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第13回

 まさか..キラーか?! 俺は声を荒げて。


「目的は何だ?! 朱音と付き合う事なのか?! それとも俺をめちゃくちゃにしたいのか?! どっちだ!」

「んー..どっちも..かな? 許せないんだよねぇ、ずっと朱音ちゃんを愛してたのは自分なのに..突然君が朱音ちゃんを奪った..ただ朱音ちゃんを手に入れるだけじゃ気が済まないんだよ」

「そんな事の為に..俺を何度も陥れようとしたのか! ふざけんなよ!!」


 俺は激しく叱責する。しかしキラーは冷静な声で。


「ふざけてんのはどっち? 何度も何度も邪魔してきて..一つ忠告しておくよ..次また邪魔するようなら、君の周りの人間にも危害を加える..最悪の場合、朱音ちゃんだって例外じゃないよ..もう手段は選ばない..」

「脅しのつもりか?」

「脅しなんて優しいものじゃないよ..命令だ。心配しなくとも、介入してこないなら君や君の周りの人間に危害は与えないからさ、それじゃあ、信じてるよ..」

「おい! まだ話は!」


 そして電話が切れる。キラーのことだ、おそらく奴は本気で周りの人間に危害を加えかねない..どうする俺..! でも、陰湿なキラーが直接に俺に絡んできたって事は、奴もかなり焦ってるはず..けどよりにもよってこのタイミングかよ..俺はすぐに妖精を呼び出した。


「妖精! いるなら出てきてくれ!」

「言われなくても出てるよ。どうやらキラーが本気出してくるみたいだね」

「どうすんだよ..もうすぐ夏祭りがあるんだぞ? 当然朱音を誘うつもりだったけど、この状況じゃ流石に無理があるよな..」


 いや、違うだろ。キラーに脅されたからと言って、朱音を祭りに誘わないのはお門違いだ。逃げ腰でキラーと向き合ってたら何も変わらないだろ! 俺は妖精に。


「いや、やっぱり誘う、守ればいい話だ。俺は逃げない」

「肝が据わってきたんじゃない? きっと佑樹なら大丈夫だよ」


 朱音を祭りに誘う事を決めた俺は、早速朱音に誘いの連絡をしようとしていた。すると突然、俺のスマホから着信音が鳴る。


「朱音から..?」


 着信の相手は朱音だ。朱音から電話がかかってきたという嬉しさの反面、俺には不安もあった。


「まさかキラーが何か..いや、俺の考えすぎか」


 俺は電話を取り。


「もしもし? どうした?」

「ごめんいきなり、相談したい事があって..いま大丈夫?」

「全然大丈夫! 何かあった?」

「最近なんだけど..誰かにつけられてる気がするの..気のせいならいいんだけど、いつも郵便ポストの中にたい焼きが入ってて..佑樹じゃないよね?」


 俺は背筋が凍るほどの悪寒を覚えた。確か朱音の大好物は親友の綾子ですら知らないって言ってたよな? それに、朱音の大好物がバレたのは一年の三学期..そうなると考えられるのはキラーだ。最悪な予感が的中してしまった俺は、冷や汗をかいた。


「もしもし? 佑樹?」

「あ..ああ! ごめん! 俺じゃないよ! そいつがどんな姿とかは見てない?」

「多分なんだけど..この前視線を感じて後ろを振り返った時微かに見えた気がするの..うちの学校の制服を着た()

が..」


 朱音の言葉が確かなら、キラーは同じ学校で性別は男..そしてたい焼きが大好物だと知っている可能性が高いのはクラスメイトになる..つまり..キラーは俺のクラスにいる! 断定はできないけど、考えうる中で1番あり得る..もしかしたらキラーの正体を突き止められるかもしれない!


「朱音! 今どこにいる?」

「家だよ」


 とりあえず俺は朱音の安全確保の為、朱音の家に向かう事にした。もしかしたら家の前で張り込んでる可能性もある。

 家に着いた俺は、インターホンを鳴らして朱音を呼び出した。


「ありがと、わざわざ来てくれて」

「全然大丈夫! それより、自分の心配をしなきゃ..電話で朱音が言ってた事がほんとなら、多分朱音をつけてるのはクラスメイトだ。何か心当たりはある?」

「そんな..これと言って無いと思うけど..でも、確実に気付いたのは最近だけど..考えてみたら入学式の次の日くらいから、誰かにつけられているような気はしたかも..」


 入学式から..という事はやっぱり、俺が集金袋を鞄に入れられた時と合致する..キラーの仕業って事はほぼ確と言っていいかもな..


「もしかしたら、既にこの近くで俺たちを監視してるかもしれない、とりあえずは何も知らないフリをしよう」

「うん、そうだね」


 朱音の身の危険もあるし、ここで下手に動くのは避けたい。まずはキラーを泳がせて様子を見る事にした俺は、遊びに来た風を装って朱音の家に入った。付き合ってからも朱音の部屋なんて入った事無いのに..まさかこんな形で入る事になるなんて..


「ごめんね..汚くて..」

「いやいや! そんな事ないよ!」


 朱音は恥ずかしそうにそう言うが、全然汚くないし、むしろ女の子って感じの部屋で普段のドライな感じとは違って可愛いとすら思っている、しかもいい匂いだ。いやいや、そんな事考えてる場合か! 今はキラーをとっ捕まえる方法を考えないと。


「まずはそうだね。とりあえず俺は朱音と別れたふりをして家を出るから、朱音はどこかに出かけるふりで外に出てほしい。少ししたら俺も朱音の跡をつけて、キラ..ストーカーを見つけるから」

「分かった」


 すぐに行動に移してしまうと、早すぎて怪しまれる可能性があると踏んだ俺と朱音は少し家の中で待機してから作戦を決行する事にした。時間まで待機していると朱音が。


「なんか、佑樹には迷惑かけてばっかだね..」

「朱音が気にする事無いって! むしろ、俺を頼ってくれて嬉しいよ..」

「もしかして佑樹ってさ..」


 この後朱音が言おうとしているのは何となく予想がつく。確かに、こんだけアピールしてたら勘付かれるよな。


「もしかして佑樹ってさ..実はすんごい優しいんじゃない?」

「え?」


 予想と違う言葉が返ってきた。朱音って意外と鈍感なのか? でも確かに付き合ってた時も、たまにそう感じる事があったような気がする..俺は苦笑いで答えた。


「いやぁ..誰にでも優しいって訳じゃないよ?」

「そうなの? まさか私にだけとか..?」

「うん..まあ..」


 俺は照れ臭そうにはにかんだ。すると朱音は笑みをこぼして。


「まさかそんな! 私なんて周りからよく冷徹とか鉄の女とか言われてるし..気遣わなくてもいいよ!」

「そんな事無いって! むしろそこが良いっていうか! ほら、たまに笑ったりするじゃん? そのギャップたまんないっつーかさ! なんて例えたら良いのかな....あ..ごめん..」


 しまった! つい本音を言ってしまった! 何してんだよ..! 絶対ひかれた..そう思っていると朱音が。


「あはは! やっぱり佑樹って面白いね、でも、そう言ってくれる人がいるのって..嬉しい..」


 朱音はそう言って女神のような笑みを見せた。数秒見惚れていた俺は、その時大事な事を思い出した。


「朱音、も..もうすぐ夏祭りじゃん? 朱音がいいなら..一緒に..行かない..?」


 そうだ、俺は朱音を誘うって決めたんだ。この絶好のチャンスを逃すとこだった! だが問題は朱音の返事だ。俺は深妙な面持ちで朱音を見つめる。すると朱音は答えた。


「うん、私で良かったら..」

「よし! じゃあ早いとこストーカーを撃退しよう!」


 俺は小さくガッツポーズをした。でもその前に..キラーとの決着をつけないと..! 俺の握り拳は、大きな決意の表れでもあった。



 



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