別世界の人格たち。
今回は、別世界に住む人格たちについて綴ろうと思う。
俺以外の交代人格がいる可能性が出た日、俺と母の声掛けにより、俺たちとは別世界に住む人格、「(漢字の)和」が表に出てきた。彼女が出ている間の記憶は基本人格の和は勿論、俺にもない。なのでここからは母から聞いた話になる。
別人格が出てきた事を理解した母は、動画を撮影しながら彼女に様々な事を訊いてくれたようだ。そこでわかったのは、彼女は基本人格の和が高校3年生の頃に生まれた人格で、気づくと表に出ていたという事。そこで当然のように「和」と呼ばれていた事から『自分は和だ』と信じて疑わず、高校時代は和と半々、卒業以降は当たり前に主人格(=一番長く表に出る人格)として生活していたそうだ。
そして名前が和のままだと流石に困るので、別の名前を付ける事になり、母に名付けて欲しいという本人の希望で「奏」という名前を貰ったそうだ。
その奏が住む内界には、「のあ」という12歳の男の子がいるとわかった。のあは、向こうの内界の管理者的立場の人格らしい。彼は様々な事を記録しており、以前は奏が表に出ている間の記憶を和に流す事が出来たらしい。和が生活に困らないよう、彼が奏が表に出ている間の必要な記憶を和に流していたそうだ。ただそれは完璧ではなく、必要な部分だけを送っていたとのことだった。記憶を送るというのがどういったメカニズムなのかはわからない。
前作で触れたノートに記載のあった「桜良」という人格は、既に和に自然統合している事もわかった。統合時期は俺が表に出始めた頃らしく、俺が出るようになって和の幼さが増したのは桜良の影響だとわかった。桜良は自称8歳だが、見た目や言動は3歳程度との事だった。
その他、奏は前回綴ったような向こうの内界の情報なども話してくれていた。
奏は約3年の間、主人格として生活していたらしい。そこで疑問に思ったのは、基本人格の和について奏はどう認識していたのか。これについては後日、奏からの別動画で聞いた話だが、和については『自分も和で向こうも和。向こうは自分とは別の側面を持った和という存在』と認識していた為、自分も和なのだから表に出るのは当然の事と考えていたらしい。そして、「全人類が複数の自分や別の人格を持っていると思っていたし、基本人格とか主人格とか正直深く考えていなかった。」と言っていた。
しかしたまたま動画サイトでDIDを知り、自分が基本人格でない事に気が付いたそうだ。その旨はのあや桜良も伝えようとはしていたらしいが、お互い言葉足らずで上手く伝わっていなかったらしい。奏が基本人格ではないと気付いてからは、なるべく表に出ないようにしたようだ。
また、桜良は和が小学生の頃に俺が表に出ているのを目撃していたようで、奏・のあ・桜良は俺の存在を認識していたらしい。その為、自分たちの内界と同じ物が俺と和の所にもあると3人は思い込んでいたとも言っていた。実際には俺たちの所に内界はなかったし、和も俺も向こうが表で活動する間は意識がなく自分の意思で表に出る事は出来ない。のあと桜良がどこまで理解していたかの詳細まではわからないが、少なくとも奏は俺たちも自分たちと同じように自由に表に出られると考えていたようだ。なので奏は『向こう(基本人格)の和は出る気がない』と判断した。その結果、『向こうが出ないなら自分が出よう』と考え自分から椅子を離れる事はなかったそうだ。それでも、桜良は奏は和ではない事と誰も椅子に座らなければ和が表に出られると理解していたようで、時々奏を椅子から降ろして強制的に和に交代させていたそうだ。前述したようにのあが和に記憶共有をしていた為に、和に大きな記憶の欠落はない。ただ、当時の記憶は薄ぼんやりとして当事者意識は薄いようだ。もっと言えば、記憶はあるが自分じゃないみたいだと感じるそうだ。
のあはあまり表に出なかったようだが、奏が主人格をしながら時々桜良も出ていたそうだ。俺が表に出るようになる前から急に和が幼くなる瞬間があると母が言っていた。どうやらそれは桜良だったようだ。のあの方針で向こうは人格の存在を隠そうとしていた為、桜良も和の真似をしていたらしいがたまにボロが出てしまっていたらしい。俺が学生時代に見かけた幼い和も桜良だったらしい。
次回は、そんな桜良について綴っていきたいと思う。