さくらの3日間。~前編~
今回から2回にわけて、さくらが過ごした3日間の様子をついて綴ろうと思う。
ある日の事、和からさくらに強制交代し、そのまま交代ができなくなったらしい。その日はいつも通りB型事業所に通所していて、仕事(作業)の最中だった。和は作業について確認がありチャットツールでスタッフさんを呼んだ直後、さくらに交代してしまったようだ。時間は11時頃だったと思う。どうやら、また椅子が故障したらしい。終始他人事のような表現になってしまうのは、さくらに交代した時点で俺と和の意識は途切れるので俺たちはその出来事を後になって母から聞いたからだ。
突然表に出てしまったさくらではあるが、こういった事態に備えて事業所で強制交代が起きた時の対応は決めておいていた。まずは内界に戻れるか試してみる。戻れるようであれば、そのまま戻る。戻れなかった場合は、誰かスタッフを呼び、さくらに交代してしまった事と母に迎えに来てもらうので電話をしたい事を伝える。そして電話の仕方も教えてあるので、とりあえず母に連絡をして事業所は早退させてもらう。強制交代が起こる可能性やさくらが出た時の対応については、事業所側にも伝えてあった。
そしてさくらは事前に決めていた事をしっかり実行出来たようだ。交代が出来ないとわかったさくらは、和からのチャットでやってきたスタッフさんに『交代してしまったので母に電話をしたい』という旨を伝えられたらしい。そして母に電話をし、母が迎えに行ったそうだ。対応してくれたスタッフさんはいつも和がお世話になっている指導員の方で、さくらと話をした上で、終業時の作業をさくらに教えてやらせてくれたようだ。母は事業所近辺の商業施設で買い物をしていたらしいので、比較的すぐに迎えに行けたらしい。
この日は交代して以降、中のメンバーとの会話ができなかったらしく、のあや奏がさくらのお絵かき用のおもちゃに指示を書いてくれたようだ。こういう時、ひらがなだけでも読めたのはよかったと思う。
そのまま帰宅し、先日出かけた際にさくらが購入したくまのキャラクターのぬいぐるみで母と遊んで過ごしたらしい。ぬいぐるみはこの数日前に夜買い物に行った際に買ったものなのだが、さくらはとても気に入っているので買っておいてよかったと思う。
さくらはまだ幼い事もあって、夕方の昼寝は欠かさない。内界では2時間程度寝るが、表では薬の効果もあってか30分程だけだったらしい。そして内界に居る時と同じく、21時には床に就いたようだ。
さくらは1日の終わりに動画を撮って残しておいてくれていた。結局、この日は内界とコンタクトは取れずに終わったらしい。翌日も交代が出来ない可能性も十分考えられたので、さくらが楽しめるように母と外出計画を立てたようだった。交代できなければさくらが、交代出来れば出先で交代しながらショッピングセンターを周る事に決めたそうだ。
こうして、さくらの1日は終わった。3歳という年齢ではあるが、さくらはとても賢い子なので聞き訳もいい。尚且つ、幼少期に表で過ごしていた経験から母の支援は必要だが、生活も問題なく送る事が出来るのはありがたい。
次回は、さくらの3日間の後編として和に戻るまでの出来事を綴ろうと思う。