格だ。
和が小学3年生の春、とある出来事をきっかけにさくらが名前を持ち内界で生活するようになってから、さくらはずっとひとりだった。正確には途中で彩が生まれているのだが、彩が活動する時間はさくらは自動的に眠ってしまうシステムがあった為に2人に接点は殆どなかったのだ。
そんな中、和が高校2年の時に和の恩師が亡くなった。それをきっかけとし、のあが誕生したのだ。
突如として現れた人格にさくらは「のあ~!!」と言いながら駆け寄ったそうだ。彼の名前を付けたのはさくらだった。いや、付けたのではなく知っていたと言った方が正しいだろう。
さくらに名前を呼ばれた時は戸惑いもあったようだが、のあはその名前を受け入れたらしい。そうしてさくらはのあにそれはそれは懐き、のあもさくらの面倒を見るようになったという。そして何故だか内界の管理権限を持っていたのあが内界の管理者となった。
ここまでは、簡単には今までも触れてきていると思う。だが俺たちは疑問だった。何故さくらは初対面ののあにそこまで懐いたのか、しかもすぐに。そしてのあ自身も何よりさくらを大切に思っている。基本人格である和の事以上に。この2人の強い結びつきはどこから来るのか。その問いにある説を提唱したのは奏だった。それは、『のあは和から生まれたのではなく、さくらから生まれた人格なのではないか』というものだ。確かに、そう考えればすべての辻褄が合うのだ。恩師の死は確かに和にも大きなショックを与えた。しかし、身近な人が亡くなるという経験はこれが初めてではないのだ。なのにこの時だけ人格が生まれたのは何故か、ずっと不思議に思っていた。
そこで、さくらに訊いてみる事にした。もしさくらからの派生であれば、自覚がある可能性が高い。現に、俺には彩が自分からの派生だという感覚がある。これは余談だが、実は今の彩は以前の(和が小6の時に生まれた)彩ではなく、一度俺(と奏)に統合したが俺が抱えきれなかった記憶を持つ人格なので、俺から派生した人格なのだ。
そしてさくらとのあに当時の事を訊いてみた。
さくらによると、恩師が亡くなった悲しみと寂しさといった和の感情が一気にさくらに流れてきたそうだ。それによりさくらは自分が和と離れ離れになった事への寂しさや悲しさ、孤独感がフラッシュバックしてしまったらしい。その時にのあが生まれていたそうだ。
そしてのあはというと、「気が付くと内界に居て、小さな女の子がパニックを起こしたかのように泣いていた。そして自分の存在に気が付くと、泣きながら『のあ~!!』と言って駆け寄ってきた。そして自分はこの子を守らなければならないと感じた。」と言っていた。
さくらにははっきりとした自覚はないが、状況的にものあがさくらから生まれたのはほぼ間違いないだろう。そうなれば2人の強い結びつきにも納得がいく。そしてさくらはよく「なごみちゃんにとってのひろきは、さくらにとってののあ」と言っていた。さくらを無条件で愛し守る存在がのあで、和を無条件で愛し守る存在が俺という意味だろう。
これらの事を踏まえ、『のあはさくらから派生した人格である』と俺たちは結論付けたのだった。
最後に興味深い話をひとつ。
さくらが2歳だとわかった今、のあとさくらの年齢差は10歳という事になる。そして和から俺が生まれた時、和は6歳で俺が16歳だった。そう、当時の和と俺の年齢差もまた10歳なのだ。果たしてこれは偶然だろうか。
自分が壊れてしまいそうな時、守ってくれる存在を求めた2人。その時2人が無意識に生み出した存在は、自分より10歳年上の男性人格だった。
和とさくら。この2人は、どこまで行ってもそっくりなのだ。




