第8回
「ちょっと佑樹! 自分が何したか分かってるの?!」
「分かってるよ、けど、咲は自分で勇気を出してこの決断をしたんだ。俺はあくまで補助をしただけだし..」
学校に着いた俺は、トイレの個室で妖精に説教を受けていた。
「佑樹が関わらなかったらこうはなっていなかったはずでしょ?! それに..これは君も他人事じゃないからね? 思わぬ所で敵を作る事になりかねないんだよ?」
「え? どういうこと?」
「すぐに分かるわよ」
妖精はそう言って姿を消した。他人事じゃないってどういう事だ? 俺の未来にも関わってくるってのか? よく意味が分からなかった俺は、疑問を浮かべたまま教室に戻った。席に座ると、咲が俺の所へやってくる。ちなみに咲とは同じクラスだ。
「ねえ、佑樹って部活何やってるの?」
「帰宅部だけど?」
答えると、咲は軽くそっぽを向いて。
「ふーん..じゃあ私も帰宅部入る」
「え? 咲さんも?」
「何よ? 悪い?」
「いや! そういう訳じゃないけど!」
「じゃあそういう事だから」
そう言って咲は席に戻って行った。すると、朱音が俺に。
「随分仲良いんだね..突然学校に来たし..何かあったの?」
「いや? 何にも!」
「そうなんだ..」
朱音は不自然な笑顔で俺を見ると、授業の準備を始めた。
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放課後、俺は今日こそ朱音に連絡先を聞こうと下駄箱で朱音を待っていた。それから少し待つと。
「佑樹くん..!」
「ん? 朱音さん?!」
声かけてきたのは朱音だった。何だよこの展開! まさかの向こうから?! と調子乗っていたが、朱音の表情から察してそういう雰囲気ではなかった。俺は気を引き締め、朱音の言葉に耳を傾けた。
「実は佑樹くんに..」
「佑樹!」
その時、朱音の言葉を遮るように咲が俺の名を呼んだ。
「一緒に帰ってよ..」
「ごめん咲さん..今朱音さんと..」
咲に言おうとしたら、朱音が。
「いや.. やっぱり今度で良い..ごめん急に呼び出して..」
「いやでも..」
「大した事じゃないから..またね..」
朱音はそう言って帰っていった。やっぱりあの時から様子がおかしい気がする..山本の奴..一体何を..
「ねえ、早く帰ろうよ」
「う..うん」
帰り道、突然咲が。
「佑樹、朱音って子の事好きなんだろ?」
「何言ってんだよいきなり! ま..まあ確かに可愛いとは思うけど? す、好きって程じゃないかなぁ!」
俺はテンパりながらも答える。咲は笑いながら。
「ちょっとからかってみただけだって! そんなに焦んなし! でもあの子感情無さそうだよなあ」
「そんな事ないよ! 意外と笑う時あるし、それにたまに笑わったり..ゴホンッ..確かにそうだね..!」
「ほんと佑樹って面白いわ」
ギャルに遊ばれる俺..あー情けねえ..こうなったら俺だって..!
「そういう咲さんこそ、好きな人居るんじゃないの?」
「いるよ? 佑樹」
「ほらやっぱり..! ....え? おおお俺?!」
俺が噛みながらも答えると、咲が突然吹き出して。
「ぷっ! ははっ! 冗談だから! まじで信じるなし!」
「何だよ..! からかうなよな!」
「ごめんごめん! 面白すぎてつい! ていうかそろそろ私の事呼び捨てしなよ」
いきなりハードル高い事言うなよ。女耐性0の俺が名前呼び捨てとか超難関だから! ようやく付き合えた朱音だって呼び捨てするまで割と時間かかったんだぞ! でも、舐められっぱなしもあれだしここは堂々と。
「分かった咲! これからは咲!って呼ぶわ! よろしく! 咲!」
「お..おう..てか..何回呼ぶし..」
「ん? 咲?」
名前を呼んだ矢先突然下を俯く咲。そっと顔を覗くと、耳まで真っ赤になっている事に気づいた。待てよ、もしかしてこの子..照れてんのか?! 何だよ意外と可愛いとこあるじゃん!
「照れてんの?」
「なっ..! 照れてないし!」
そんな賑やかな帰り道、俺はどうしても気になっている事があった。それは朱音が何を言おうとしていたのか..楽しくて一瞬忘れていたが、今ふっと頭によぎる。思い出した俺は、いきなり咲に。
「咲..申し訳ないけど、先帰って..」
「え? どうしたの?」
「どうしても気になる事があるんだ..ごめん!」
「さっきの事?」
小さく頷くと、咲はボソッと呟く。
「やっぱり好きなんじゃん..」
「ん?」
「何でもないし! 早く行きなよ!」
「うん..! ほんとごめん!」
言って、俺はその場を後にする。やっぱり放っとけない。このまま先延ばしにして、また朱音に会えなくなるのは御免だ! きっと朱音はまだそんなに学校から離れてないはず! 俺は全力疾走で朱音の元へ走った。
朱音の通学路を知っている俺は、学校から通学路を辿る事にした。しかし、校門に着くと誰かが俺を引き止めた。
「八乙女じゃん!」
「あんたは..」
俺を引き止めたのは山本だった。山本は俺を呼ぶと。
「いやあ、ちょうど話したい事があったんだよ!」
「話したい事?」
「実は朱音ちゃんの事なんだけどさ」
やっぱりこいつ、あの時朱音に何か言ったんだ。俺は不貞腐れながらも山本の言葉に耳を傾けた。
「八乙女が朱音ちゃんの事好きだって知ってんだわ俺..でもさ..悪いけど諦めてよ?」
「何..言ってんだ..?」
どうして山本がそれを知っているんだ? しかも諦めろって..突然の話で頭が混乱しながらも、一つ分かった事がある。やっぱ..こいつはキラーだ。俺は山本を睨みつけ答える。
「何であんたが知ってんだ?」
「そんなの君を見てたら分かるさ! でも残念だけどね..朱音ちゃんは俺の事が好きなんだよ..」
山本は不気味に笑いかけて言った。何を言ってんだこいつ? 朱音がお前を好き? そんな訳ない..! 朱音がこんな奴を好きになるはずが..
「そんなの分からないだろ? 朱音さんが言ったのか?」
「さあな? 俺はそう聞いたぜ?」
そんなの嘘だ..信じるわけがないだろ? どうしても信じられない俺を畳み掛けるように、山本はヘラヘラと笑いながら。
「実はさ..今友達とゲームしてて、美女1人とヤる事に1ポイント換算されてさ、1番ポイントが高かった奴が優勝ってゲームしてんだよね? それで優勝した人には、優勝出来なかった奴らから10000円ずつ貰えんだよ? 美味しいと思わねえ?」
俺には、もはやこいつが何を言っているのか分からないほどに怒りを覚えていた。気色悪すぎて吐き気がする。俺は山本の胸ぐらを掴み。
「てめぇ..ふざけた事言ってんなよ? そんな事して、俺が黙ってる訳ないだろ?」
言うと、山本はニヤリと笑みをこぼして。
「何だよ? 先生にでも言うのか? 集金泥棒の言葉を誰が信じる? お前の言葉を信じる奴がいるとでも?」
「朱音なら..俺の言葉を信じてくれる..本人にだけでも言えば、お前の好きなようには出来ない!」
その時、山本の顔から笑みが消える。
「やめとけよ..知ってんだぞ? 朱音がアルバイトしてる事。確かこの学校は禁止だったよなぁ、アルバイト」
「て..てめぇ..」
俺は口から血が出るほどの力で唇を噛み締めた。おそらく、朱音が俺に相談しようとしていたのはバイトの事だったんだろう。俺は知ってる..朱音の家は母子家庭で、朱音合わせて子供3人分を養う事すらもままならないって..だから朱音がバイトをして生計を手伝ってる。しかしそれが学校にバレればバイトも出来ないし、下手したら処分も受ける事になる..俺は今にもこの男を殴りたくて仕方がない気持ちの中、頭の中で朱音の言葉を思い出す。
《私は信じてみる事にする..貴方のこと..》
そうだ。朱音は俺を信じてくれてる。ここで暴力を働けば、俺は朱音の気持ちを裏切る事になる..! 堪えろ..! 自分の感情と戦っていると、山本が笑みをこぼして。
「想像してみろよ? 普段はドライな女の子が、実はベットの上ではヒィヒィ喚くビッチだったらどうする? 心配すんなよ..動画撮ったらお前にも見せてやるからさ?」
その時、俺の頭の中で何かがプツンと切れる音がした。俺は山本の顔目掛けて殴りかかった..
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