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貧乏騎士に嫁入りしたはずが!  作者: 宮前葵
一章 騎士と猿令嬢
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一六話 お互いを理解するために  セルミアーネ視点

 侯爵領から帝都まで10日掛かった。騎馬で、急がなければこんなものだ。来るときの予定では馬に二人乗りで帰って来るつもりだったので、もっと掛かると予想していたくらいだ。ラルフシーヌが自分の馬を持っていたので早まったのである。


 私は道中、ラルフシーヌと交流する事を最優先とした。ラルフシーヌも私もあまりにもお互いを知らな過ぎる。これでいきなり結婚生活を始めたら衝突が起こるだろう。普通の貴族の夫婦なら相当なレベルまではお互い我慢するだろうが、夫婦喧嘩が発生した途端ラルフシーヌの行動力生活力ならあっさり離縁状を叩きつけて出て行きかねない。


 ラルフシーヌは出発して二日目ぐらいまではカリエンテ領の方を寂しげに見るなどしていたが、二日目の夕方に森の中に入ると俄然生き生きとしだした。本当に森が好きなようだ。私は道中の森でどんな獲物が獲れるのか、行きに調べておいた。ラルフシーヌが狩りをやりたがるかもしれないと思ったからである。案の定、聞いた事が無い獲物の名前を聞いたラルフシーヌは表情を輝かせた。


 ならばと私はこの日は森を抜けて次の街まで行かず、この森の中で野営をする事にした。行きには7日全ての夜を野営したくらいだから、道具は持って来ている。花嫁を野宿させるなんてどうなのか?と思ったが、彼女は逆に喜んだ。


 まず、野営箇所を決める。この場合、街道から見えるような所で野営すると追いはぎや山賊に遭い易いので少し森の中に分け入り、出来れば水が確保出来る場所を探す。適当な場所があったので、馬を繋ぎ、荷物を置く。水を革袋に汲んで野営箇所まで運んで、とりあえず準備は完了だ。一応、カリエンテ侯爵領を出る時に保存食は多少は持って来ているが、ラルフシーヌの表情からしてそんなものを食べる気は毛頭無さそうだった。


 そもそも旅装なので二人とも動き易い服だ。ラルフシーヌも下はズボンである。マントやその他の装備品を外し、私もラルフシーヌも上着は厚手のチェニックにベルトを締めただけの軽装になる。ラルフシーヌは愛用の弓矢を持って来ており、ニコニコしながら点検していた。


「鳥が良い?それとも獣?あんまり大きなのはいらないわよね?」


「そうだね。持って帰れなくても困るからね」


 私達は並んで森の奥へ踏み込んだ。森のでこぼこした急斜面も何でもないかのようにひょいひょいとラルフシーヌは上って行く。私も身のこなしは軽い方だが、これは敵わない。それどころか一挙動で木の上に登ってしまい、枝から枝へ飛び回って獲物を探し始めた。まるで猿だ。


「いた」


 ラルフシーヌの声が聞こえたかと思うと、木の上からラルフシーヌの気配がいきなり消失した。私は驚いたが、獲物に気が付かれないように気配を消したのだろうと推測する。私も出来得る限り気配を殺す。


 そうやってジッと前方を注視していると、人の膝くらいの高さの黒い影が森の下草をかき分けながら歩いてるのが見えた。確か、あれはオオアナグマだな。と、私が見て取ったその瞬間、ピュウと風切り音がして矢が放たれ、過たずオオアナグマの首に命中してそのまま地面に縫い留めた。オオアナグマは即死はせず、バタバタと暴れたが矢で縫い留めているので動けない。そこへ真上からラルフシーヌが降って来て、アナグマの首根っこを掴むと、ナイフでピッと首に切れ目を入れて後ろ足を持ち、ぶら下げた。


「よし」


 流れるような手順で美しい。私は感嘆の想いに包まれた。


「凄いな」


「そう?普通よ。でも、早く仕留められて良かったわね」


 血抜きをして皮をはぎ、解体するまでもあっという間である。一切動きに無駄が無い。ほとんど手も汚さない。


「本当は少し置いた方がおいしいんだけどね」


 と言いながら肉だけを綺麗に剥がして、骨や皮は地面を掘って埋める。そして野営地に帰ると、肉に串を突き刺し、焚火を熾し焼き始める。非常に手馴れている。騎士として訓練で野営の練習もさせられている私も全然敵わない手際の良さだ。聞けば、数日にわたる泊まり掛けの狩りは禁止されていたが、朝から晩まで山にこもるからその過程で森の中で自給自足するのは当たり前だったらしい。なんなら山の中にも住めると平然と言い切る侯爵令嬢はこの世広しと言えどラルフシーヌ一人では無いか?


 当然だが水浴びも顔を洗う事すら出来ないが、水場で手を洗っただけでラルフシーヌは平然としていた。トイレも「ちょっと失礼」と言ってその辺で済ませていた。なんというかたくまし過ぎて笑いが出てくるレベルだ。私は彼女を最初から普通の貴族女性だとは思っていなかったが、この時から貴族女性だと、いや、一般的な女性であると考えるのを止めた。やはり彼女は特別だ。唯一無二だ。


 ただ、もう冬も近付き、夜は冷えるので小さな天幕を張って中に二人で寝ようと提案した時には流石に難色を示された。野生動物への警戒がどうのと言っていたが、その実私の事を警戒しているのは明白だった。私が当たり前だが結婚式が終わるまで純潔は守ると誓い、結局寒さに負けた彼女は警戒しつつも同じ天幕で身を寄せ合って寝てくれた。実際、私はこの旅の最中に彼女に手を出す気は毛頭無かった。最初は寝ながらも警戒しているのが分かる位だったが、旅の後半には信頼してくれたからか熟睡してくれていた。


 街道を進みながら色んな話をした。ラルフシーヌに里心を出させないために彼女の思い出話はあまりさせず、これからの結婚式や生活の計画を話した。結婚式が帰った一週間後に行われると聞いて彼女は大分驚いていた。結婚式を間髪入れずにやることにしたのは、気が変わった侯爵に婚約破棄されないためだった。実際、この策は功を奏し、帰還後に上位貴族からの求婚があったものの結婚式に近過ぎたために中止出来ず、何とか無事に私はラルフシーヌと結婚できたのである。


 私は母の事は少し話したが、流石に父の事は口に出せなかった。頑なに父の事を言わない私にラルフシーヌは不信感を抱いたようだったが、彼女はそういう時の割り切りがはっきりしていて、話したくなければ構わないと強引に追及してこなかった。この時私は「助かった」と思っていたが、後で考えれば追及されて話さざるを得なくなっていた方が後々楽だったかもしれない。


 10日の内半分は野営して半分は宿に泊まった。ラルフシーヌは全部野営でも良さそうな顔をしていたが、流石にボロボロの状態で侯爵邸に連れ帰る訳には行かない。野営を繰り返したおかげで予算は助かったので、宿に泊まる時には少し良い宿に泊まれた。


 ラルフシーヌは森が好きで狩りが好きだったので、来た事が無い森に入るとソワソワして大変だった。そうした場合、私は「ちょっと行ってきて良いよ」と言って彼女を一人で狩りに送り出した。婚約者を一人にするのはまぁ、心配だが、彼女なら大丈夫だろう。それにあれでは私は足手纏いになる。


 彼女もわきまえていて、小一時間狩りをしたらすぐに引き揚げて来た。だが、獲物が無い事は絶対に無く、私は道中珍しい動物の肉を日替わりで食べた。


 5日目の朝、その日は宿に泊まったので、私たちは少しさっぱりした格好で厩から馬を出した。ふと、何者かに見られている気配がした。素知らぬ顔で馬に乗り、町を出て街道を進む。気配が消えない。・・・これは、あれかな?


 ラルフシーヌを見ると不機嫌そうな顔をしている。ああ、やっぱり気が付いたようだ。流石である。


 そのまま素知らぬ顔で進み、また森に入る。ゆるい山道を登っていても追跡してくる気配は離れて付いてきていた。襲ってくる気配は無いな。


「狩りがしたかったのにな」


 とラルフシーヌはブスッと呟いた。そうだね。流石に追跡者がいる状態でラルフシーヌを一人で狩りには出せない。


「人は?」


 人を狩れるか?という意味である。


「当然」


 ラルフシーヌは歯を見せてニッと笑った。


 夕方近くまで森の中の街道を進み、少し街道を外れて野営の準備をする。携帯食料だけではなく、数日前に仕留めた獲物の肉も塩をたっぷり塗して保存してあるので今日獲物を獲らなくても問題は無い。ラルフシーヌの機嫌が悪くなるだけだ。


 食事をして、私たちは焚き火を挟んで毛布に包まり、横になった。


 しばらく静かな時間が過ぎる。焚き火も程無く消えてしまい、少し冷えてきた。すると、気配を殺した男たち五人が、足音を忍ばせて現れた。茂みを揺らす音を立てないのだからそこそこの手練れである。一人がこちらへ。残りはラルフシーヌの方へ向かう。


 男達は大きな袋を持っていた。ああ、誘拐か。私は任務で山賊狩りをやった時に教えられたので、山賊の事には少し詳しい。旅する女子供を誘拐して売り飛ばすのは山賊の重要な収入源である。ラルフシーヌは宿で身体や髪を洗って小綺麗になって目を付けられたのだろう。何しろあの美貌だ。


 どうやら、ラルフシーヌだけ攫って逃げるつもりらしく、私に襲い掛かって来る様子は無い。賢明な判断だ。ラルフシーヌがか弱い乙女であったなら。だが。


 男達は袋を広げてラルフシーヌにそっと被せた。そのまま拘束して担ぎ上げ、一目散に逃げるつもりだろう。私が目覚めたら一人が牽制して他を逃す。手慣れた誘拐の手口だが、今日はちょっと相手が悪かったな。


 袋が被さる瞬間、ラルフシーヌは目にも止まらぬ速度で飛び出すと、一人の鳩尾に肘打ちを叩き込んだ。続けてその隣の賊に膝蹴り。続けてその隣の賊の首筋に手刀。あまりの早業で私の目でもギリギリ追えるかどうかという速度だ。


 私も負けてはいられない。私も地面を蹴って私の方に向かってきた賊にアッパーカットを叩き込む。手加減しなかったのでそれなりの大男だったが体が宙に浮き、落ちた時には意識がもう無い。


 最後の一人はラルフシーヌの蹴りを回避して飛び退くと、腰から剣を抜いた。


「ちっ!」


 賊は舌打ちすると、私達を剣を振って牽制し、ジリジリ後ろに下がって行く。仲間を見捨てて逃げる気である。賢明な判断だ。狩りを邪魔されてラルフシーヌが怒っていなければ逃げられたかもしれない。


 ラルフシーヌは無造作に前進した。間合いに入った瞬間、賊が剣を突いてくる。ラルフシーヌはその剣のギリギリを見切って剣の腹を手の平で払って軌道を変えると、そのまま踏み込んで賊の顎にもの凄いパンチをくれた。


 大男で、しかもこの賊集団のボスだったようなのだが。その一撃でのけぞり、脳が揺らされて膝が落ちる。ラルフシーヌはそのまま賊の胸ぐらを掴むと、見事な背負い投げを放った。垂直落下で頭を地面に突き刺すエグい奴だ。


 賊を全員意識不明にするまでものの数分。しかも私が一人やっつける間にラルフシーヌは四人だ。私の嫁さん恐るべし。


「止めは?どうする?」


 顔色も変えずに言う訳である。ラルフシーヌ曰く「動物も人も命は同じ。差別しない」との事。


「いや、止めておこう。ここに縛って捨てておいて、明日次の村で通報しよう」


「そんなに置いておいたら熊に食われちゃうかもよ?」


「それならそれでも良いさ。山賊はどうせ縛首だ」


 ラルフシーヌは少し森で蔓草を探してくると、それで賊の全員を器用に縛り上げてしまった。騎士でそういう訓練をしている私も手伝う。手を後ろ手に縛り。それを足にも括る。口が使えないように猿ぐつわもする。


 そうしてしっかり捕らえた後、私たちは少し移動して天幕を張り、今度は本当に寝た。


 翌日、街道を進んでいるうちに街道見回りの騎士がいたので賊の居場所を通報した。一件落着である。ちなみに、この件は私の手柄となり、報奨金が出た。実際はほとんどラルフシーヌの手柄だった訳だが。


 そのようなハプニングもくぐり抜けて私達はこの旅で相互理解を深めていった。私はラルフシーヌの事は何でも受け入れるつもりだったので、旅の間は彼女のやりたいようにさせた。どうやらラルフシーヌはそれがお気に召したらしい。どんどん遠慮が無くなっていき、態度も自然になった。


 そうしてようやく帝都に到着したのである。




 帝都についたらすぐに結婚式で、私は大慌てで準備を進めた。基本的には下位貴族の格に合わせた結婚式になったが、流石に侯爵家一家を招くのに恥ずかしい式ではまずいので、準最高司祭に来てもらい、神殿にも多額の寄付をして飾りや花は新調してもらった。披露宴は侯爵邸で行うのだが、花や飾りは私が届けさせた。


 正直、求婚の費用とこの結婚式と披露宴の費用で私が母から継いだ遺産はほぼ使い果たしてしまった。しかし後悔は無い。ラルフシーヌと結婚するためには些細なことだ。だが、私は忘れていた。結婚して彼女が私の家に入った後は、私の家の予算はラルフシーヌの家の予算にもなるという事を。事情を知ってラルフシーヌが呆れ返ったのは言うまでもない。


 結婚式の私の衣装には少し迷った。騎士の礼服はカリエンテ侯爵領での結婚式もどきで着てしまったからである。新鮮味が無い。クローゼットを見ながら考え込む私の目に、青い騎士礼服が目に入った。


 これは先日「とっておけ」と皇太子殿下に押し付けられたもので、どうやら皇族が軍に所属している場合に儀典で着るものらしかった。当然、そんな物を着る気は無かったのだが、流石に皇族用の礼服だけあって生地も豪華だし、美しい。鮮やかな青は白い花嫁衣装に映えそうだ。


 私は考え込み、結局それを着ることにした。調べた限りでは三十年前くらいに現皇帝陛下の叔父にあたる方が着ていた事があるらしいが、そんなに昔なら誰も知るまいと思ったのだ。色で疑問に思われたら、仕立てたのだと言い訳しよう。「皇帝の青」の使用を禁ずる法は無かったはずだ。


 実際、侯爵家の花嫁姿のラルフシーヌは豪華絢爛、目も眩むほど美しく華麗だった。普通の礼服では釣り合わ無かっただろう。だが、やはり田舎の宴で見た素朴な花嫁衣装の方がラルフシーヌには似合ったな。表情のせいかも知れないが。


 そうして私達は結婚式を挙げて夫婦になった。私は感動のあまり誓いのキスを繰り返しして、ラルフシーヌに足を踏まれた。


 侯爵邸での披露宴では兎に角ラルフシーヌの姉君達から何度も「ラルフシーヌをよろしくね」と頼まれた。求婚に通った時には良く知らないのよね、という扱いだった筈だが。聞けば、結婚式の準備をしている内に少し仲良くなったのと、余りにも作法がなっていないので嫁に出して大丈夫かしらと不安になったものらしい。不作法に怒った私に追い出されるのではないかと心配していた。私は勿論そんな事は百も承知で結婚するのだと言って姉君達を安心させた。


 披露宴ではラルフシーヌは三回もお色直しをさせられ、キラキラしい貴族に囲まれ、窮屈で堅苦しくて迂遠な社交を強いられた挙句、ろくすっぽ食事も出来なかった事もあり、どんどん顔が能面のようになってしまったが、お披露目の時には脱走すると言っていた彼女にしては頑張っていた。「良く我慢しているね」と言うとラルフシーヌは意外な事を言った。


「嫁としては夫に恥をかかせられないじゃない」


 私はラルフシーヌがそんな事を気にするとは思わなくて驚いたが、彼女は必死に微笑み、懸命に挨拶をし、頑張ってダンスをこなしていた。私はラルフシーヌの新たな一面を知った気分だった。


 ただし、披露宴が終わり馬車に乗り込むと、ラルフシーヌはデロんと座席に俯して伸びてしまった。相当無理をしたに違い無い。私は申し訳無い気分になった。私のために頑張ってくれたのだから。


 だが、大変申し訳無いが、お疲れの所申し訳無いが、今日は新婚初夜なのである。旅の道中、ずっと我慢していたのである。ちょっとこれ以上は待てない。私は彼女を抱き上げると一目散に寝室に向かい、新品のベッド、新品のシーツの上に彼女を横たえた。彼女は動揺していて、どうにか逃げられないか考えているようだった。長旅を同行して毎日間近で接していたからそれくらいは分かるようになっている。


 そして、そういう彼女を逃さないためには何を言えば良いか、私はもう知っていたのである。カリエンテ侯爵領での野次に感謝だ。


「怖いのかい?」


 そう言えばラルフシーヌはどう反応するかなど言うまでも無い事だろう。




 新婚生活が始まったわけだが、私は最初からラルフシーヌを縛るつもりは毛頭無かった。


 自由にしてもらえればそれで良い。狩りに行きたいなら行っても良いし、帝都のどこに行こうと構わない。毎日私の所に帰ってきてくれれば。


 そんな心持ちでいたのだが、その私でも、結婚の為に金欠に陥った家計を助けるためにプロの狩人になってしまったのには驚いた。まだまだ彼女への理解が足りないな、と思い知らされた。


 彼女はそして流石に一流の狩人であり、キツネの毛皮が高く売れると判断するや、そればかり狩って来て、持ち帰って毛皮にしてはかなりの金額で売り飛ばしていた。何度か狩人協会に同行した事があるのだが、協会の人間でもそんなに簡単には捕れないキツネだそうで、どうやってそんなに捕って来れるのか不思議がっていた。ラルフシーヌに言わせれば簡単な話で、誰よりも縦横無尽に森を探し回っているだけだとの事。


 屋敷の庭に作業小屋を作り、革なめしや毛皮造り、薬草を煮たり干したりしているのを見ればとてもここが貴族の屋敷には見えまい。まして貴族夫人には。しかし毎日毎日ラルフシーヌは実に楽しそうで、私としてはそれ以上望む事は無い。


 ただ、面白いのは、ラルフシーヌは家事仕事を侍女任せにしなかった事だった。物凄く早起きして屋敷の掃除や炊事洗濯を済ましてから私と朝食を摂ってから狩りに行き、帰って来てから夕食の炊事を済ませて私と晩餐を食べるのである。せっかくケーメラがいるのだから任せれば良いのに?と思ったのだが「家事は奥さんの仕事だと思っているからやらないと落ち着かない」との事。


 それどころか悪天候の時には部屋で鼻歌を歌いつつ裁縫仕事をして、私の普段着まで縫ってしまうのだ。何というか色々有能な奥さんである。そして無茶苦茶に働き者だ。いつの間にか庭の手入れもしていたらしく、春になったら庭が花だらけになっていてびっくりしたものだ。


 そんな風に楽しく新婚生活を始めていた私達だったが、結婚一ヶ月くらい経った頃、一つ頭の痛い出来事が起こった。


 父からの呼び出しである。



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