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第3走 まさかの寮母さん

城西拓翼大学・1年生の斧田謙信より、

箱根駅伝に出場するために、

指導してほしいとのメールを受け取った

日本陸上界きっての名将・岡林裕正。


斧田の行動力や熱意を受け止めつつも、

大学側から正式な依頼と、

箱根駅伝で勝つための環境整備を

一年以内に整えることなどを要求!


果たして、斧田は、

この難題にどのように立ち向かうのか!?


後に、

城西拓翼大学駅伝部・初代キャプテンとなる

斧田謙信の箱根駅伝はここから始まる!

「ああー…。やっぱ、そうだよなあ。

そう簡単に引き受けてくれないか…。」


城西拓翼大学の学生寮、

斧田の自室にて。


唯一の男子長距離メンバーである

斧田謙信は、名将と名高い岡林からの

返信メールを読み終えると、

両手で頭を抱えて下を向いた。


(だけど…。


ここまできて諦めたくないな。

岡林さんもこんなに丁寧な返事を

くれた訳なんだし。


とりあえず、大学のお偉いさんに

話を通さないと…。


ウチは私立大学だし、

となると、理事長さんとか

学長さんとかになるのかな…


って、


そもそもどうすりゃ

そんな偉い人と会えるんだよ!)


「あー、もうッ」と叫び、

顔を上げると、


利き手である左手で

頭を乱暴に掻きむしる。


トントンッ…


自室にノックの音がなると、

寮母の宮島郁代が

半分だけ扉を開けた。


そして顔をチラッと

半分覗かせて、

心配そうな顔で斧田を見ている。


「どしたーん?

悩み事なら相談のるよー。」


笑顔を作って話しかける

寮母さんとは対照的に


斧田は浮かない顔をしたままだ。


「ああ、なんだ…。宮島さんかあ。」


(申し訳ないけど、

寮母さんに話しても無理だろうな。)


そう思いつつ、

せっかく心配してくれてるんだからと

これまでの経緯を

仕方なしに話すことにした。


一方、宮島郁代は

寮母をしているだけあり、

やはり、聞き上手である。


部屋に入ると斧田に正対し、

ただただ「うん、うん。」と

優しくうなずきながら、

傾聴を続けた。


すると、徐々に

斧田の箱根駅伝に対する

アツい想いが大粒の涙と共に

滝のように溢れ出す。


子供の頃から、毎年ずっと

箱根駅伝を見に行っていたこと、


しかし、

全国高校駅伝の常連校である

城西拓翼大学附属高校では、

レギュラーにもなれず、

箱根駅伝と同様に憧れていた

都大路を走れなくて悔しかったこと


そのときのレギュラー陣とは

今も決して仲は悪くないのだが、

全員が箱根駅伝を目指すために、

指導者のいない城西拓翼大学ではなく、

有名な指導者がいる強豪校へ入学していく

そんな姿が眩しくてしょうがなく、


城西拓翼大学に進学した

自分一人がいつもいつも

置いてけぼりにされている、

そんな気がして辛かったこと


だから、

名将・岡林監督が指導者として

来てくれれば、

きっと新しいメンバーが入部して

自分も箱根駅伝を目指せると

思ったからだと。


最後まで話を聞き終えた

寮母の宮島郁代は、

涙を両の眼に溜めながら

力強く応えた!


「そうゆうことなら、私に任せて。

私、この大学の総長とは幼馴染なんよ。」


※ちなみに、

城西拓翼大学においては、

理事長が全学部のトップである

総長を兼任している。


つまり総長と言えば、

本大学組織のトップなのである。


「え…、ソウチョウ!?」

急な展開に動揺を隠せない

斧田謙信とは正反対に、


宮島郁代は、俄然、

やる気いっぱい!


こうなっては止まらない人なのだ。


「そう!

もう夕方だし、あの人のことだから、

仕事はあらかた終わってるでしょ。


よーし、

今から総長たーくんに電話するねー。」



この急展開に斧田は付いていけず

心のなかでこう叫ぶしかなかった。

(いや、待って待って。

まだ心の準備がッ、できていないよ!)

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