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駆け抜けろ!〜シグナルレッドの箱根駅伝〜  作者: ミチナリねるねる
エピソード0 駆け抜けろ!!
15/19

第13走 育児とあなたとコーヒーと

登場人物


櫛部川くしべがわ 敦史あつし


早稲田学院大学 出身


現・NB食品陸上競技部、

長距離部門コーチ


学生時代、

箱根駅伝は4年連続出場。

1年次は脱水症状による失速から

区間最下位に沈み苦渋を舐めるも、


2年次 1区 区間賞、

3年次 3区 区間2位

4年次 4区 区間新記録(当時)

と名実ともにエースとして活躍!

総合3連覇の立役者となる。


大学卒業後は、非公式ながらも

当時、『無敵』と呼ばれた古瀬比己寿の

マラソン日本記録を大幅に更新し、

大いにその将来を期待されていた。


日本代表合宿にて、監督の岡林のみならず、

前述の『無敵』の古瀬ヘッドコーチや

『双子の最強ランナー』の宋茂・猛コーチの

指導を一身に受けていたが、

謎のイップスが発症し、マラソン競技を断念。

古瀬たちの下を去ることを決めた。


その後は、主戦場を1万mに移しつつ、

実業団・NB食品の長距離コーチを務めていたところ、


岡林から城西拓翼大学の

コーチ就任の誘いを受けたのだが…



NB食品陸上競技部コーチの

櫛部川敦史が、

城西拓翼大学・駅伝部監督である

岡林に誘いを受けたその日の夜。


櫛部川一家の住む賃貸マンションにて、

長女・小春をはじめ3人の子ども達が

スヤスヤと眠りについている。


時計の針は

早くも午後10時を回っていた。


子ども達とは対照的に

リビングに設置されたソファーには

力を使い果たした櫛部川夫妻が

ぐったりと横たわる。


(ようやく、ようやく終わった…、

今日の育児たたかいも…。


子どもの送迎に入浴、食事の世話…。

その上、幼少期によくあるという

予測不能な行動に気が休まる暇もない。)


(でも…あなたはいつもより

ずっとマシじゃない?


私なんて、いっつも

子供に付きっきりなんよ?


1日3食、それにあなたの分も

作らなきゃいけないし、


敦史が時短や育児休暇を

取得するようになってから

余計、大変になったんよ。)


ようやく眠りについた

子ども達を起こさないよう、

夜は小声で話すようになって

はや幾年。


妻・晴美の小声と共に発せられる

小言に耐える日々に

終わりが見えることはない。


もはや育児に関しては、

完全にイニシアティブを

握り続ける愛する妻に対し、


元日本代表の陸上選手であり、

稼ぎ頭である一家の主人あるじと言えども、

相変わらず育児うろたえてばかりの男には、

思ったことを言ってもよい権利なぞ、


まったくもって皆無!!

まさに言語道断と言わんばかりに!


夫の小さな不満などは

心の奥底に留めおかましが

大正解なのだ。


今日も、世間ではイクメンと称えられる

男たちはいつもこう思っているだろう。


(こ、こんなに頑張ったのに…


家庭が安らぎの場なんて、

誰が言いはじめたんだ?


そんなもの都市伝説じゃないのか…?)


まったくその通りである。


人生は思い通りにならないものばかりだ。


その中でも特に突発的な事態が

日々起こりうる育児というものは

その筆頭格であると言ってよい。


旦那おとこにとって

家庭とは、また仕事とは違う

新たな別次元の闘いであり、

それこそが本来の姿であるのだ。


リビングに

しばしの沈黙がつづく。


しかしながら、

この困難極まりない

育児生活にも関わらず

この2人の夫婦仲は、

非常に良好であった。


「よっこらしょっと。」

敦史の方が先に起き上がると

上半身のストレッチをしながら

台所キッチンへ向かう。


「さて。気持ちを入れ替えて、

コーヒー、淹れようか。

晴美は今日もカフェオレでいい?」


「うん。ありがと。

角砂糖は2つ入れてね。」


櫛部川夫婦には

無類のコーヒー好きと言う

共通の嗜好しゅみがあった。


敦史が古めかしい

手引きのコーヒーミルを取り出す。


インスタントコーヒーも

それはそれで好きなのだが、


やはり、上質な風味を

味わうならば、

間違いなくコーヒー豆を

ミルで引いた方がよい。


(今日は、エチオピア豆をベースに

ブルーマウンテンをブレンドと…)


根っからの凝り性なのだろう。

櫛部川家のキッチンにある上扉の中には、

数種類もの産地のコーヒー豆が

所せましと並べられていた。


(今日はどんな味になるんだろう。)


晴美もまた、

出来上がりの楽しみ以上に、

静かにコーヒー豆を引く夫の姿を見て

ほのぼのとした気持ちになる。


「さあ、できたよ。」


今日という1日を愛しむように、

優しい声と共に、妻のためだけに

淹れたカフェ・オ・レを手渡した。


一方、

旦那あつしの方は

渋い顔をしながら、

決まって熱々のブラックコーヒー

ばかりを飲んでいる。


(またカッコつけて…

彼氏だった頃も今も

ロイヤルミルクティーの方が

絶対に好きなくせに。)


「ねぇ?パパ。」

カフェ・オ・レを

カップの半分ほど

飲み終えた晴美が声をかける。


「ん?どうした。」


「あのね…。アツシ。

あなた…

本当は挑戦したいんでしょ?」


その言葉を聞いて、

ブラックコーヒーの入った

マグカップを口に運ぶ手が

静かに、そしてためらいを

見せるかのように止まった。

次回、

櫛部川敦史の心中は如何に…?


作者のコメント

「ちなみにオレはいまだ独身です。」

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― 新着の感想 ―
新生櫛部川コートの誕生ですよね? これからの展開、楽しみです
2026/02/14 10:02 イクヨネルネル
晴美さんが察してくれたような感じですね! これは良い流れで話がまとまる予感がしますね。 楽しみです!
2026/02/13 21:26 マスターネルネル
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