番外編:東国不良事情
総合評価六万突破しました。本当にありがとうございます。
というわけで関東の不良情勢についての番外編を投稿します。
修学旅行から帰った翌日。何時メンで秘密基地に集まり、お土産交換会を行った後のことだ。
まったりとお土産をパクつきながら気になっていたことを話題に出す。
「ねえトモ」
「む、どうした?」
「関東の有力なチームとか知ってる? 知ってるなら色々教えて欲しいんだけど」
「おぉう、えっちゃんがそういうん聞くとは珍しいな」
「……珍しいが不思議ではないだろ。京都で散々やらかしたんだからな」
「今の笑顔くんは菅原會の會長やしねえ」
そうそう。
とは言えだ。いきなり俺んとこに直で殴り込みに来るとかは多分ないだろう。
何せ今は菅原會が終わるかどうか重大な決断を迫られている時だからな。
これが単なる解散の危機っていうならともかく、そうじゃない。
中学生が独力で理不尽を跳ね除け、最終的に菅原會の頂点に立ち真摯に頭としての役目を果たそうとしているのだ。
これに水を差すというのは男を下げる行いだからな。仮に仕掛けて来ようものなら周囲から袋たたきに合うだろうて。
動くのが義憤に駆られた者だけならともかく、確実に大義名分を笠に着て利を得ようって奴が出て来る。
仕掛ける側からすれば旨味なんざ微塵もありはしない。
ただその後。俺の見立てでは解散は最早規定路線だ。解散後に俺の首を獲ろうとする者は出て来るだろう。
なんで俺としては関東の情勢を軽く知っておきたいなって。
「ニコちゃんが狙われるってことは俺らにとっても無関係ではねーしな。トモちゃんよ、教えてくれや」
「そうだな。俺の知ってる範囲で説明しよう」
カステラをパクつきながらトモは隣の部屋からホワイトボードを引っ張ってきた。
「関東って括りじゃ広過ぎるからな。不良偏差値が高いとこを重点的に説明しよう」
不良偏差値って何だよ。
「まずは前もちらっと触れたが東京神田を根城にする“相馬一家”。東日本最大のチームと言っても過言ではないだろう」
西の菅原、東の相馬で双璧なんだっけ。
(……何かその内、潰れそうだな)
菅連が綺麗な終わり方をしようとしてるからな。
対になる相馬は新しい波に呑まれて潰えそうな気配がぷんぷんだわ。
「とは言えここは図体のデカさと名門ゆえの面子があるからな。
名を上げようと中学生を狙って来ることはそうそうないと見て良い。まあ、ニコをうちにとスカウトには来そうだが」
全員の視線が俺に向く。
「やだよめんどくさい。それに俺は人見知りだからな」
知らん奴が山ほど居るチームとかちょっと……。
「内弁慶な俺がやってけるとは思えない」
「すいませーん! この内弁慶、ガンガン外の連中ぶっ潰してんすけど!!」
シャラップタカミナ。
「同じく東京。新宿歌舞伎町を拠点にするレディースなんだが」
「ちょい待てトモ。レディースは関係なくね? 女と揉めるのは違うだろ」
「ここはちょっと別でな。明確にニコに目をつけてるんだ」
マジかよ。
「“死威拿林檎”というチームでな。まあ、これを見てくれ。チームのHPだ」
HP持ってんのか。
どれどれと眺めてみると最新の日記のに俺の名前が。個人情報も糞もねえな。
内容はこないだの跡目戦争の感想について綴ったもので俺はベタ褒めされていた。
まあそれは良いんだが、
「“恋慕だよ心底恋慕。彼こそがウチらの女王なんじゃない?”」
柚の読み上げた内容に全員が何とも言えない顔になる。
「“生物学上は確かに男かもしれないけど世の中には男の娘という概念があるし、誰よりも美人だから万事OK”」
OKじゃねえよ。
「“その美しさに全員が恋慕しちゃったし、これはもうウチらの頭になってもらうしか”」
やめてよね。そういう独自の世界観に俺を巻き込むの。
「……えっちゃんが上手くやれば、合コンとかセッティング出来そうだな」
「やらないよ?」
いや確かにHPに載ってる写真見るに美人さん多いけどさ。
俺はノータッチだ。口説くなら勝手にやれ。
「で、これまた東京。ホームは池袋。まだ規模は小さいが個人的に注目してるチームがある」
「へえ? 何でまたそこが気になってるんだい?」
「連中、打倒相馬を堂々と掲げてるんだよ。そしてその通りに相馬と揉めてるが半年以上もチームが続いてる」
なるほど。そりゃあ確かに……注目しちゃうわな。
ってか相馬、やばない? さっきその内、潰れそうだと思ったけどめっちゃフラグ立ってるじゃん。
「何てチームだ?」
「“呪怨帝国”。今は相馬に夢中だが……」
「……相馬を潰して、そこで止まらなきゃ花咲の首を獲りに来る、か」
「ああ。連中、全国制覇を狙っている節があるからな。もしそうならニコを標的にしないわけがない」
相馬一家はあくまで野望の第一歩、か。
ますます相馬の敗北フラグ強化されてんじゃん……可哀想だとは思わないの?
「次は湘南あたりにしようか。今、ここはかなり熱いぞ」
「「「「ほう?」」」」
四天王が身を乗り出す。
コイツら、何だかんだで喧嘩好きだからなぁ。
「ここ数年で何十代と続く伝統あるチームが次々と新興勢力によって潰され、今は三つのチームが鎬を削りあっている」
おぉ、良いねえ。好きよ、そういうの。
ああ、勿論脈々と受け継がれてくのも好きだけどな?
「その三つのチームってのは?」
「茅ヶ崎をホームとする“鶏煌羅”」
ん?
「平塚をホームとする“覇賦死皇螺”」
えーっと……?
「伊勢原をホームとする“世都夜砕陀亜”」
……。
「実はこの三つのチームには共通点があってな」
《分かるわ! 炭酸飲料じゃねえか!!》
総ツッコミである。
「おいトモ、お前フカシこいてんじゃねえだろうな?」
「いやマジだ。まあ、とりあえず俺の話を聞け」
えぇ……?
「三つのチームの総長は元は同じチームの仲間だったんだ」
曰く、そのチームはクタクタになるまで走った後で朝焼けを眺めながら炭酸を飲むのが恒例行事のチームだったらしい。
すっげえくだらねえと思うと同時に、すっげえ良いじゃんと思ってしまう俺が居る。
「が、ある時炭酸性の違いで三人が喧嘩しそれがチーム全体にまで波及して物別れになってしまった」
炭酸性の違いって何だよ。
「対立の中心にあった三人が立ち上げたチームこそが鶏煌羅、覇賦死皇螺、世都夜砕陀亜というわけだな。
最初は少人数のチームだったんだがそれぞれの飲料を推す者が次々に加入しどんどんチームは膨れ上がっていった」
何やってんだ……。
「結果、今の湘南は炭三国志と呼ぶべき状況になったんだ」
誰が上手いことを言えと。
「彼らはそれぞれの推しが至高であると証明することに躍起になってるから外への関心はあまりない」
ああそう……好きにやってくれとしか言えねえわ。
「ただどうも、最近新興勢力の茶羅王が台頭して来ているという噂も……」
どーでも良いわ。
「それと小田原にも一つ、気になっているチームがあってな。“風魔忍軍”っていうんだが……」
《……》
あの……。
「まあ、うん。察しの通り大真面目に忍者ゴッコやってる色物集団だ。
規模も結構なものだが炭三国志の連中や他の木っ端チームもどう反応したら良いか分からず皆、見てみぬ振りをしてる」
腫れ物扱いじゃねえか! ヤンキーじゃねだろそいつら……何で挙げた?
「ああそれなんだが、これを見てくれ。連中のHPだ」
忍者がHP立ち上げてんな! ってのはさておくとしてだ。
最新の日記には俺のダブピー写真(跡目戦争のスクショだろう)と共にこんなコメントが添えられていた。
「“これ拙者達の頭領じゃないか? いや頭領だ”……か」
違いますぅ。もう良い! 十分だ! 次いけ次!
「なら次は横浜にしようか。こちらも古くからのチームが次々に淘汰され今は二つのチームが頂点を競い合っている状態だ」
すんげえデジャブってるんだが?
「……一応聞くけどさ。そのチームの名前は?」
「“嶽埜孤一家”と“鬼乃皇国軍”だな」
やっぱりそういうアレかい……。
「ただこちらは湘南の炭三国志と比べるとかなり危険なチームでな。
何時までも覇権を握れぬことに業を煮やした両チームのトップは外に勢力を拡大し始めたんだ。
ひょっとしたら俺達も巻き込まれる可能性があるやも知れん」
勝手にやってろ!!




