短編 3 巨乳な妹の話
スパイスの効いた話を書いてみたかったのー!
俺には自慢の妹がいる。
巨乳な妹だ。
可愛い上に巨乳で気立てもよく料理も得意というパーフェクト過ぎる自慢の妹だ。
学業もそこそこであるからまさに完璧と言えるだろう。これで頭脳明晰だと却って鼻につく。そこら辺も完璧だ。
流石、俺の妹である。
何処を取っても最高だ。
兄として誇りに思うし愛が溢れてしまうのも無理はないだろう。妹さいこー。
さて、そんなパーフェクトな妹だが、最近色気付いてきたのを兄は知っている。
パンツがお洒落になってきたのだ。ちょっと前までは猫さんプリントのパンツを愛用していたというのに。今ではフリフリのレースとか黒のレースとか紫のレースとか……なんかエグい。
お兄ちゃんはちょっとどうかと思う。紫は早いよ。黒もさ。まだ中学生でしょうに。母さんもなんてパンツを買ってやるんだか。
この手の下着は手洗いが原則なのだが妹は普通に洗濯機にぶちこむズボラさんである。パーフェクトな妹だがこういうところが愛しく思える。
兄がこっそりと自分の下着を洗っている事にいつ気づくのか……まぁ多分気付かないだろう。母さんも洗濯機にぶちこむズボラさんだからな。
風呂場で父さんが母さんの派手な下着を洗ってるのを見た五才の僕。父さんは死んだ魚のような目をしていた。この時、何となくうちのヒエラルキーを理解した。それ以降自分も積極的に父の手伝いをするようになった。父の目は少しだけ生き返った。
洗濯は男の仕事。それがうちのルール。でも下着は自分で洗って欲しい。お兄ちゃんは知っているんだよ。妹の秘密を。
でもお兄ちゃんは黙ってる。だってお兄ちゃんだからな。妹の幸せを誰よりも願うのが兄の愛というものだ。
でも母さんの幸せは父さんに丸投げだ。頑張れ父さん。
妹が思春期になって色気付いてしばらく。
妹に彼氏が出来た。
お兄ちゃんは祝福した。普通に祝福した。別に血の涙を流すこともなく、お相手を脅してお話することもなく。
だってお兄ちゃんだし。
妹の恋愛に口出しするのは兄のすることではない。妹は妹の人生を生きている。その後押しをするのが兄であり邪魔をするのは兄ではないのだ。
で、妹はすぐに破局した。
早かった。すごく早かった。
三日で別れたそうだ。お兄ちゃんは絶句したとも。妹の親友に聞いたから間違いない。話によると放課後の教室で二人きりになった時に、彼氏君がいきなりおっぱいを揉んできて……妹の巨乳がもげたらしい。それで大騒ぎになったんだって。
……うん。だって妹のおっぱいはパッドだもん。彼氏君は乱暴に揉んだんだね。若いってすごいな。もげるほどに揉むなんて。
放課後ということで生徒は少なかったが、妹の巨乳が偽物であるということはあっという間に学校中に知れ渡った。多分彼氏君が言い触らしたのだろう。彼も学校中で嫌われ者になってるので復讐と見るべきか。
おっぱいをもぐ男として女子からはゴミクズ扱いされてるらしい。どすけべの変態野郎というのが定着したとかでサッカー部の部長だったのが解任されたとのこと。まぁ当然かなぁ。
今は不登校になってるんだって。メンタル弱いなー。
で、妹なんだが……今はパッドを入れずに学校に通っている。普通に登校してる。胸がすっきりしてる状態でな。
本人は特に拘りがなかったようだ。
母さんもパッド戦士だからその真似をしていたのかも知れない。母さんも本来は胸がすっきりな人だ。本当はすっきりだけど仕事に行くときはバインバインだ。父さんの目はいつも死んでいる。
子供心に『なんじゃこれ?』と思ったがそれが長年普通であると思っていたのだ。
普通じゃないと理解したのは俺が中学生の時。まぁ俺の詳しい話はどうでもいいだろう。肝心なのは妹の方だ。
妹の巨乳がすっきりした。
これによって妹はパーフェクトな妹ではなくなった。
友達が更に増えたのだ。それによりお兄ちゃんとの時間が目に見えて減った。
お兄ちゃんとしてはもう少し構って欲しいと切に思う。お兄ちゃん寂しい。
妹の友達がうちに頻繁に遊びに来るようになったがお兄ちゃんは蚊帳の外である。妹の親友が泣いてる俺とよく遊んでくれるが寂しい事に変わりなし。
だがこれも妹の人生なのだろう。
兄としての出来る事。
それを為すのが兄として生まれた俺の為すべき事ではなかろうか。
ということで妹のブラとパッドを着けた状態で妹の部屋に乱入してみた。友達のお泊まり会に殴り込みだ。お兄ちゃん寂しかったんだからね。
男の俺でも着れるブラってすごいなぁと思いながら踊ってみた。胸がバインバインした。
妹の友達達にバカウケした。
そして……俺は妹に殴られる事になった。
お兄ちゃんは嫌われてしまったのだ。
季節が過ぎ、風の匂いが変わっていた。妹が兄離れをして半年が経った。今も妹は口も聞いてくれない。家にいるのに目も合わせてくれない。
絶望だ。絶望しかない。
俺は体重が20キロ程落ちていた。妹の親友がほぼ毎日家に来て俺の世話を看てくれる。ありがたいことだ。
妹も彼女とは話をしている。
お兄ちゃんの事は完全に無視である。お兄ちゃん悲しい。でも妹はいずれ兄離れをするのが自然の摂理である。
お兄ちゃんもそろそろ覚悟を決めなくてはなるまい。妹からの卒業式。そして兄離れ式である。
お兄ちゃんは兄として覚悟を決めた。何故なら俺はお兄ちゃんなのだから。
式は妹の誕生日に予定した。妹はもう立派なレディと言える年齢だ。こうなると妹扱いは出来まい。兄は泣く泣く兄ではなく家族へとジョブチェンジを果たすのだ。
妹の親友ちゃんがサポートしてくれたお陰で準備は全て整った。
そして式当日。妹の誕生日には家族と妹の親友ちゃんだけが集められていた。まぁ昼間は学校で大々的にやったらしい。妹は大人気である。兄として誇らしい限りだ。
で、今は夜である。父さんと母さん。そして俺と妹と妹の親友ちゃんで身内だけの誕生日会である。
居間に全員揃ってご馳走を前にして、まず口火を切ったのは妹だった。
「結婚おめでとう」
……うん?
妹が満面の笑みで親友ちゃんを祝福していた。親友ちゃんも嬉しそうにしている。ものすごく真っ赤な顔で俺をチラチラと見ていた。
父さんと母さんも親友ちゃんを祝福している。
……うん?
「こんな変態な兄だけど好きになってくれてありがとう」
……うん?
お兄ちゃんは別に変態ではない。父さんと母さんがめっさ頷いているのが納得いかんが。
まぁ俺も妹の親友ちゃんの事が異性として大好きではある。だが兄としての優先順位があって彼女には申し訳ないが……あ。
「このバカ息子も強情というか融通が効かないアンポンタンだけどあなたなら大丈夫よ」
……あー。そういう事か。そういう事なのか。今日は『兄離れ及び妹卒業式』である。今日から自分は普通の恋愛解禁だ。
「重度のシスコンで不安だったがこれで安心できる」
父さんの目が久し振りに輝いて見えた。多分あれは泣いてもいる。
これは……あれだな。全て妹の企みとみた。何故なら妹が笑顔なのだから。半年振りに見る笑顔だ。この世で一番素敵な妹の笑顔である。
「お兄ちゃんは幸せにならないと駄目なんだよ。私は妹だもん。お兄ちゃんの幸せを願うのが妹ってもんでしょ?」
……どうやら自分と妹は似た者同士だったようだ。
この日、自分はお兄ちゃんを卒業した。ただの兄になったのだ。そして大切な人が出来た。家族である妹と同列の女の子だ。
自分はこの先、彼女を幸せをするために生きていく。勿論家族として妹の幸せを願うことも止めない。
だって家族だからな。家族を愛するのは当然だろう。
私には兄がいる。
世界で一番愛している大切な人だ。
でもちょっと変態すぎてこの先不安になっている。妹である私の為に人生の全てを懸けてるから。
私は実の妹。これが義理の妹なら遠慮せずにお兄ちゃんと結婚してた。でも現実はそうじゃない。兄は普通に兄であり、私は普通に妹なのだ。
兄には幸せになって欲しい。それが私の願い。このままでは私が死ぬまで独身でもおかしくない。それほどに兄はシスコンだ。妹として、女としてこれほど嬉しい事はないが、兄の人生を奪うなんて事は妹として断固受け入れられない。
まずはこんな兄でも好きになってくれる人を探す事にした。
幼稚園で発見した内気な女の子がまずはノミネート。顔よし、性格よし、家柄よしの第一候補である。他にも多数の候補を確保した。兄に会わせてみて反応を探る。
大半の子が『面白いお兄ちゃんだねー』で終わる。まぁ予想通りではある。しかし第一候補は脈ありと見た。すごいわ、この子。
ここから私の長い戦いが始まった。
少しずつお兄ちゃんを女の子達に慣らしていく為に何度もお泊まり会を開催した。サブは必ずキープする。それがリスク回避の鉄則らしい。母も共犯だ。
兄は家事の中で洗濯を担当している。それはお泊まり会の日もそうなのだ。
あわよくば女の子のパンツでお兄ちゃんを欲情させてそのまま責任を取らせる。
小学生の私にしては、かなりの策略だったが兄にはノーヒットだった。鼻歌を歌いながら普通にパンツを干す兄にびっくりした。漂白すらかけていてプロ意識を感じたわ。
これにはお泊まりに来てた女の子達も真っ赤になった。新たな性癖に目覚めた子もいた。それは流石に知らない。私のせいだけど。
そんなことをしているうちに第一候補の女の子が成長期を迎えた。ボインである。まさかの小学生ボインである。
これには困った。うちの家系は基本的にパッドで誤魔化す貧乳家である。兄としても貧乳にしか馴染みがないのだ。母もパッド戦士だから天然おっぱいは兄の性癖に掠りもしないだろう。
私は自分の身を捧げることにした。小学生にしてパッドを入れ始めたのだ。これはこれで癖になる。母が似非ボインを止めないのには理由があったのだ。
この頃から兄の視線が急に優しくなった。
多分私のおっぱいを見て欲情しているのだろう。これなら親友にも興奮すること間違いない。早く巨乳に慣れて欲しい。
この頃になると第一候補の女の子は私の親友になっていた。どんな悩みも相談し合える姉妹みたいな関係になっていたのだ。
まぁすぐに本当の姉妹になるからねと私は一人ほくそ笑んでいた。
だがしばらくして問題が起きた。
私の親友に手を出そうとするクズが学校に現れたのだ。確かに顔よし、性格よし、家柄よし、おっぱいよしの女の子ならモテるのも当然である。しかし既にお兄ちゃん専用として長年調教げふん!
……長年兄を想い続けてきたのだ。そんな一途な彼女をクズの手あかにまみれさせる訳にはいかない。
なので私がクズの相手をすることにした。てっきり兄が出てくるかと思ったが、むしろ遠巻きに見ていてびっくりした。こっそり拉致監禁して『おはなし』くらいはするかと思ってたのに。
私の誘いにあっさりと乗ったクズはこれまた私の策略に面白いように乗っかり自滅していった。
その後、何故か不登校になり、そのあとの話はぱったりと聞かなくなったが、そんなことはどうでもいいことだ。親友の操は守られた。私のおっぱいを犠牲にしたがそれも必要経費である。
……夏は蒸れるからそろそろ止めたかった、という本音は女友達にはバラしたけど。
このときから更にお兄ちゃんのお嫁さん候補が増えた。うーん。第一候補の親友には頑張ってもらいたい。
私がパッドを入れなくなってすぐ、また事件が起きた。
兄が私のブラを着けた状態で部屋に乱入。そして踊りを披露したのだ。ちょっと私も意味が分かんない。
兄の着けてるブラは以前私の着けていたパッドを入れるブラだった。すごい揺れていた。それはもうバルンバルンと縦揺れしていた。
バルンバルン踊りを踊り終わった兄はどこかやりきった顔をしていた。
とりあえずその満足気な顔をグーでぶん殴った。
すぐに後悔したが痙攣する兄を看病する親友の姿を見て、とある企みを思い付いた。
これでようやく兄は幸せになれる。何故私の部屋に乱入して踊り出したのかは謎のままだが私は計画を立てて実行に移す事にした。勿論親友も共犯だ。
あの踊りを見ても兄を見棄てなかったのだ。もうこの子しか居ないと判断した。他の子は……まぁ笑ってたけど無理だろう。
私は鬼になることになった。お兄ちゃんがどんなに声を掛けてきても無視する鬼の妹に。
反抗期真っ盛りという演技をしたのだ。兄の自立を促すために。
しかし実行に移してすぐ、お兄ちゃんは見る見るうちに痩せ細っていった。ちょっと心配になるレベルで激ヤセしていったのだ。看病は親友に任せた。それしかないと判断した。やれるならやっちまえと、けしかけもした。
私も血を吐く思いで我慢していた。というか普通に胃潰瘍になった。お兄ちゃんの使用済み衣服で胃潰瘍の治療をしつつ時はじりじりと進んでいった。
そして半年後。ついにお兄ちゃんが決意した。シスコンなお兄ちゃんから普通の兄になると決断したのだ。
お兄ちゃんは変な所で頑固で融通が効かない人だ。そんなところも大好きなんだけど、お兄ちゃんの幸せの為にはそれが邪魔だったのだ。
私も正直限界を迎えていた。夢の中でお兄ちゃんとバルンバルン踊りを毎回開催するくらいに病んでいた。
早く現実のお兄ちゃんに甘えたい。
そんなことをおくびにも出さず私は最後の仕上げを行った。
書類の偽造である。
お兄ちゃんと親友の婚姻届。
これを書いたのだ。
実は親友と私の誕生日は同じ日である。偶々の偶然であるが幼稚園の頃から一緒に祝うことにしているので既に違和感はない。
だからこそ、この日彼女はお兄ちゃんの妻となれる。私の義理の姉にも。お兄ちゃんなら拒否しないはずだ。お兄ちゃんも親友の事が大好きだから。
そうでなければ毎年家族だけの誕生会に親友がいる理由にならない。お兄ちゃんは頑固で融通が効かないアンポンタンだもん。
だから分かりやすくて分かりにくい。
だから愛しくてたまらない。
お兄ちゃんと親友がようやく結ばれて私もこれからが本番だ。
私の誕生日。そして親友の誕生日に私のお兄ちゃんは『兄』となり『夫』になった。
私はお兄ちゃんが大好きだ。だからこそお兄ちゃんの幸せを願ってる。
だって家族だもの。家族を愛するのは当然でしょ。
私の幸せはもっと先にある。具体的には親友の息子が産まれて結婚出来る年齢になってから私の幸せが始まるの。
だって家族だもの。家族を愛するのは当然でしょ?
今回の感想。
ちょっとホラーかも?