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第15回

「悪いな咲、それで? 岡田の場所分かったか?」

「ったくもう..なんで私がこんな事調べないといけないわけ?」

「俺が聞いて回ってたら怪しまれるかもしれないんだ..すまん..」


 翌日、俺は岡田の居場所を見つける為、咲に電話して情報を仕入れてもらっていた。クラスメイトから嫌われてる俺に、優しく居場所を教えてくれる奴なんていないだろうからな..それに、キラーに俺が嗅ぎ回っていることがバレれば、このチャンスが無駄になる..


「岡田だっけ? あいつよく駅前のゲーセンにいるらしいよ? 影が薄いやつだからこれくらいしか情報は掴めなかった」

「いや、十分だよ。ありがとう!」


 俺が電話を切ろうとした時、咲が突然。


「佑樹..なんか危ない事に関わろうとしてないでしょうね?」

「いや..! そんな事はないよ..!」

「詮索はしないけど..無理しないでよ..」

「ああ..ありがと」


 そして、俺は早速岡田がよく現れるというゲーセンに向かった。夏休み中だし、昼間なら多分いるだろう。でも、岡田がキラーだとして..あの時俺が追いかけてたのは誰だったんだ..? それに..自転車に乗ってた奴は岡田じゃなかった..


「親友の事は可哀想にね..それにしても..これ以上キラーをのさばらすのは危険だね..」

「そうだな..それにキラーは1人じゃない可能性もある..マジでめんどくさくなってきたぞ..」


 ゲーセンに向かう途中、俺は妖精と話をしていた。そいえば..前に妖精が何か言いかけていたよな..? あれは何だったんだ?


「妖精..そいえばお前..前何かを言いかけ..」

「佑樹..! あれって..?」


 妖精がそう言って指を差した先には、探していた岡田の姿があった。俺はすぐさま岡田の元へ駆け寄る。


「岡田!!」

「ひぇっ..! だ..誰..?!」


 俺は岡田の肩を強めに握ると、怯える岡田を睨み。


「話がある..ちょっと来い..」


 俺は岡田を裏路地に連れて行くと、激しめの口調で問いただした。


「お前なんだろ!! 朱音をつけ回して..挙句に親友を階段から突き落としたのは..!!」

「わ..悪かったよ!! こんな僕に優しく接してくれた朱音ちゃんが大好きだったんだ! 気づいたら..気になって跡をつけ回してる自分がいて..それに..圭介くんの件はわざとじゃなかったんだ..たまたまぶつかった衝撃で..彼がバランスを崩してしまったんだ..」


 岡田は下を俯きながら答える。なんだ..? この妙な違和感..俺は荒げていた声を落ち着かせ、岡田に。


「お前が過去に戻って..俺と朱音の関係をめちゃくちゃにしたんだろ..?」

「過去に戻る..? 何を言っているのか分からないよ..」


 俺が感じた妙な違和感は、本当に岡田がキラーなのかという事だ。俺に脅しをかけてまで、用意周到に陥れてきた奴が、こんな簡単に頭を下げるとは思えない..俺はそんな違和感を覚えながらも岡田に。


「集金袋を俺の鞄に入れたのも..山本を唆したのも..全部お前なんだよな..? 朱音がたい焼き好きだってことも..何で知ってんだよ..?」

「え..? 知らないよそんなの..! 僕はただ朱音ちゃんの事が気になって仕方がなかっただけだよ..たい焼きだって..佑樹くんと2人で朱音ちゃんが食べてるところを見てたから..朱音ちゃんを喜ばせようと思って入れただけだよ..!」


 そんな..てことは..俺が追いかけてたあいつがキラーだってのか..? 俺は圭介に何て言えばいいんだよ..朱音との夏祭りだって..やっと掴んだチャンスだったのに..何でこうなるんだ..。俺は岡田の肩を掴んでいた腕を離し、呟いた。


「もういい..とりあえず朱音にはもう近づくな..」

「あ..ああ..分かったよ..でも..佑樹くんにはとっくにバレてるもんかと思ってたよ..何度か邪魔をされる事があったから..」

「..え..?」


 邪魔をされる..? 自転車に乗ってたのはキラーだとして..俺が岡田と直接接触したのは今回が初めてだ..まさかこいつ..!


「そいつの事見たのか..?」

「ああ..うっすらだけど..」

「誰だった?!」


 俺は岡田の両肩を掴み問いかける。岡田は俺の勢いに圧倒されながらも小さな声で。


「しっかりは見てないから..誰とまでは分からないけど..背格好は佑樹くんとさほど変わらなかったよ..」


 それだけじゃ分からねえよ..確かに俺は小柄な方だけど..俺くらいのやつなんて男でも女でも何ら不思議じゃない..見えかけた一筋の光は、その時再び閉ざされた気がした。


「そうか..分かった..2度とこんな事するなよ..大好きな子を悲しませるな、やり方を間違えなきゃ..俺もこれ以上は何も言うつもりはない..じゃあな..」

「う..うん..」


 そして、俺は岡田と別れ、朱音の家に向かっていた。直接話をした方が、きっと朱音も安心するだろうし..それに..大事なことを伝えなきゃいけないから..




 家に着いた俺は、インターホンを鳴らして朱音を呼び出した。


「佑樹、どうだった? 連絡も無いし心配したよ..」

「ごめん朱音..だけどもう大丈夫! ストーカーは成敗したからさ!」

「ほんとに?!」


 朱音はこれまでにない笑顔で俺を見つめた。そうだ..この笑顔だけは守る事ができた..俺がこの先何もしなければ、朱音の笑顔は失わずに済むのかもしれない..


「ほんとほんと! それがさぁ、クラスメイトの岡田だったんけど、問いただしたらすぐに謝ってもうしないってさ! だから朱音はもう心配しなくてもいいよ!」

「岡田くんが..? そんな..でも..佑樹や圭介くんが無事で良かった..ほんとにありがとうね?」


 朱音はホッと息を吐く。そして、俺は唇を噛み締めながらも朱音に。


「朱音..夏祭りなんだけど..急な用事が入っちゃってさ! やっぱり行けなくなっちゃったんだ! 誘っといてごめん..!」


 これでいいんだ..俺が何もしなければ、キラーが朱音や俺の周りの人間に危害を加える事はない..もはや今の俺に、キラーを突き止める気力は無かった..


「そ..そっか..! 用事が入ったなら仕方ないよね..! 大丈夫...!」


 朱音は明らかに悲しそうに答えた。ごめん朱音..こうするしかないんだ..これ以上..誰かが傷つくのは嫌なんだ..


 それから朱音と別れた俺は家に帰っていた。帰り道、咲からメッセージが届く。メッセージ画面を開くと。


『夏祭り一緒に行こうよ! あ..もしかして朱音ちゃんと行く?』


 俺は返信した。


『いや、朱音とは行かない! いいね! 行こう!』


 咲には色々迷惑かけたしな。それに..もう朱音とは..


「本当に良いの?」

「ああ、これで良いよ..」


 姿を現した妖精に俺は答える。人を好きになるのって..こんなに難しい事なのだろうか? 好きな人と一緒に居たい..ただそれだけの事が..俺には死ぬほど遠かった..


 



 

読んでいただきありがとうございます。よろしければ評価、ブックマークお願いします。

投稿日が不定期ですが、最後まで連載は続けますので何卒宜しくお願いします! 勝手な自分をどうか温かい目で見守っていただけると幸いです!

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