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第11走 ヘッドコーチ・櫛部川敦史(くしべがわ あつし)

登場人物


◯ 岡林 正裕


日本長距離界において、

実業団や大学駅伝に至るまで

数知れぬほどの実績を

残した名指導者。


現在は、女子実業団の

にこにこ堂の監督を最後に、

陸上界からは身を引き、

故郷の熊本県で妻・鞠江と

共に余生を過ごすと決めていたが、


箱根駅伝に挑戦したいという大学生、

斧田謙信からのメールをきっかけに

もう一度、指導者としての道を

歩むことを心に決める!


櫛部川くしべがわ 敦史あつし


早稲田学院大学 出身


現・NB食品陸上競技部、

長距離部門コーチ



学生時代、

箱根駅伝は4年連続出場。

1年次は脱水症状による失速から

区間最下位に沈み苦渋を舐めるも、


2年次 1区 区間賞、

3年次 3区 区間2位

4年次 4区 区間新記録(当時)

と輝かしい実績を持ち、

総合3連覇の立役者となる。


大学卒業後は、非公式ながらも

当時、『無敵』と呼ばれた古瀬比己寿の

マラソン日本記録を大幅に更新し、

大いにその将来を期待されていた。


日本代表合宿にて、監督の岡林のみならず、

前述の『無敵』の古瀬ヘッドコーチや

『双子の最強ランナー』の宋茂・猛コーチの

指導を一身に受けていたが…


翌、

東京都某市、

NB食品・陸上競技施設にて。


コーチの傍ら実業団選手らと

汗を流す1人の男のもとに、


恰幅の良い体格を揺らしながら、

岡林裕正は現れた。


全日本マラソン強化監督であった頃の

熱き血潮が騒いだのか、


その眼差しの先には、

かつて幻のマラソン日本代表と

評された櫛部川くしべがわ 敦史あつし

その教え子らを見つめている。


今ほど、トラックにて

何本目かの5千メートル走を

終えたばかりだ。


(なるほど、今もこんなに練習を

続けていたんだな。櫛部川…。)


一方、トラックでは


「ハァ、ハァ、ハァ…、

いやー、お前らも

だいぶ速くなったな。」


軽いジョグを繰り返しながら

呼吸をゆっくりと整える櫛部川が


トラックの芝生に倒れ込む

教え子たちに

爽やかに声をかける。


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。


いやー、ぜぇ。


まだまだっす。


今日のペースなら、

まだ付いて行けますが、

これがハーフマラソン以上になると…


やっぱり現役あのころ

櫛部川クシさんには

到底及ばないっすよ。」


かつて、

全盛期には非公式ながら、

マラソンで2時間6分切りを達成。


誰が見ても

日本代表入りは間近だという時に


その直後に訪れた

謎のスランプ…


スポーツ生理学で言うところの

激しいイップスに悩まされていた。


体力的には全く問題はない。


にも関わらず、


距離が連続で15キロ以上になると

両膝に全く力が入らなくなり、

ガクン崩れだしてしまうのだ。


(あの頃…マラソンか…。


古瀬さん、岡林監督、

茂コーチ、猛コーチ…。)


櫛部川の脳裏に

過去かつての記憶が呼び返される。


マラソン日本代表の選抜合宿に

大学の大先輩であり偉大なOB、

古瀬ふるせ 比己寿ひことし

連れられた時のこと…。


『岡林監督、茂君、猛君!

ついに見つけたぞ!!


俺たちを超える…

最高にすごい逸材が!


しかも、俺の母校、

早稲田学院大の後輩だぞ!』


『おいおい、どうした古瀬。

そんなに興奮して。なあ、猛。』


『ああ、まったくだ…。

古瀬おまえは日本代表の

ヘッドコーチなんだぞ。


少しは落ち着けって。』


『いやいやいや。練習だけど、

この俺の持つマラソン日本記録や

お前ら双子、そん兄弟の記録を

1分半も更新したんだ!コイツは。』


『だったら、古瀬、宋茂、宋猛、

そして俺の4人でしっかりと、

鍛えてやらんといかんな。


ガハハハハ…。』


(あの時俺は…。


最高の指導者に恵まれ、

世界でメダルが取れると、

そればかり頭に思い浮かべていた。


だが、今はもうこの様だ。

マラソンからは足を洗ったんだ。


どんなに練習を重ねても

イップスが戻らないと悟った時、

俺はすぐに逃げるように、

監督とコーチ達の元から姿を消した。


ご指導いただいた4人には

申し訳なさすぎて

合わす顔がない…。)


「それに…

世間ではまだまだ若造でも

陸上選手としての俺は、

もうそんなに若くないんだよなあ。」


年齢的には30代半ば。

共に走り、競い合った、

同年代の選手ランナーたちは

皆、引退しそれぞれの人生を歩んでいた。


「どこまで行っても、

最後は人間皆1人か。」


ポツリとつぶやきながら

空を見上げると、

太陽が出ているにも関わらず、


櫛部川の心の中の

寂し涙をそっと察するように、

優しく通り雨が降り注ぐ。


その時、


「久しぶりだな!櫛部川敦史!

そんなにあごが上がっていたら、

今より速く走れないぞ!!」


驚きのあまりビクゥッと身体が震えたかと

思った直後に櫛部川の背中に芯が通った。


当時の激しい練習メニューに

鬼のように恐ろしいと感じていた

聞き覚えのある指導者おかばやしの声への

条件反射は今でも身に染み付いている。


「か…か、監督!?岡林さん?

ど、どうしたんですか!


ああ、そうだ。

大変、大変ご無沙汰しております。」


「おう、久しぶりだな!クシ。


単刀直入に結論から言うぞ。


お前をコーチとして招聘する。

来い!城西拓翼大学に!!


一瞬に箱根駅伝に出ようじゃないか!」


「あ、はい。分かりました!

って…えぇぇぇ?!」


つい、何も考えられず

例の条件反射のごとく

返答してしまったが、

事の重大さに気づき、

櫛部川、あわてて絶叫。


先ほどの通り雨は嘘のように晴れ渡り

櫛部川の驚きの声に、

教え子たちも度肝を抜かれずには

いられなかった。

次回、岡林の誘いに櫛部川は…?

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― 新着の感想 ―
ついに、ジョーダイの箱根の道のりが、開かれるんですね‼️ ワクワクします 新たな魅力的なコーチも加わりそうで、楽しみです
2026/02/10 22:15 イクヨネルネル
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