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駆け抜けろ!〜シグナルレッドの箱根駅伝〜  作者: ミチナリねるねる
エピソード0 駆け抜けろ!!
22/22

第20走 諸悪の根源

登場人物


◯ 櫛部川 敦史(30歳)


早稲田学院大学 出身


箱根駅伝に4年連続出場し、

名実ともにエースとして活躍!

総合3連覇の立役者となる。


大学卒業後は、非公式ながらも

マラソンの日本新記録をマークするなど

その将来を大いに期待されつつも、

謎の体調不良イップスのため、

第一線から身を引いていた。


今回、妻・晴美の説得もあり、

城西拓翼大学のヘッドコーチ就任を受けた!


現在、もう1人の新コーチを勧誘すべく

単身大阪へ飛ぶ。


◯ 浜上 順平(27歳)


櫛部川の実業団時代の後輩。

現在は母校である難波学園正堂高校の

駅伝部コーチに就任していたのだが、

後述の江古川監督の指導方針に

心から賛同できず思い悩む。


江古川えこがわ まさる(50歳)


箱根駅伝の常連校として名を馳せる

関東体育大学の敵対ライバル校にして

スポーツスパルタ校として有名な

東都体軀術大学の出身であり、


『勝ちこそすべて』『2位以下は全て負け犬』を

公言してはばからない難波学園正堂高校・駅伝部監督。


5年前に本高校から高額な報酬を提示され、

他校から引き抜かれる形で就任した。


高校駅伝においては、

全国優勝監督を何度も経験し、

駅伝界随一の勝負師と称される一方で、


その指導方法は、

生徒の体調や成長をかえりみずに、

無理矢理でもとにかく距離を走らせ、

気に食わないことがひとつでもあれば

烈火の如く怒鳴り散らし、

さらに激しい罰走を繰り返させて

恐怖心を植え付けることに特化している。


また、自分の教え子をコマと呼び、

怪我などで走れなくなった者を

欠陥品ゴミクズ』と呼ぶなど

人格形成には大いに問題がある。


この素性を知る者達(特に教え子ら)からは、

『エゴ川』と揶揄されるほど嫌われているが、

長年、高い成績を挙げ続けているため、

誰にも逆らうことはできないでいる。

「たったこの程度の練習量で

もうへばっているのか!!?

お前たちは今まで俺が指導してきた中でも

一番レベルが低い!もう低すぎる!


そんな次元の低い走りで

レギュラーを勝ちとることが

できると思っていないよなぁ!」


難波学園・正堂高校の一軍練習エリアにて。


時刻はすでに夜10時を回っていたが、

同校の監督である江古川の罵声は

いつもながらに激しく鳴り響いていた。


この暴言の矛先になるのは

決まって男女ともに一軍メンバーの中で

いつも練習で遅れをとる部員たちである。


しかし、

そのほとんど全員が

走りすぎによる怪我を隠しており、

また、体の節々に激しい痛みを

負っているにも関わらず、

時にはコンクリート上での正座を強制され、

誰1人とて微動だにすることを許されない。


江古川監督の話を聞くときは

正座をすることが基本デフォルトであり、

誰か1人が少しでも姿勢を崩せば、

連帯責任として、監督の怒りだけが

こもった容赦のない平手打ちが

部員らの顔に何発も襲ってくるからだ。


この指導の域を越えた体罰としごきにより、

多くの有望な選手がその競技人生を

絶たれていることは想像に難くないのだが、


ごく一部の将来性を見出された優秀な選手レギュラーは、

この常軌を逸脱したパワハラを受けることはなく、

明らかにその差別化が図られていた。


これにより、レギュラーらは

監督の江古川による激しい叱責を受ける

他のメンバーを横目に見ながら、

「絶対にああは成るまい。」と決意し、

黙って自宅や寮に戻っていく。


そのうちに、このレギュラー陣は、

知らず知らずのうちに、


弱者を見下して優越感を高めることで、

自己肯定感を上げるという、

誤ったエリート意識を植え付けられることで、

感情を捨て、あらゆる事を省みることなく、

短期間で競技成績を上げることのみに特化した、

監督への絶対服従型・駅伝マシーンへと

変貌を遂げるのだ。


これこそが、

江古川という男の真の狙いであり、

レギュラー以外のメンバーなどは

最初から使い捨てにするつもりなのである。


そして、ようやく江古川からの

パワハラから解放され、

強豪校の落ちこぼれという汚名レッテル

貼り付けられた部員たちは、

死んだ目をしたまま、

翌日も早朝練習に参加し、

さらに身体と体調を壊していく。


難波学園・正堂高校駅伝部では、

そんな悪しき習慣が

当たり前の日常として

繰り返されているのだ。


ーーー

これが、

2軍の指導を終えた浜上順平が

櫛部川に赤裸々に語った

正堂高校駅伝部の実態である…。



そして、

櫛部川が浜上の下を訪れたこの日、

正堂高校から地下鉄で3駅ほど離れた

櫛部川が滞在するホテル近くの

人気のいないファミリーレストランの一角にて。


時刻はすでに深夜を回っていた。


「そ…そんな酷いことが…。」

浜上の話を聞いた櫛部川が絶句する。


「はい。櫛部川さん。


こんなものは…

江古川のやっていることは、

陸上競技の指導ではありません。


もはや、部員たちへの虐待です。


私が現役時代もそれなりに

理不尽な練習は多多それなりに見受けられましたが、

これはそれ以上に常軌を逸脱しています。


せめて私は、江古川の目が届かない

2軍にいる駅伝部員には無理をさせないように

彼らの成長速度に合わせて指導をすることで

退部者を出さないようなんとか凌いできましが…。」


浜上が下を向き口をつぐむ。


「逆に、1軍にいる子たちのへ手助フォローはできず、

さらに、試合レースの結果だけを追い求める

江古川監督に2軍の成績をもっと急激に上げるよう

浜上もツメられる毎日、といったところか…。


人一倍思い遣りの強い君のことだ。

そりゃ確かに顔もひどくやつれるよ。」


櫛部川もため息をつき、下を向きながら

考え込むように腕を組んだ。


「はい…。」

もはやまぶたいっぱいに

涙を浮かべ押し込むような声で

浜上は声を絞り出す。


「櫛部川さん。江古川の悪事は

それだけではありません。


奴は、自分の息がかかった町医者と結託して、

試合レース前や調子を落とした選手レギュラーに、

栄養剤と嘘をついて、


鉄剤注射を密かに行っているんです!」


『鉄剤注射』と聞いて、

櫛部川がハッとした表情で

顔を上げる!


「まさか!今の時代にか!?

それは過去すでに陸上連盟からも

禁止されている行為のはず!


レース前の血液検査などで

撲滅が図られていたはずでは!?


浜上!どうゆう事だ!?

説明してくれ!」


怒りにも近いやりきれない感情が

沸きだした櫛部川が立ち上がり、

浜上に詰め寄った!

次回、鉄錠注射とは何か!?

その実態が明らかになる!

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― 新着の感想 ―
こんな事態が起きていたんですね。 そんな禁止されてる注射があるということに驚きました。
2026/03/20 20:17 マスターネルネル
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