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転生後の世界はヤンキー漫画の法則に支配されていた  作者: カブキマン
中学編

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バクチ・ダンサー⑪

1.どうしよう、今すっごく胸が痛い……


「今日は俺の奢りだ、好きなだけ食べてくれや」


 高杉との対話の後、俺達は酒井おススメの焼肉屋を訪れていた。

 ボブ、仙道、鳳は仲間を引き連れているので結構な人数になったが事前に話を通してくれていたのか問題はなかった。

 ここの支払いは鳳が受け持つと言っているが、これは俺と仙道への礼だろう。

 楽しませてもらったし、まだ楽しみが控えてるからご機嫌なのだと思う。


「おう、遠慮なく食わせてもらうわ」

「ゴチんなりマース!」

「……」


 俺のテーブルは俺含む跡目候補五人なんだが仙道、マジ喋らねえなコイツ。

 俺の提案に異を唱えなかったから賛成ってことなんだろうがもうちょい……なあ? 愛想良くしいや。

 いや、俺も愛想って意味じゃ大概だけどさぁ。それでも俺はちゃんと喋ってはいるじゃん?

 幾ら硬派つっても反応に困るですぅ。


「ちゅーか鳳。いや、おどれだけやのうてニコくんと仙道もやけどモノ食えるんか?」

「愛すべき痛みだろ? 問題ねえ」

「……気遣い感謝する」

「血が足りないから痛みとかは二の次かな」


 あんな削り合いをしたのだ。当然のことながら俺達三人はボロボロだ。


(我ながらよく勝てたと思うが……)


 でもよくよく考えると俺が思うほど不利な状況ではなかったのかもな。

 四天王を除けば基本、年上で体格も勝ってる奴らとばっか喧嘩して来たからな俺。

 となるとラーニングと同じように対年上とかサイズ差補正無視とかのスキルが生えててもおかしくない。

 他にもこれまでの描写から何かありそうだが……まあ今は良い。


(……ただ、それらがあってもこのザマなんだから泣けるでぇ)


 口の中だってズタズタだよ。でも、だからこそだ。

 俺の身体は今、この上なく肉を求めてる。だから酒井におススメの焼肉屋を紹介してくれるよう頼んだのだ。


「ナイスファイトだったネ!」


 ボブがニカっと笑う。


(コイツはホント爽やかだな……)


 一通り注文を終え、お冷を飲みながら俺は気になっていることを切り出す。


「で、君らから見て何人ぐらい参加してきそう?」


 跡目候補は俺を除いて四十人。その内、四人は……いや酒井もか。

 酒井の性格上、見届けると決めた以上は俺の要請で手伝いはしてもそれ以外では観客の立ち位置を外れなさそうだし。

 となると参加が確定しているのはボブ、仙道、鳳の三名だ。

 残る三十六人がどうなるかは正直、よく分からん。


「……」


 仙道は「俺は知らん」と言うようにふるふると首を横に振った。

 まあ、確かに仙道は菅連に所属してるつっても自分から入ったわけではないだろうしな。

 多分、勧誘だ。そしてそれが周囲の平穏に繋がるからと受け入れたんじゃねえかな。

 そんな奴が組織の内部事情に精通しているとは思えない。

 鳳を危険視してるのはアイツが喧嘩売って来たからだろうし。


「ワタシもぶっちゃけ、そんな詳しくないデスネ」


 ボブもか。社交性盛り盛りだから跡目候補に選ばれるような類の奴とは面識がありそうなもんだが……。

 ああいや、逆に調べないタイプだわ。サプライズ好きそうだし。


「あ? 俺? しょうもない連中は跡目候補からドロップアウトするだろうし……二十ぐらいでね?」


 なるほど。まあまあ、確かにそれぐらいかな。

 と俺も鳳の言葉に納得していたのだが、


「いや、俺を除く全員が参加するやろ」


 酒井がそれを否定した。


「おいおい小鬼くん。楽しい楽しいお祭りだってのに参加しねえとは正気かよ?」

「やり合うんやったら最初の時点でやっとるわ。やり合うよりも何するかを見たかったから代金、払うたんや」


 それを曲げるつもりはないと酒井は言う。

 やっぱり俺の予想通りだったか。しかしここで俺とやり合わないとなると……?


(顔見せ、か)


 今回の長編における酒井の役は期間限定お助けキャラであり、未来への布石だろう。

 多分、高校になってからだと思うが……まあ、今は良い。先々のことを考えて心労を募らせるのも馬鹿らしいしな。

 それよりも、


「全員ってことは昨日、俺らがネットに晒したアイツもってこと?」

「そや」

「…………わりとキツ目に痛め付けたつもりなんだけど」


 俺にリベンジかます根性があるとは思えなかった。

 俺の考えていることを察したのだろう、酒井はクツクツと喉を鳴らしながらこう続けた。


「ニコくん、そんで鳳も。君らは菅連のトップっちゅーもんを軽う見過ぎや」


 む。


「興味ない君らからしたら、それこそ明日の朝飯よりもどうでもええやろうけどな」

「価値を見出す者にとっては違う、か」


 正直、酒井が言うように俺は菅連のトップの椅子なんざどうでも良い。明日の天気のが気になるぐらいだ。

 しかしニ府四県を支配する広域連合のトップの椅子だもんなぁ。

 諦めるには重過ぎる、か。名誉や権力なんてのは欲望の鉄板だ。食べ物で言うとハンバーグや唐揚げ並みにド直球の王道と言えよう。

 並み居る猛者を退けてトップの座に就いたという栄光。ニ府四県を支配する巨大組織の権力。

 鳳が言うところの“しょうもない連中”にとっては中々諦められるものではない、か。


「幾らでも仲間連れて来てええとまで言われたら、そら色気を出すやろ」


 仰る通りだわ。

 しょうもない連中からすれば、背中を押されてるようなもんだよね。


「加えてバトルロイヤル形式ってのも美味いわな」


 しょうもないに分類される跡目候補は十人以上居る。

 そいつらが徒党を組めば……なるほどなるほど、それなりにやれそうではあるな。


「どうするよ大将。俺らも序盤は組んでカスどもの排除に乗り出すかい?」


 鳳がニヤニヤしながら提案してくるが、


「しないよ。君らが俺の下につくのはお祭りが始まるまでだ」


 祭りを開くために必要だったから下につけと言ったのだ。

 既に段取りは整ったから今日の日付が変わるのを待って解散でも良いんだが……ま、念のためだな。


「始まったら各々、好きにすれば良い」

「それでこそだ」


 嬉しそうだなお前。

 これも、俺が協定を組まない理由だ。鳳や酒井みたいなタイプが白けるようなことをすればデバフがかかるからな。


「にしてもスマイルくんよぉ。お前さん、可愛いツラして血の気が多いよなぁ?」

「その同類を見るかのような笑みは止めろ。一緒にすんな」


 俺がバトルロイヤル形式を提案したのは、それが一番手っ取り早いからだ。

 散発的に襲撃を仕掛けられるよりかは一度にまとめて相手する方が楽だからな。

 二日の準備期間を観光にあてられるし、一晩で終わらせれば残りの時間も京都を満喫するのに使える。

 理由はまだあるぞ。危ない連中を楽しませることで俺というキャラの評価を更に上げることが出来るのだ。

 ほら、俺にとっては良いことばかりだろ?


「ってか肉届き始めたしさっさと焼こうよ。俺、腹減った」

「せやな。ほな、内臓系から焼いてこか。しっかり火ぃ通さなあかんし」


 網の上に肉を敷き詰めながら、ふと思った。


(タカミナ達は上手いことやってんのかな?)


 物怖じしない性格だ。知らん奴らが相手でも大丈夫だろうとは思うが……。

 タカミナ達のテーブルに意識を向けると、


「ここに居ない矢島って奴も含めて過労死三連星とか言われてんだわコイツら」

「あとは酷使無双とかってのも聞いたことあるかなー」

「ほー、おどれらんとこの大将は人使い荒いんやなあ」

「まあしっかり成果は挙げてくれるから別に不満はないがな」


 どうしよう、今すっごく胸が痛い……。


(テツ、トモ、そして矢島……君らそんな不憫な異名つけられてたの……?)




2.一息


 美味かった。やっぱ男は肉を食って強くなるんだなって。

 酒井のおススメしてくれた店は当たり……いやさ大当たりだった。

 若干心にしこりが残る話もあったが、まあまあそれは無視しよう。


「ほな、俺らはここで」

「わざわざすまないね」


 腹が膨れたのならあとは休むだけなので俺はホテルに戻って来ていた。

 大体、段取りも整ったし今日からはホテルでも問題だろう。


「何の。二日後の零時まで君は俺らの大将やさかいな」

「おう、キッチリ守ってやんよ。ああ、変な横槍で萎えさせられんのは御免だからな」

「今日はゆっくり休んで、明日明後日は観光を楽しんでくだサーイ」

「……」


 お前も何か喋れや。


「それじゃ何かあったら連絡してよ」


 酒井達と別れ俺と東中トリオはホテルの中に入った。

 一日、帰って来なかっただけなのに随分と懐かしい気分だわ。


「ニコちん、これからどうすんの? もう寝る系?」

「いや眠れないから一旦部屋に戻ってシャワー浴びてから……どうしようね」


 部屋で大人しくしないのは同室の生贄にされた子らを慮ってのことだ。

 結構な大きさのホテルだし暇を潰すところぐらいはあるだろう。


「んなら俺らの部屋来るか?」

「それはありがたいけど……大丈夫?」

「大丈夫って何がよ。今更遠慮する仲でもねーだろ」

「いやそりゃタカミナ達はね? 同室の人らが大丈夫かって聞いてんの」


 タカミナ、テツ、トモは同じ中学だがクラスは違うので班も別だ。

 一緒のグループの生徒らと俺は当然のことながら面識はない。

 だが俺が知らなくても向こうが一方的に知っている可能性は十分ある。


「「「あー」」」


 駄目そうね。


「幾らか娯楽施設もあったはずだし、そこで時間を潰すか?」

「そうしよう」


 そのままエレベーターに行こうとして思い出す。

 そういや鍵預けたまんまだと。

 ちょっと待っててとタカミナ達に言って俺は受付に向かった。


「お待ちしておりました花咲様」

「うん?」


 何か違和感を覚える俺に受付の爽やか兄さんが微笑みを返す。


「実は私、菅連のOBなんですよ」

「それは」

「そしてこのホテルのオーナーもまた」


 菅原會はン十年と続く巨大広域連合だ。

 そこのOBの中には社会で成功を収める者もそれなりに居たって不思議じゃない。

 そういうOBらの後援もあってあちこちに融通を利かせられるんだろうが……まさかこのホテルもそうだったとは。


「そちら様の事情についても大体は把握しております」


 そう言って手渡された鍵は俺が宿泊している部屋のものではなかった。


「あなた様が何の気兼ねもなく体を休められるようにとオーナーからささやかな贈り物に御座います」

「……一応、菅連の敵なんだがね」

「何の。こちらの都合に付き合わせている上に、楽しい催しまで企画して頂いておきながら何もしないでは男が廃るというものでしょう」

「そうかい。ならありがたく」

「その他、ご希望等ありましたら私が対応致しますので何なりと」

「それなら元の部屋にある荷物を新しい部屋までよろしく」

「かしこまりました」


 お兄さんに別れを告げて三人の下に戻る。


「何かこのホテルのオーナーが菅連のOBらしくてさ。部屋用意してくれてるみたい」

「マジか」

「うっわ、何かドキドキするね! 行ってみようよ!!」


 テツに急かされ、エレベーターで最上階へと向かう。

 やはりと言うべきか……用意されたのはスイートルームだった。

 前に真人さんのホテルで手配してもらったのに比べりゃ普通だが……まあ、あっこは高級ホテルだしな。

 普通のホテルで言えば十分豪華だろうて。

 こんな部屋を手配してくれるとはOBさんはよほどこの三日の立ち回りがお気に召したらしい。


「すげ……いや、すっげえなオイこれすげえ!?」

「語彙が死んでるよタカミナ」

「ってかニコちん落ち着きすぎじゃない!? うっわ……スイートルームってこんななんだ……」

「見ろ、高そうなお茶菓子もあるぞ」


 はしゃいでる三人をよそに俺は冷蔵庫から飲み物を取り出し、ソファに腰を下ろす。


「あ、誰か来たみたい!!」


 部屋のベルが鳴り、テツが俺の言葉も待たずに駆けて行った。

 いやホント、テンションたっけーな。


(……まあでも、年相応なのか?)


 俺もマジモンの中学生ならスイートルームに大はしゃぎしていたかもしれない。

 猥談以外では淡々としてるトモだってめっちゃ部屋の中うろうろしてるし。

 そうこうしているとテツが俺の旅行鞄を持って戻って来た。やっぱりさっきのお兄さんだったか。


「そこらに置いといて」

「はいはーい」


 はー……こうしてのんびり出来る部屋を貰ったわけだしシャワーも後で良いかぁ。

 などと考えていると、


「時にニコ。お前……あ、うま……菅連の……病み付きになりそうだ」

「食べるか喋るかどっちかにしてくれない?」

「……」

「食べるんかい」

「いやだって美味しいし」


 はぁ、と溜息を吐くとトモは冗談だとお菓子を一旦置いた。


「菅連のトップの座を手に入れて何をする気だ? どんな絵を描いてる?」

「実は最近、権力にハマってて」

「権力にハマるって何だよ。おめーがそういうのに興味あるわけねえだろ」


 断言したな。や、仰る通りだけどね?


「ま、冗談は置いとくとして……まだ秘密」

「焦らすね~」

「その時までお楽しみにってことで一つ」


 まだ手に入れたわけでもないしな。

スパロボで言うとニコのステはザガートぶっ殺されたあとのエメロード姫みたいなもんだと思います。

レイアース知らなかったから光絶対殺すウーマンになったエメロード姫には驚かされたもんです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 酷使無双でクソワロタ
[一言] スパロボは未経験だけどレイアースは知ってる自分。 そのタイミングの姫はだめですね。 ニコくんで言えば辞職神拳ブッパした瞬間並みにだめですね。 まぁ、彼女の最大の目的はそれを守ることだったし(…
[一言] 自分で呼んどいてヤンデレ化するエメロード姫はほんとアレだったなあ…
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