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転生後の世界はヤンキー漫画の法則に支配されていた  作者: カブキマン
高校編

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142/151

M八七②

闇堕ち経緯については後々本編で語られますが一つだけ

タカミナ達との関わりがあったからニコくんはギリギリで踏み止まれたので出会いは決して無駄じゃないです。

1.ま、精々気をつけろや


「くぁ」


 陽福 春風(ひさき はるか)は欠伸を噛み殺しながら通学路を歩いていた。

 三日前に引っ越して来たばかりの春風は荷物の整理や生活必需品の購入などで忙しかった。

 なのでまだ地理もロクに把握出来ておらず少し早めに家を出たのだが眠くて眠くてしょうがない。


「あー!!」

「あん?」


 眠気覚ましにガムでも買おうかと思ったその時だ。大声が響いた。

 何だと反対車線の歩道に目をやると、何となくどこかで見た気がある癖毛の小柄な少年がこちらを見ていた。

 誰だと首を傾げる春風に少年が車道を渡ってこちらにやって来る。


「君、あの時の! あの、俺……ごめん! 俺のせいで!!」


 要領を得ない発言。

 面倒なのに絡まれたと思いつつも春風は少年を落ち着かせ事情を聞く。

 そして思い出す。


「あー……? いや待てそのいんも――天パは確か……」

「陰毛? 今陰毛って言いかけた?」

「うるせえな。で、天パ。俺に何か用かよ」

「陰毛よりはマシだけど……ってか俺には小林 犬太(こばやし けんた)って立派な名前があるんだからちゃんと呼んでよ!!」

「今の今まで名乗らなかったくせに無茶言うなや」

「う……それは……ご、ごめん。えっと、君の名前を教えてもらっても良いかな?」


 おどおどしながら聞いて来る犬太に春風は溜息交じりに名乗り返した。


「陽福くんか……陽福くん、本当にごめん。巻き込んじゃって」

「巻き込むも何もあっちが勝手に絡んで来ただけだろ」


 電車内で喧しいから少し注意しただけ。

 だってのにウザ絡みして来るのだからマナーも糞もねえと春風は鼻で笑う。


「ちょっと時間を無駄にはしたが、それだけだ」


 便所に連れ込まれたがあんなスライム以下の雑魚にやられるほど間抜けじゃない。

 ちゃっちゃと片付けて家に帰ったし、晩飯の用意をする頃にはもう殆ど忘れていた。

 今日だって言われるまで忘れていたぐらいだ。


「あ、うん。びっくりしたよ。駅員の人を連れてトイレに行ったら陽福くんは居なくなってて絡んでた奴らが転がってるんだもん」

「驚くことなんかねえよ。あんなチンカスレギオンに俺が負けるわけねーだろ」

「は、はは……陽福くんは色々な意味で強いんだね」

「それよか話は終わりか? だったらもう行くぞ」

「あ、待ってよ! その制服! 君も嵐高なんでしょ? 俺もなんだほら! 一緒に行こうよ!!」


 子犬のように纏わりつく犬太に鬱陶しそうな顔をするものの、春風は溜息交じりに受け入れた。

 地元の人間っぽいし丁度良い道案内になると思ったのだ。


「ところでさ、陽福くんってこの辺じゃ見ない顔だけど……」

「こないだ越して来たばっかだ」

「やっぱり。うん、君みたいな強い人の顔が知られてないわけがないもんね」

「強い奴が目立つとも限らねーがな」

「そうかもだけど……この街で俺達ぐらいの年代だとね」

「?」

「二年ぐらい前から色々あったんだよ。街中の不良が巻き込まれるような事件が幾つも」


 曰く、陽福くんみたいな人なら確実にどっかで巻き込まれていたとのことだ。

 何だそりゃと思いつつ春風は事件とやらについて質問してみる。


「具体的に何があったんだよ?」

「えっと、そうだね。時系列順に行くならやっぱり最初は逆十字軍(アンチクルセイダース)かな」

「あん……?」

「この街で幅を利かせてた高校生を中心にした巨大カツアゲグループさ」

「カツアゲ~? くっっだらねー。んなアホみてえなことやってる暇あんならナンパでもしてた方がよっぽど有意義じゃねーか」

「あはは……連中は市内全域で活動してたからさ。もし陽福くんが地元の人間なら」

「巻き込まれてたってか? 否定は出来ねえな~」


 どういう理由かは分からないが昔からそうなのだ。

 何かって言うと柄の悪い連中に絡まれてしまう。

 もし自分がその時期に居たのなら確実に絡まれていたであろうことは春風も否定出来ない。


「んで? そいつらはどうなったんだよ?」


 それだけ調子に乗っていたのなら、だ。

 市内に存在する他の不良グループから一斉に袋叩きにされたとかでもおかしくはない。

 春風が予想を口にすると犬太はふっふっふ、と怪しげに笑った。


「んだよ」

「超新星が現れたのさ」

「超新星――……っと、着いたか。確かここだったよな?」


 嵐ヶ丘高校と記されたプレートがあるので間違いはないだろうが万が一がある。

 犬太に確認を取るとそうだよと頷いた。


「あ、クラス分けはあそこかな?」

「みてえだな」


 校舎の入り口付近に設置されたボードの周囲には新入生らしき連中が集まっている。

 自分達も確認せねばと踏み出したその時である。


「テメェ……!!」

「あん?」


 春風が振り向くとそこには痛々しい傷痕が残る見知らぬ男子生徒が数名。

 誰だコイツら、と首を傾げていると犬太が呟いた。


「……お、同じ学校だったの……?」


 それで春風も思い出す。こないだ絡んで来た連中かと。

 制服の草臥れ具合を見るに上級生らしい。


「何だい? リベンジか? 俺に指一本触れられずのされたくせによォ」

「生意気な口利きやがって……! 俺らのバックにゃ闇璽ヱ羅が居るんだぞ!?」

「あんじぇら~? 歌手か何かか?」

「ち、違うよ! 闇璽ヱ羅は元叛逆七星(ワイルドセブン)の一角で隣の市にあるバリッバリの武闘派チーム! ま、まずいよこれは」


 春風は理解が出来なかった。

 無様にやられた後で恥ずかしげもなく自分のバックをひけらかす彼らも。そしてそれにビビって顔を蒼褪めさせている犬太も。

 まるで理解が出来ない。心底アホらしい。だから思ったことを言ってやる。


「だったらそいつらも連れて来いや。一人残らず潰してやっからよ~」


 情けない先輩達は顔を真っ赤にして睨み付けて来たが春風はケラケラと笑い飛ばした。

 あわや一触即発という空気だったが、


「――――……その必要はねえよ」

「あ?」


 話に入って来たのは髪を後ろで結い上げた不機嫌そうな顔の少年だった。

 隣にはニコニコと笑っている糸目の少年。

 誰だコイツら、と首を傾げる春風だが犬太や絡んで来ていた者らは二人を見て顔色を変えた。


「必要ねえってのは?」

「……闇璽ヱ羅の連中とはそれなりに交流があるんでな。どんなチームかはよーく知ってる」

「恥ずかしげもなくチームの看板をひけらかすような奴らと関わりを持つような人らやないんよ」

「ハッタリか?」

「……ああ。有名なチームだがホームは隣の市だから騙るにゃ丁度良いとでも思ったんだろうぜ」

「何やったら確認してみよか? なあ先輩方。名前教えてや。今からあっちの四代目さんに聞いてみるから」


 糸目の少年がそう言うと絡んで来た上級生達は顔を真っ赤にして去って行った。


「アイツら生きてて恥ずかしくねえのかな……都会ってあんな生き物が生息してんのか」

「都会への深刻な風評被害。つかボクらの地元、そこまで都会かなぁ?」

「前居たとことはダンチだよ。駅に駅員が居るんだぜ?」

「……都会認定のハードル低過ぎんだろ」


 無人駅でなければ都会認定がくだるなら結構な部分が都会認定されるだろう。


「つかテメェら誰だよ。いきなりしゃしゃり出てやがって」

「ちょ、塵狼の“二代目”総長と副総長相手に何て口を!?」

「あ? んだよそれ。よそ者の俺が知るわけねーだろ」

「あ、そうだった」


 と、そこでロン毛が口を挟む。


「……おい、うちは代替わりなんざしてねえし俺はあくまで“アイツ”が戻って来るまでの代行だ」

「ボクも副総長とかそういうんやないよ。うちは2番目は作らん方針やさかい」


 それだけ言って立ち去ろうとする二人だが、


「だからせめて名乗ってけや」

「……梅津健」

「矢島真太郎言います。あんじょうよろしゅう」

「梅津に矢島、ね」

「……で、そういうテメェは名乗らねえのか?」

「おっと、悪いな。俺は陽福。陽福春風だ」

「……」

「あんだよ?」


 振り向き、じっと自分を見つめる梅津。


「……お前、何かと面倒事に巻き込まれそうな雰囲気してるな」

「はぁ!?」

「……ま、精々気をつけろや」


 今度こそ二人は去って行った。


「んだアイツら……」




2.ファーストコンタクト


 ちょっとしたトラブルがあったもののつつがなく入学式、HRを終え放課後。

 春風は教室に残って犬太と駄弁っていた(奇遇なことに同じクラスだったのだ)。


「この街について教えて欲しい?」

「おぉ、遊ぶとことか美味い飯屋とかこんだけデケエんだし色々あんだろ?」

「それはまあ……うん、俺の知ってる限りでよければ」

「頼むわ」

「じゃあまずは中区。ここは何でもあるね」

「ざっくりしてんなぁ」

「いやでも実際そうなんだって。東西南北の区が何かしらに尖ってるせいかな? 中区はバランスが良いんだ」

「ほう?」


 尖ってると来たか。期待に目を輝かせる春風に犬太は言う。


「東区は身体を動かす系の遊び場が多いかな。自然公園とか海水浴場とかスポセンとか」

「へえ~? 良いじゃんよ」

「西区は逆にインドア系。ボドゲカフェとかニッチな筐体集めてるゲーセンとかが売りかな?」

「ボドゲカフェ。俺が前居たとこには十年後でも建つことはなさそうだわ」

「で、北と南は飲食。ただジャンルが違うね」

「ジャンル?」

「うん。南は小洒落た感じのお店が多くて北はお好み焼き屋とか焼き鳥屋とか大衆食堂とかそういう感じのが軒を連ねてる感じ」

「ほうほう。デートなら南。ダチと気軽に行くんなら北ってわけか」

「まあそこは各々の判断だと思うけど」


 話を聞いているだけでも楽しくなってくる。これはもう午後の予定は決まりだろう。


「おい小林、お前これから暇か?」

「え? あ、うん。特に予定はないけど……」

「ちょっと中区案内しろや。飯ぐれえなら奢ってやっからよ」

「えぇ!? いやいや、それは悪いよ……というかホントなら俺が奢るぐらいしなきゃだし……」

「良いよ別に。中学ん時はバイトに明け暮れてたから貯金、結構あるし」

「そ、そう? それじゃあお言葉に甘えて……でも西区じゃなくて中区なの?」

「西区は住んでるから時間が経てば嫌でも慣れんだろ。それならまずは万遍なく遊べる中区だろ」


 帰り支度を済ませた春風は途中、銀行でお金を下ろし犬太を伴い駅へと向かった。

 どこも昼で解散だからか学生でごった返していたが幸いにして絡まれることもなく中区へ到着した。


「おぉー……やっぱ市の中心だからか、人すっげえな。都会だ都会」

「そうでもないと思うけど、陽福くんってここに来る前はどこに?」

「四国の片田舎。二年ぐらい住んでたな。その前は東北の山奥に一年ちょっと居たな」

「えぇ……? 何でそんな田舎巡りしてるの?」

「好きでやってねえよ。俺の面倒見る親戚が田舎に散らばってたんだからしゃーねーだろ」


 その言葉で何かを察したのだろう。犬太は気まずそうに目を逸らした。

 実際のところ、春風の生い立ちはあまり愉快なものではない。

 が、当人はしっかり割り切っていた。昔はそれなりにいじけていたが自分なりに考え答えを出したのだ。

 人間は誰かに頼まれて生きているわけではないと。

 そう納得してからは生き易くなったし、毎日を楽しめている。

 だから犬太が今感じている気まずさは見当違い以外の何ものでもなかった。


「それよかまずは飯だ飯。ガッツリ肉食いてえんだが良いとこあるか?」

「お肉かぁ。ランチもやってるステーキ屋とか焼肉屋。変わったとこだとケバブ専門店とかもあった気が?」

「迷う……迷うぜぇ……いやマジで。ステーキ、分厚いステーキ。良いじゃん、良いじゃ~ん? だが焼肉も悪かねえ」


 しかしケバブも気になる。

 ケバブなど一度も食べたことがない。テレビで見たことがある程度だ。

 ただ美味いであろうことは分かる。

 春風はその場にしゃがみ込んで頭を抱え始めた。


「いっそ全部……いやだが、流石に腹が……空腹ってスパイスが使えねえ状態でも美味いは美味いんだろうが……」

「あ、チェーンじゃないバーガーショップなんかもあるね」

「はぁ!? それも絶対うめーやつじゃねえか! 個人経営のバーガーショップとかさぁ! 手が込んでること間違いなしじゃねえか!」


 妙な焦燥を抱えたままでは決断を誤りかねない。

 昼食は後にして他の場所の案内を頼もうと立ち上がった春風だが……。


「? どうしたの陽福くん」

「……」


 急に険しい顔で黙り込んだ春風。

 どうしたのかと犬太が視線を辿ると、


「あれは」

「……“アイツ”のこと知ってんのか?」

「知ってるも何もこの街で一番の有名人だもん」


 犬太は一呼吸置いて、告げた。


「――――彼は“初代塵狼総長”花咲笑顔だよ」

薄々察してると思いますがこのファーストコンタクトは後方シャンクスヅラしてる奴の仕込みです。

詳しくは次回。

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[良い点] 一先ず最新話までイッキ…と思いここまで来ましたが、後方シャンクスヅラに耐えられませんでした 狡くないですか?笑顔のモノローグで突っ込ませといてから一旦視点変えてクールダウン、からの後書き三…
[良い点] いかにもな光のヤンキーな主人公の登場でテンプレ通りって感じで嬉しい! [気になる点] 梅津、光のヤンキーや…塵狼内部でも「代行!」とか呼ばれてるのかな…?? [一言] 後方シャンクス面で草…
[一言] ランキング入りしててそこから一気見しました 最高に面白いですよね
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