冒険者登録試験、王都のギルマスとの死闘。
エリスさんとエリックさんは王から剣を賜るくらいには強い冒険者だったので当然現ギルマスとも面識があります。
王都は巨大な壁で覆われており、入口には甲冑を着た兵士が立っている。
「冒険者の方ですか。でしたら一応ギルドカードを御提示いただけないでしょうか?」
王都に入ろうとすると兵士にそう呼び止められた。
「ギルドカード?実は今から冒険者登録するところなので分からないです。」
そう答えると、近くにいた冒険者パーティーらしき4人組の1人、大剣を持った筋骨隆々な男が大笑いしながら話しかけてきた。
「お前ここで冒険者登録しに来たのか?冒険者志望の癖に王都のギルマスも知らねえのか。」
「???なんのことでしょうか?」
何か嫌な予感がする。
「アハハ、知らねえのか。じゃあ教えてやるよ。冒険者になるにはそこのギルマスと模擬戦をして十分な実力を認められねえとダメだろ。そんでギルマスってのはだいたい元S級冒険者とかなんだが、ここは王都ってだけあって元Z級、つまり剣聖と聖女を除けば世界最強レベルなんだよ。その上厳しいと来たからここで冒険者登録しようなんて物好きはそうそういねえのさ。」
「なるほど、忠告痛み入ります。でも僕はそこで冒険者にならせていただきます。」
キッパリとそう言いきる。きっとこれはエリックさんとエリスさんからの試練なんだろう。
「そりゃあ見ものだな。わかった。俺らがギルドまで案内してやんよ。」
再び爆笑しながら大剣男がそう言う。
どうやら彼らは”鷹の爪”と言う名前のCランク冒険者パーティーだそうだ。鷹の爪って唐辛子かなw
パーティーメンバーとしてはリーダー兼アタッカーの大剣男ことマグナス、後方火力担当で魔法使いっ娘のフィル、後方火力支援かつ索敵などの便利屋をこなす射手で華奢な美少年のアルカス、そして搦手などで敵を翻弄するタイプの前衛でレイピア使いの女騎士、アデラの4人組だという。かなりバランスが良いね。
そんなこんなを聞いている内にギルドに着いた。戸を開けると予想通り。
一回は冒険者たちで賑わっており、奥には受付嬢がいるカウンター、壁には依頼書が大量に貼ってあるボードがある。
二階は酒場になっており、冒険者たちが昼間から飲んだくれているようだ。
「あそこのカウンターで冒険者登録をしにきた旨を伝えてこい、俺らは仲間達にお前のことを話してくるからな。」
マグナスさんたちはそう言ってニヤニヤしながら二階に行ってしまう。きっと僕が冒険者になれるか賭けでもするんだろうな。
さて、そんなことは置いておいて僕はカウンターで冒険者登録試験を受けにきたことを伝える。
すると同意書とプロフィールを書く紙を渡された。
同意書の内容は一言で言えば死んでも責任は取れないと言うことと依頼の受け方に関することだ。
また、記入事項は名前と使う武器を書けと言う非常に簡素なものだ。名前はアオイ、武器の欄には剣/杖、と記入して受付嬢に渡した。よく考えたら何も考えず日本語で書いていたが特に問題なかったようだ。ご都合主義か。
その後すぐにギルドが保有する闘技場に連れて行かれた。
観客席ではマグナスさんをはじめとした冒険者たちが騒いでいる。
「俺は”×”に小銀貨一枚かけるぜ。」
「俺も同じくだ。」
「お前ら弱気だな、俺は”דに小金貨をかけるな。」
悉く”×”、即ち僕が冒険者試験に合格できない、に賭けられているな。だけど僕はきちんと冒険者にならせてもらうよ。エリスさんたちの弟子としても、僕の夢のためにもね。
「じゃあ俺は”○”に….金貨一枚賭けるぞ。」
マグナスさんがそう言うとさらに冒険者たちは湧いて、ぼちぼち僕にかける人も出てきたようだ。
「お前にかけたからな、絶対負けるなよー」
そんな声も聞こえてくる。
そうこうしている内に、正しく武人、と言う見た目の50代くらいの剣士、ギルマスが出てくる。
彼が発したオーラで数刻前まで賭けで騒がしかった観客が一瞬にして鎮まる。
「お前が受験者か….武器を出せ。」
僕はマジックバックにしまってあった剣を取り出す。
「じゃあ始めるぞ。あそこの冒険者たちから聞いただろ?俺は手加減はしない。合格条件は俺に膝をつかせることだ。」
そして審判役の受付嬢が合図をする。
刹那、僕は身体強化をフルにかけて一瞬で敵の背後に回り込み、抜剣する。
流石は元Z、僕の剣筋に合わせて対応してくる。
何度か剣を打ち合ったのち、お互い拮抗を悟り一度距離を取る。
「流石はあいつらの弟子、言っておくが今の速度について来れるのはこのギルド内でも片手で数えられるほどしかいないぜ。」
そうギルマスが言う。
なるほど…ね。そう言うことならこっちも全力で行かせて貰おう。エリスさんとエリックさんの顔に泥を塗らないためにも。
今度はギルマスの方から攻めてくる。僕は剣がぶつかる間際…一瞬で交わして背後に回った。
ここでギルマスは一瞬では僕の方を向けない。だがこちらから再接近し、剣のリーチに入る頃には迎撃の準備が間に合ってしまう。
「ファイアボール!」
咄嗟に魔法を放つ。これは《ネームドマジック》の中でも下級のものだが(火球だけに)発動時間が最も短い。
ギルマスは魔力を通した剣でかろうじて切り裂いてきたものの一瞬の隙ができたのを僕は見逃さなかった。
そのまま一気に敵に近づいて、剣を振りかぶったまま無防備なギルマスの首に剣を当てる。
試合が始まってから約1分程度、僕の魔法による闘技場の壁の爆散、そして僕らが高速で戦闘を繰り広げたことによる砂塵が晴れた時、観客も審判も驚きを隠せずに一瞬の沈黙が場を包んだ。
「俺の負けだ。冒険者登録試験合格おめでとう。」
ギルマスがそう言うと、観客たちも我に返り熱狂し出す。剣聖たち以来、実に20年ぶりに王都で冒険者が生まれたのだから。歴史の伝説に、転換点に確かに立ち会ったのだから。
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その後、なんだかんだあったものの僕は晴れて冒険者となった。
因みにギルマスはエリスさんから僕のことを聞いていたそうだ。
取り敢えず冒険者になれて本当によかった。




