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第二の人生☆  作者: 吹雪‘。
〜出発〜
11/12

奇跡の森を超えて

サカラ村を発ってから早一日、一晩野宿を挟みつつ、僕は王都を目指し、一路南西に向かっていた。

「それにしても身体強化は便利だなあ」

実は僕は今、ただ歩いているのではない。足の筋力を常に強化しながらかなりの速度で移動している。

あたりは基本的にずっと広大な自然が続いているが、時折街もある。本来はそういう街々を経由して移動するのだろうが、僕は身体強化の訓練とサバイバル術向上を兼ねて敢えて街には目も向けずに進んでいる。

そしてその日の日が沈む頃には、王都とサカラ村のほぼ中間にあるとエリスさんが言っていた、通称『奇跡の森』についた。

名称の由来はこうだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

かつて魔王軍と人類が戦っていた際に、人類連合軍はこの森でゲリラ戦を展開していました。

しかし、それに痺れを切らした魔王軍は一晩にしてこの森を焼き払ってしまったのです!

それによりゲリラ戦をしていた部隊は壊滅、さらには森の木々も一本残らず消え去り、更なる戦線の後退は必須と思われました。

ところが、魔王軍の暴挙はこの森に住まう精霊の怒りを買い、精霊の摩訶不思議なチカラにより付近に滞在していた魔王軍は拠点諸共壊滅。その上、精霊は森林の木々を一週間もかからず元の状態に戻したのでした。

これにより人類は反抗作戦に成功。また、各連合軍の戦力集結のための時間稼ぎにも成功し、戦況は一点しました。この奇跡的な勝利にちなんで、人々はこの森を『奇跡の森』と名付けたのです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

まあなんともできた話だとは思う。そもそもこの世界は別に「精霊」が一般的にいるわけではない。

大方、戦意を鼓舞するために作り上げられたでっち上げだろう。

と、そんな夢のないことを考えていたが既に夜だ。さっさと野宿の支度をしてしまおう。

僕はアイテムボックスから杖を取り出す。

そしてそこら辺に転がっている木を軽く一箇所に集めて、

「ファイア!」

そう詠唱し、火属性の基本魔法で炎をつける。

無詠唱でできるけど詠唱した方がかっこいいよね。

次に、魔素をドーム状に拡散させるイメージで…

神経を集中させる。

「我が身を守れ、イージス!」

これは魔素を使った簡易的な防御魔法だ。魔素は基本的に触っても何も感じられないが、魔力を流してやることで多少の物理的判定を持たせてやることができる。それを応用しているのだ。

ただし、魔素をマジックエレメンタルに変換せずそのまま使うので、寧ろ身体強化に近いイメージだが。

ちなみに詠唱はバリアとイージスで悩んだ末、かっこいいからイージスにした。

「さて…と。これで多少魔物や野生生物が来ても安心だろう。」

イージスは正直実戦で使えるほど強くはない。

一点に魔素を集中させればそれなりの強度を誇るが、少なくとも現在は体の周り、半径2m程度の半球状に展開しているので、せいぜいゴブリンやウルフなどの下級の魔物の攻撃を一度か二度防げる程度だろう。

だがそれでいいのだ。この森にはほとんど人は来ない上に、強い魔物もいないのだから。念には念を、だ。

アイテムボックスからおにぎりを取り出して食べた後、僕は仰向けになる。

疲れがどっと襲ってくる。一日中身体強化に神経を尖らせていたせいだろう。

半目越しに、どこまでも星々が見える。

「綺麗だ….な。」

そうして僕は眠りに落ちた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

翌朝、眩しいほどに輝く太陽の光で目を覚ます。

「うーーーん、よく寝たあ。」

さて、今日も一日がんばろう!

と、そこで異変に気がつく。イージスが破られている。

何があった?僕はすぐさまマジックバッグから剣を取り出し、警戒体制をとる。

森一帯に広く魔素を拡散させるイメージで索敵を行うが特に何もおかしなものはない。

「気のせいか……ん?」

向こうから、橙色の髪で、10代後半くらいの端正な顔たちの男性が歩いてくる。特徴的な耳は架空の種族であるエルフのそれに酷似している。

その他、腰に杖と青チャ二冊分ほどの厚さの魔導書ををぶら下げており、魔法使いと思われる。あれ絶対重いだろ。

「あ、起きたんだね。おはよう~」

“彼”は僕が築いたのを察して話しかけてくる。

「あっ、おはようございます。ところであなたは誰でしょうか?」

「僕の名前はリデア・ベルムだよぉ。気軽に”リデア”って呼んでねぇ。」

“彼”、もといリデアはゆったりした口調でそう語りかけてくる。

「ところでさぁ」リデアが続ける。

「僕と戦わない?因みに君に選択肢はないからねぇ」

突然の魔素の波動に驚く。リデアの表情にはそれまでの柔和な笑顔が残っているが、明らかに戦う気だ。

「な、なんでですか?僕が何かしましたか?」

驚いてそう問い返す。その間、僕は敵対的な魔力に反射して、無意識の内に剣を構えていた。

「君も戦う用意はできたみたいだしいくね。何秒耐えられるかな?」

相手は待ってはくれないようだ。

これは、きっとあれだろう、異世界ラノベの初っ端によくある、盗賊なんかを倒して

”あっちゃ〜、俺、またなんかやっちゃいましたぁ?(ドヤっ)”

なんて主人公がイキるお決まりのイベントだ。

取り敢えず、エリックさん直伝の剣術で翻弄してやりますか。

リデアの魔法を皮切りに戦闘が始まる。

僕の魔法と比べればなんて事もない程度の威力の風属性ネームドマジック、《ウィンドカッター》を右に左にサラリとかわしながら僕は一瞬のうちにリデアに接近し、剣を振りかぶる。

そして、ゼロコンマゼロゼロ….秒後、リデアの首元に剣を当てて降伏を促す予定だった僕の体は見事に宙を舞っていた。

「…は?」

その瞬間の僕は無防備だったのだから、本来魔法で着地までの時間を稼がなければならなかった。しかし僕の脳内は驚きに埋め尽くされており、何もできなかった。

そこに更にリデアの追撃が重なる。

それは、魔素によるまるで”不可視の手”のような攻撃で、僕の体は空中に固定された。

「あれぇ、思ってたよりも弱かったなぁ。もう少し生きててくれると思ったのにぃ。」

そんなことを言いながら、リデアは僕を”不可視の手”でさらに強く握りしめてくる。

「うっっ…く」僕は全力で降り解こうとするがそれらの努力は全て水疱に帰す。

痛みで集中できず、魔法の発動もできない。

苦しい苦しい苦しい苦しい

このまま死ぬのか。森の精霊様、助けて….

そして意識を失う直前、僕の体が、まるで空き缶を踏み潰すかのように、グシャリとグロい音を立てて潰れたような気がした。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

どれほどの時間が経ったのだろうか。

僕は目を覚ます。驚くべきことに生きていた。

辺りにリデアはいない。いやしかし、僕の体は五体満足だ。まさか本当にこの森の精霊様が助けてくれたのだろうか?

そんな感動も束の間、脳裏にリデアとの戦いが思い起こされる。

僕は奴に全く歯が立たなかった。それは驕りの所為だけでは無い。

最後の魔法を見れば分かる。最初の《ウィンドカッター》は明らかに手加減していただけで、あいつの実力は僕よりも上だ。

しかし、此度のお陰で真の強者を知り、慢心は完全に消え去ったと思う。

今後、どんな化け物が出て来るかわからない。慎重にいこう。そして何より、日本とは比べ物にならないほど“死”の存在が近くにあるこの世界で生きていけるように、もっと強くなろう!

そう決意し、森を抜け、王都へ向かう。

そして翌日の昼前、ついに王都の城壁に辿り着いた。

補足。

探知とは、魔素を平面上に広げて、物体とのぶつかりを認知することでそこにいる魔物や人などの概要を掴む魔法である。そもそもこれは魔法を魔素から捉えてやっている数少ない人間にしかできない技であり、魔導書の基本魔法のみを使える人間には決して成せない。

この、「探知魔法」に対して対抗するには、まずは魔素の動きから何者かが探知を発動していることを察した上で、己の周囲の周りの魔素を「そこに何もない」かのように操る、と言う非常に高度な技術を要求されるのだ。

また、”不可視のの手”ですがこれも相当高度な魔法で、少なくとも現段階ではアオイくんは使いこなせません。

なぜかというと、魔素を扱うに際して、制御の難易度は操る魔素の量に比例するのですが、人を掴んで持ち上げる、というのにはかなりの魔素が必要だからです。

因みに魔素というのはそもそも干渉して何か他のものに変える、つまり魔法を発動することには向いていますが、それ自身に物理的判定を持たせることには全く向いていません。もし魔素に物理的判定が存在しているなら、この世界では動くことすらままならないでしょう、この世界の大気中には魔素が充満しているのですから。

つまるところ、リデア君は大量の魔素、それこそ奇跡の森中の魔素をかき集め、アオイ君をそれによって持ち上げるということを難なくやって見せたのです。因みにアオイ君はそのヤバさにキチンと気づいています。

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