第20回
私は佑樹に呼ばれて山美公園に向かっていた。突然の誘いでびっくりしたけど、大事な話があるらしい..けど..さっきの電話は何だったんだろう..そんな連絡してないみたいな事言ってたけど..
「待ってたよ..星川朱音さん..」
公園に着くと、顔も知らない男の人が声をかけてきた。見たところ年は私とそこまで変わらない容姿の好青年だ。私は戸惑いながらも。
「え..えっと..お会いした事ありましたっけ?」
「いや? 今回が初めてだと思いますよ」
「そ..そうですか..今人を待っているので失礼します..」
男から距離を置くと、その男は私の目の前に来て。
「貴方を呼んだのは僕です」
「はい?」
男は言うと、ポケットから携帯を取り出して私に見せた。
「その携帯..佑樹の..」
「騙してごめんね、でも..こうするしかなかったのさ」
「そんな..! どうしてそんな事..!」
じゃあ昨日佑樹が携帯落としたって話..この人が佑樹のを奪ったって事..? 男は驚く私を見ても、顔色ひとつ変えず淡々と話を続ける。
「妹の為なんだ..悪さをするつもりはないよ」
「携帯を盗むような人にそんな事を言われて信じる人がいるとでも? 貴方何者? もしかして..佑樹に何かしようと..!」
「彼はね..未来から来たんだよ..」
この人が何を言っているのか分からない。佑樹が未来から来た? そんな話が信じられるわけがない。
「意味が分からない..冗談を言うならもっとマシな嘘をつくべきよ」
「嘘じゃないさ。君も薄々感じているんじゃない? 彼が執拗に君に絡んでいるとかさ..それは全て偶然じゃない、必然なんだよ」
執拗に絡む..確かに初めて会った時からやたらとしつこく話しかけて来たのは事実..だけど..
「朱音!!」
町中を走り回って何とか朱音を見つけた俺は名前を叫んだ。視線の先には朱音と1人の男が立っている。
「誰だお前!! 朱音に何しようとした! 朱音? 大丈夫か?」
男にそう言い放ってから朱音の無事を確かめると、朱音は少し戸惑いながら答えた。
「この人..佑樹が未来から来たとか言い出して..そんなのあり得ないよね..?」
その時、俺の頭の中は真っ白になった。俺は明らかに動揺を隠せないまま朱音に答える。
「そ..そんな訳ないじゃん..! SF映画じゃないんだから..」
「だよね..」
本当の事を言うべきなのだろうか? それともこのまま朱音を騙し続けたままズルズルと生きていくのが正しいのか? 俺はそんな葛藤を抱きながらも、この男に疑問を抱いていた。
「こんにちわ..八乙女佑樹くん..」
「あんた何者だ、どうして俺たちの事を知ってる?」
「そりゃあ知ってるさ..僕も君と同じだからね..」
こいつは何を言っているんだ? この男に見覚えなんて微塵もないぞ..?
「言ってる意味が分からない。あんたとは初対面だ」
「隠さなくても良いよ、君が未来から来てるって事は知ってんだぞ!」
こいつ..本気で未来から来たのか..? そもそも嘘つくにしても未来から来たなんてくだらない嘘はつくと思えない..けど..初対面だしこいつはおそらくキラーじゃない..こうなったら..!
「朱音..ごめん..」
「え?」
俺はボソッと朱音に言うと男に話を続けた。
「あんたの言う通りだ。俺はめちゃくちゃにされた未来を変えるために過去に来た..あんたの方こそ..どういうことなんだ?」
言うと、男は。
「やっぱり..良かった..君だったんだね..」
「あんたの知ってる事を話してくれないか? お互いに何か手掛かりが分かるかもしれない」
沈黙の間に、朱音が割って入るように話す。
「佑樹? どういうこと..?」
「黙っててごめん..俺..未来から来たんだ..」
「そんな..? あり得るの..?」
「どうして来たのかは今は言えない..でも..これは朱音にも関わってくる事なんだ..」
朱音は黙り込むと、下を俯いた呟く。
「そんな話..信じられるわけない..」
朱音がそう思うのも無理ないよな..
「これから過去に戻ってからの全てのことを話すから、信じるかどうかは朱音自身で決めてほしい..」
「....」
朱音は黙ったまま下を俯く。すると男が突然口を開いた。
「俺は斎藤鉄平..あんたと同じ、めちゃくちゃにされた未来を変える為に過去に戻ってきたんだ。だけど..残念なことに俺には何も変えられなかった..」
「何をされたんだ?」
「朝起きたら突然..妹が入院してたんだ..最初は意味が分からなかったけど、いきなり目の前に妖精が現れて、過去に戻れば妹を助けられるかもしれないと言われたんだ..けど..結局俺には変えられなかった..それから時が経って、突然また時が戻った..妹が交通事故に遭う前にね..」
そうか! 俺が過去に戻った事で、この人も戻ったって事か! 俺は男に。
「多分それは、俺が過去に戻ったからだと思う。でも今日って..!」
「そう、これから妹は交通事故に遭う事になってる..どうやらそのせいで妹は重傷を負って入院してする事になったみたいだ..妹は活発な子で..もうすぐテニスの全国大会だって控えてたんだ..それなのに....誰がそんなことをしたのかは分からないけどね..」
おそらく、キラーより前にラプラスが取り憑いていた奴の仕業だろう。ラプラスが影響を与えていたのは俺たちだけじゃなかったってわけかよ..どこまでクソなんだよ..鉄平は握り拳を作りながら。
「だから..君なら何か知っているんじゃないかと思って接触を試みたんだ..俺は一度妹を救えなかった..もう2度と失敗したくない..助けたいんだ..」
鉄平の悲しげに俯く姿を見て、俺は2人に過去に戻ってきてからの事を話す事にした。未来に来てから何が起きたのか。その全て話し終えると、男は静かに口を開く。
「君にもそんな事が..そんな状況なのに邪魔してしちゃってごめんよ..」
「いや..気にしなくていいよ..」
「何も知らないなら話はもう大丈夫だよ..ありがとう..」
鉄平はそう言ってその場を去っていった。俺は鉄平の後ろ姿を見て思わず。
「俺にも! 俺にも何か力になれることはないかな..?」
「佑樹くん..でも君にはやるべき事が..」
「同じ境遇の人を放っておくなんて..俺にはできない..それに..君の未来を変えられるなら..俺の未来を変えられる証明にだってなるし」
言うと、強張っていた鉄平の表情が少し緩んだ。そんな中、朱音がゆっくりと口を開く。
「正直2人の会話に全くついていけない..あり得ない話だし..だけど..佑樹が嘘をつくとも思えないし..どうすればいいわけ..」
「朱音..」
呟く朱音に、俺は返す言葉が見つからなかった。それから数秒沈黙が続いて、突然朱音が自分の頬を強く叩いた。
「よし..決めた! 佑樹を信じる。この話が嘘だったらその時はその時考える事にする」
「朱音..ありがとう!」
「まずはこの人を助けよ、私もできる事はする」
「さすがにそれは悪いよ」
「さっき言ってたでしょ? 未来を変えられる証明をしたいって..その未来には私も絡んでる訳でしょ? だったら私だけ蚊帳の外はやめてよ」
朱音は真っ直ぐに俺を見つめ言った。そうだ..俺の知ってる朱音はこういう子だったんだ。俺は朱音を見つめ返し。
「そうだね。ここまで来たら朱音も巻き込むよ。まずはこの人の未来を変えよう!」
俺と朱音はお互いに誓い合って鉄平の話を詳しく聞く事にした。
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