B型事業所のその後のその後。
今回も前回に引き続き、B型事業所での一件の後日談を綴っていきたい。
例の一件から半月が過ぎた。和も徐々に通所を再開し、3Dの作業をしている。例の指導員さんも和を気にかけてくれ、わからない所がないか確認に来たりしてくれている。ただ、和の障害についての理解はあまり深まってないように思えた。特に3Dの時に引っかかるのは視覚認知障害や学習障害の面で、和の場合は特に空間認知が苦手なので、奥行を理解したりサイズ感を理解するのが難しい。なので参考画像でサイズ感の多少異なる複数の物体があっても、和の視界には同じように映ってしまう事がある。内界に居る俺たちも和が出ている間は和の視界しか見られないので、教えてやる事が出来ない。その事が指導員には伝わっていないのか、ある日和が添削を頼むと「よく観察をするように。」「少し雑」などの言葉を掛けられた。こういった言葉は今までにも何度か掛けられていて、和としては精一杯やっているのだがそれが伝わっていないように俺には思えてならなかった。
そこで翌日、俺が通所し指導員さんが居れば面談を申し込む事にした。今回の面談は、和の努力をしっかり見てくれているのか、そして障害についてどこまで理解してもらえているのかを確認する為のもので事を荒立てるつもりは全くない。ただ少し話せたらと思っての事だった。
通所してみると例の指導員さんが出勤していた。そこで面談のお願いをした。この日も午前の通所だったので、朝礼後に面談をしてもらえた。
まず、和が3Dを始めて半年近く経つが指導員さんの目からみて和の作業態度や様子はどうか訊いてみた。指導員さんのいる日はのあが通所する事も多く、がっつり和を見られている訳ではないという前提で、「体調については交代や頓服の服用頻度から見ても不安定気味であるという印象。作業については、最初に聞いていた自分で決めることの難しさなどは、思っていたより少ない。ただ夏季休暇の前に和に話したように指導員が居ないと作業が出来ないような状況を一番恐れているので、分らない所をすぐに訊くのではなく、少しずつ自分で調べるという工程を挟んでほしい。でも、近頃は自分で調べる様子が見受けられる。」という評価だった。そのまま話はここ最近の制作物の事になり、やはり細かな所に気付けていないという印象があるようだった。なのでそこで俺から視覚認知障害について説明をし、参考画像と和が作ったモデルは同じように見えてしまっているという事を伝えた。空間の密度や立体の凹凸などの形の認識が難しく、この症状の度合いは人格ごとに異なる事も伝えた。この症状については以前他の指導員さんには伝えているのだが3Dの指導員さんは知らなかったようで、俺の説明を熱心に聞いてくれた。そして自分で調べるという点についても以前からやってはいるが、学習障害の影響で文字の読み書きに困難があり特にカタカナは読むのが苦手なのでカタカナ用語の多い解説文は理解が難しい事、動画においても全く同じ物を作る動画でないと応用は難しい事などを伝えた。今までの経験談も交えながら説明をすると理解を示してくれ、それに対する対応もこちらに確認を取りながら考えてくれた。これらの症状とその対応策については、他の指導員さんにも共有しておいてくれるそうだ。
他にも指導員さんが忙しく長時間席を外したりする際に和が質問出来ず止まってしまうという問題に関しても、何か事業所側で出来る事はないかという風に言ってくれた。そこで可能であれば複数課題を用意してもらい、手が止まった時は他の作業に取り組むように促してもらえるとありがたいという旨を伝えた。それでもダメな時は俺に交代し、俺が自分の作業をするようにしようという話で落ち着いた。
また指導員さんはDIDの症状をとても気にかけてくれていて、エッセイではまた後日綴ろうと思うが先日事業所でさくらに強制交代を起こした事があり、そのトリガーについても訊かれた。この日は元々調子が悪く、交代の予兆がずっとあった事やさくらが出やすい状況などを伝えた。話の流れで夏季休暇前の話題になり、例の一件についても少し話すとサビ管(サービス管理責任者)からは特に何も聞いていないとの事で、改めて和がフラッシュバックを起こしてしまった事や暫く通所出来なかった事なども伝えた。
面談は1時間以上に及んだが、終始こちらの話にしっかりと耳を傾けてくれた。言動についても気を付けてもらえるそうだ。今回の面談でわかった事は、この指導員さんは障害に対する知識が少ないだけでしっかり伝えれば理解はしてくれる。対応策もしっかり考え支援をしようと考えてくれているという事だった。この面談の内容や対応策については、サビ管やほかの指導員にも共有をしてくれるそうだ。
今回の面談の内容を和に報告した所、理解を示してくれた事にとても安心していた。翌日には指導員の方から面談の内容を和にも共有し、今後の対応方針について説明をした上で指導に当たってくれた事も信頼の回復に大きく貢献した。一時はどうなる事かと心配した指導員との関係も再構築出来そうだ。
この件については、ここで一段落となる。残念な事に一難去ってまた一難というべきか、事業所ではまたプチ事件が発生しているのだが、それについては次回以降に書いていきたいと思う。