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転生後の世界はヤンキー漫画の法則に支配されていた  作者: カブキマン
中学編

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2012Spark⑪

1.俺が引導を渡す


 翌日。金銀コンビの進言により会議を開くこととなった。

 対逆十字軍のために結成され、討伐後も解散こそしなかったが塵狼は実質開店休業状態だった。

 そもそも普通に友人関係なのだ。円滑な行動のためにチームを結成しただけで普段は看板なんて必要ないからな。

 とは言え今回の件は塵狼として動くべきだと金銀が言うので総長の俺から召集という形を取ることになった。

 場所はタカミナの秘密基地で時間は夜九時。全員の予定を合わせたら夜になってしまったのだ。


「……――というのが昨日の詳しい経緯だ」


 説明を終える頃には皆の顔もすっかり険しいものになっていた。

 悪童七人隊への失望。高校生のくせに俺らを巻き込むなやという軽蔑。一口では語れない感情が窺える。


「……まさか悪童七人隊がそんなことになっていたとはな」


 トモが苦い顔で呟く。

 前にあんな話をした手前、悪童七人隊の変容に気付けなかったことを気にしているのだろう。


「トモが気にするこっちゃねえだろ」


 タカミナの言う通りだ。

 そもそもからして中学生と高校生で世代が違う上にここはヤンキー漫画の法則が支配する世界なのだ。

 不良同士の小競り合いなんて日常茶飯事だし、ギリギリまで水面下で行動してた奴らを察知しろという方が無茶だろう。


「そもそも当事者の大我さんと龍也さんも最近まで知らなかったみたいだしね」


 そんな手合いの情報を得ようと思えば的を絞って情報を探らなきゃ不可能だろう。

 そして俺らには悪童七人隊を探る理由なんてなかったのだから不可抗力だ。


「それよか、まず前提を確認しておきたい。どうする?」


 柚の問いかけに真っ先に反応したのはタカミナだった。


「ニコの敵は俺の敵だ。連中が仕掛けて来るんなら徹底的にやってやんよ」

「タカミナに賛成。喧嘩は弱いけどそれ以外のとこでトモと一緒に頑張るよ」

「ああ、全霊を尽くそう」


 ヒガチュートリオの言葉にフッと笑い柚は梅津に視線を移した。


「……くだらねえ友達ゴッコに興味はねえが、花咲がクソくだらねえ奴にやられんのは癪だ。やるんなら付き合ってやるよ」

「んもう、梅ちゃんは素直やないわぁ」

「うるせえ! テメェはどうすんだ!? あぁ!?」

「そら戦うよ。笑顔くんはボクの友達やし、悪童七人隊のやり口も気に入らんからな。金銀コンビはどないするんで?」

「「戦わないなんて選択肢はハナからありゃしねえよ」」


 う、ライトサイドの輝きが……! ってのはともかくとしてだ。

 ホント、頼りになる仲間達だこと。俺の対人運も捨てたもんじゃねえな。


「これが俺らの総意だ。ニコ、お前はどうする……なんて聞くまでもねえか」

「うん。俺が連中にやられてあげる理由なんかないからね。皆には迷惑かけちゃうけど……」

「水臭えことは言いっこなしだ。それよか具体的な話に入ろうぜ」

「そうだな。ニコ、これからどう動くつもりなんだ?」

「どう、って言われてもね。現段階じゃ何も言えないかな」


 これが俺達だけの喧嘩なら好きに動けば良いけどそうじゃない。


「……連合が結成されると?」

「じゃなきゃわざわざ話し合いの場を設けようなんてことにはならないでしょ」


 真っ当な理屈で考えるならそれ以外にはあり得ないしメタ的にもそう。

 この流れで連合が結成される方が物語的に盛り上がるもん。ここで王道を外しても意味はないだろう。


「んー、せやけどそう上手くいくかなぁ?」

「矢島の言う通りだ。不利な状況でも中指おっ立ててるような連中だからな。相当、我の強い奴らだろうぜ」


 矢島と梅津の言わんとすることも分かる。

 しかし、だからこそだ。そんな連中が一丸となって巨人に立ち向かうから燃えるんだ。

 何やかんや上手くいくのは間違いないと思う。とは言えそんなアホな理由を馬鹿正直に口にするわけにもいかん。


「そこは俺の考えることじゃないし。ほら、中学生だもん。けど何だかんだまとまるんじゃないかな?」


 大我さんと龍也さんも居るし、と続ける。

 あの二人もかなり気合入った人らだろうけど協調性という面では信が置ける。


「「「「「あー……」」」」」


 五人が揃って金銀コンビを見る。二人はさっと目を逸らした。


「ただまあ、そういうの抜きで個人的な希望を言わせてもらうなら」

「なら?」

「三代目悪童七人隊の頭とは俺がやらせて欲しいかな」


 全員が目を丸くしている。まあ、当然である。

 普段は消極的な俺がこんな発言をするのはそりゃ意外だろうて。

 ジョンの時もそうっちゃそうだが、あれはパンピーにも被害が出てたからな。目障りだからさっさと潰そうとなっても納得は出来る。

 だが今回は違う。狙われる可能性があるという段階でここまで俺がやる気を見せるとは思わんだろう。


「……何かあったのか?」


 俺は無言で傍らに置いてあった紙袋から“それ”を取り出し皆に見せ付ける。


「おま、それ……!」


 悪童七人隊の特攻服に全員の視線が釘付けになった。


「しかもこれ、初代総長って……え、どゆこと!?」

「前に言ったでしょ? カガチで元悪童七人隊のお兄さん達と仲良くなったって」

「い、言ってたけど……そ、総長だったのかよ!? あの話しぶりだとそうは思わんでしょ!!」


 まあぼかしてたからな。


「アキトさんも晴二さんも、本当に楽しそうに話をしてくれたんだ。

あの人達にとって悪童七人隊の名前と共に駆け抜けた青春は掛け替えのない宝なんだろう」


 先ほどまでの慌てようは鳴りを潜め、皆は黙って俺の言葉に耳を傾けてくれている。


「自由と誇りのために血を流した輝ける日々がこんな形で穢されるのは忍びない」


 だから、と少し強めに言葉を区切る。


「俺が引導を渡す」


 特攻服をやるよと言われた時、俺は言った。大切な思い出の品を会ったばかりの俺なんかに渡して良いのかと。


『大切なものは何時だって“胸の中(ここ)”にある』


 アキトさんは笑っていた。


『それに俺達はもう、次のステージに進んだからな。だったらこれは後に続く誰かに託すのが正解だ』


 自由の象徴。どんな理不尽にも負けず、最後の最後まで戦い抜くという決意の証。

 かつてその道を通った先達として、後に続く者へのせめてものエールだとアキトさんは言う。


『特にニコくんは色々苦労しそうだからな。ま、邪魔なら捨ててくれりゃ良いよ』

『…………いえ、大切にします』

『アッハ♪ ありがとな』


 好んで首を突っ込むつもりはなかった。

 だが巻き込まれてしまった以上は、俺がやるべきだと思ったことをやり通したい。


「それが数奇な縁でこれを託された者として俺が果たすべき責任だと思うんだ」

「……なるほど、よーく分かった」

「そんなら俺らはダチとしてニコちゃんを全力で援護させてもらう」

「だな」

「ん、ありがと」


 しかしどれほどのもんかね? 三代目総長の実力は。


(ジョンより強いってのは分かるが)


 これは何も新ボスが前エピのボスより弱いわけねーだろとかメタな理由ではない。

 序盤の敵が実は……みたいなのもわりとあるしな。

 それはさておきジョンより強いだろうと確信しているのはもっと現実的な理由だ。

 これは俺の推測だが二人は一度やり合って、その上で三代目総長有利で喧嘩をお流れにしていると思う。

 何故そう考えたのかって? 簡単だ。


(あのクソほど傲慢なジョンが木っ端グループに金をばら撒くわけがない)


 最近になるまでずっと水面下で行動を続けていたのが三代目悪童七人隊だ。

 目立った動きはしていない以上、ジョンは悪童七人隊を認識していたかすら怪しい。

 なのに繋がりがあったってことは悪童七人隊側――恐らくはトップ二人からアクションがあったんだろう。


(逆十字軍の謎の黒幕を暴き、直接乗り込んで力を示したって感じかな?)


 そこでタイマンを張りジョンは三代目総長に勝てないと悟ったのだと思う。

 だが負けてはいない。恐らく悪童七人隊側が引き分けにしようとでも提案したのだろう。

 そうすることでジョンの顔を立てると同時に自分達にはこれほど余裕があると見せ付けた。


(その結果が資金提供。ジョンは金で安全を買ったんだ)


 表向きは対等な関係だったんだろう。だがどちらが上でどちらが下かは当事者達も理解していたはずだ。

 多分だが、ジョン自身も裏で対悪童七人隊への備えをしていたのかもな。

 まあ俺らに目ぇつけられて全部ご破算になったわけだが。


(……三代目総長とタイマン張るとなれば、これまでで一番キツイ展開になりそうだ)


 バフは乗っかるだろう。悪童七人隊初代総長の特攻服なんてユニーク装備もあるしステもマシマシよ。

 だがそれはこっちだけの話ではない。三代目の方にもバフが乗るはずだ。

 悪役ではあるがその動機、根幹にあるものは愛だ。

 チームを愛するがゆえに道を外れてしまった男がだよ? あっさりやられるわけないじゃん。

 むしろアホほど強いぐらいにしないと物語が盛り上がらん。


(この世界、バフデバフや補正があったりはするけど結末は自分次第だしなぁ……)


 仮にここで俺が敗れたとしてもだ。物語は破綻しない。

 その時は主要人物が俺から別の誰かに代わり新しい形で物語が続くだろう。

 ま、俺も負けるつもりはさらさらないがな。主人公以外に負けるってことはキャラの格が落ちるってことだもん。

 そうなりゃ一山幾らのキャラとして雑に処理されたりすることだって……おお、怖っ。

 え、タカミナに負けただろって? あれは良いんだよ。あれは良い形での敗北だからキャラとしての格は落ちない。


「にしても……良いなぁ」


 テツの声で我に返る。テーブルの上に乗せられた特攻服を見つめるその目はキラキラと輝いていた。


「……えっちゃんさぁ。ずるい……ずるくない?」

「……曰くつきのバイクに伝説の男から貰った特攻服とかアイテムが充実し過ぎでしょ」

「そう言われてもなぁ」


 三代目はああなってしまったが、じゃあ初代への畏敬が消えたかと言えばそうではない。

 あの日、トモが語ってくれた際に抱いた憧憬や尊敬の念は未だ深く根付いている。

 だからこそアキトさんから貰った特攻服が羨ましいのだろう。あの梅津ですらチラチラ見てっし。


「ってかさ! これを期に俺らも特攻服作ろうよ!!」

「……いや、塵狼は別に族ってわけじゃないでしょ?」


 抗争を進める上で看板を掲げる必要があったから掲げただけだし。


「ニコちんノリわる~い!」

「そうだぜニコ、良い機会じゃねえかよ。つか俺が欲しい」

「俺も俺も」

「ビッ! とイカシタのが良いよなぁ」

「でもどないします? 役職、総長以外空席なんやけど」

「……そういや特に決めてなかったな」


 俺が総長になったのだって意見が割れた時のためだしね。

 普段の生活ではむしろ皆に引っ張ってもらってる側だし、何もなけりゃマジでお飾りだよ俺。


「じゃあ決めるかって言いたいとこだが……それはそれで揉めそうだなぁ」

「だべだべ。副総長とか二番目に偉いってことになっちまうからな」

「四天王四人が一律に幹部、俺達三人が平ってことで良いだろう。実際そうだしな」

「もっと人数おったら何番隊隊長とか出来たんやけどね~」

「いや変に優劣つけるのは良くねえしニコ以外は一律幹部で良いだろ」

「「だべだべ」」


 話がずれて来てるので修正しよう。


「まあ皆でお金を出し合って特攻服作るってんなら反対はしないよ」


 ただデザインとかは全部、皆に任せるけどな。


「それよりもさ。皆に相談したいことがあるんだけど」

「ほう、ニコちゃんが相談とな? よかばってん。北区の母と呼ばれたこの俺に何でも言ってみな」


 範囲狭ッ。


「南区のグレートマザーが聞いて進ぜよう」

「東区のゴッドファーザーと呼ばれた俺に任せな」


 何このノリ……タカミナに至っては何かちげーだろそれ。

 いやまあ、そこはどうでも良いか。


「……その、会合の待ち合わせ場所についてなんだけど」


 お化けボウリング場。七十年代末期のブームであちこちにボウリング場が乱立した時期に建てられたものだ。

 件のボウリング場は県境の山の方にあるんだが立地のわりにこれで中々結構保った方で平成初頭までは営業していたらしい。

 結局最後は経営不振で閉鎖したんだが……分かるだろ? お化けなんて冠がついてるんだからさ。そう、曰くつきなんだよあそこ。

 取り壊そうとした業者が不可解な事故に見舞われたり、土地を買った人が急死したりとかで今も手付かずで残っているのだ。

 ついでに言うとこの夏に行われるはずだった肝試しスポットの一つとして選ばれていた場所でもある。


「「「「「「「……」」」」」」」

「正直、その、行きたくないっていうか」

「「「「「「「……」」」」」」」

「行くとしても一人はちょっと。いや大我さんや龍也さんも一緒なんだけどさ」


 知らない人より気心の知れた奴が傍に居て欲しいっていうの?


「一人で来いとは言われてるけど俺は中学生じゃん?」


 だったら一人ぐらい同行者つけても良いと思うんだ。


「だから誰か」

「「「「「「「――――ファイト!!」」」」」」」


 コイツら最低なんだ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ルシファーズハンマー跨って不倶戴天仕様爆音小僧特攻服を思い出す…
[一言] 蹴鞠を持ってアッセンブル!!
[良い点] 話の全てが好きです
感想一覧
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