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転生後の世界はヤンキー漫画の法則に支配されていた  作者: カブキマン
中学編

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バクチ・ダンサー①

1.空気読めや!!


 三が日も終わり一月四日。

 社会人ならこのあたりからまた長く苦しい戦いが始まるわけだが学生はそうじゃない。

 ここらの中学では大体十日から。つまり俺達にはまだ一週間近くの休みが残ってるわけだ。

 というわけで今日はイツメン+小夜の九人で改めて神社に参ろうということになった。

 元日から三日までは神社も混み混みだからな。俺含めて行かなかった奴は半分ぐらい居る。

 そういうわけで初詣と相成ったわけだな。


「何でかなー、屋台で見かけると食べたくなるよな林檎飴。別に特別美味いってわけでもねーのによぅ」

「わっかりますわ。硬いしベタつくしで普段ならまず間違いなく食べたいとは思いませんのにね」

「空気ってのは恐ろしいよなぁ」


 地元で一番、でっかい神社に来たので三が日明けとは言え人は結構居る。

 少々鬱陶しくはあるが、その代わり屋台などもバンバン出てるのでトントンだろう。

 金銀コンビと小夜などは林檎飴についての話で盛り上がっているが、


(馴染むのはえーな小夜)


 人見知りのケがある梅津は若干、距離を置いてるが他とはもうすっかり馴染んでる。

 その梅津にしたってぐいぐい来られてるし、陥落は時間の問題だろう。

 矢島がそうだったからな。話を聞くに気に入ったつってぐいぐい行った結果が相棒ポジションだもん。


「俺は別に危険な思想を持っているというわけではないんだが」

「あん?」

「こう、大量に群がってる人間を見ると一息に吹き飛ばしてみたくなることないか?」

「何でトモちんは時々、頭の螺子が飛んじゃうの?」

「いや別に大量殺戮がしたいというわけではなく感覚的にはあれだ。ボウリングに近い」


 沢山のピンを倒すと気持ち良いもんね……いやそれでもやべーわ。


「……花咲、お前また唐揚げか」

「好きだもん」


 俺が屋台で真っ先に買ったのは唐揚げだ。


「帰りにも買うよ」

「よう食べるわりに全然太らへんなこの人……」


 しかし何だ。こういう場所なのに全然、争いの火種がないな。

 いや別に好んで争いが見たいわけじゃないし巻き込まれたいわけでもない。

 ただこういう場だと浮かれて暴れ出したりする馬鹿が一定数居るじゃん? でもそれが全然ないんだもん。


(ルーザーズの残した傷痕はホント、大きいな)


 これは又聞きだが、元旦はやっぱりそういう諍いもそれなりにあったらしいのだ。

 だが大概は、即座に鎮圧されたそうな。ヤンキーの群れによってな。

 どうにも自警団みたいなのが臨時で結成されて、グループの垣根を越えて治安維持に努めていたらしい。

 そうなると一般人はビビって自制するようになるし、同じヤンキーもそう。

 自分から火をつけるようなどうしようもない輩に数を無視する度胸などありはしない。

 抑止力。今日の平穏は名も知らぬ誰かさん達の頑張りのお陰と言えよう。


(……でも自警団染みた活動って危ういんだよなぁ)


 ヤクザやマフィアの中には元を辿れば自警団だったってのもあるからなぁ。

 日本で言えば明治や戦後か。警察の人手が足りない時代だ。


(そう考えるとこの状況も……ま、いっか)


 よくよく考えれば仮に自警団染みた組織が正式に結成されたとしても暴走するんはだいぶ先やろ。

 少なくとも俺が高校卒業するまでは大丈夫だろう。

 最有力なのはこの街を舞台にした物語が終わった後か。続編的な物語で登場しそうだわ。


「ニコ~そろそろお参り行こうぜ」

「了解」


 残りの唐揚げを口に突っ込み、空になった容器をゴミ箱に突っ込む。


「ねえねえ小夜ちん小夜ちん。神社のお参りって何かこう、正しいやり方あったよね? どんなだっけ?」

「何でそれを私に聞きますの?」

「え、だって良いとこのお嬢様なんでしょ? そういうのは常識なんじゃ……」

「あっまいですわねテツさん。頭ストロベリーですの?」


 頭ストロベリーて……。

 それはどっちかってーとタカミナじゃないかな。頭赤いし。


「そういうのは本物のご令嬢の領分でしてよ? 私のようなパチモンお嬢様にその手の礼法を期待しても無駄ですわ」

《自分でパチモンとか言うな》


 えへんと胸を張る小夜に思わず全員でツッコミを入れてしまった。

 まあでも、正統派のお嬢様ではないよね小夜。愉快型令嬢っつーか……。


「分からないものはしょうがありませんわ。大事なのはハート。真剣に祈れば神様もお目こぼしくださるでしょう」

「……ちょっと良いこと言ってるが、その前の発言があるから素直に感心出来ねえ」


 それな。

 とまあ、そんなこんなで拝殿に向かった俺達は賽銭を入れ手を合わせた。


(闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように)


 不穏なフラグが立って死ぬとかマジで勘弁してください。


「……ふぅ、大体こんなもんかな」


 見れば他の皆もお祈りを終えている。

 長居しても他の参拝客に迷惑だし、さっさとどこう。


「皆は何をお願いしたん?」

「……無病息災」


 渋ッ!?


「今年も楽しく過ごせますように、だな」

「俺も俺も」

「あら奇遇。私も同じですわ」


 金銀コンビと小夜はらしいお願いだ。


「「「学業成就」」」


 東区トリオは……これも、そこまで変ってわけじゃないな。

 三代目悪童七人隊との戦いで、馬鹿な大人を見せ付けられてから勉強に励んでるようだし。


「ニコちんは?」

「大した願いじゃないさ」


 闇堕ちしたくないとか言えるわけがない。

 幸いなことにそれ以上の追及はなかった。俺のキャラってホント、便利だよな。

 それはさておき、神社での恒例イベントはまだ終わっちゃいない。

 参拝が終わったなら次はそう……――運試しだ。


「んじゃ、改めて確認だ。どべの奴は全員にジュース奢り……OK?」


 タカミナの言葉に全員が頷き、社務所でそれぞれおみくじを購入して敷地内にある休憩スペースに向かった。


「じゃ、俺から行くぜ? おみくじを攻撃表示で召喚……!!」


 おみくじの攻撃表示って何だよ。

 攻撃力も防御力も特殊効果もありゃしねえんだよ。

 ツッコミつつ柚がテーブルの上に広げたおみくじは、


「わはははは! 凶だ! 凶引いてやがるぞコイツ!?」

「ドベは金ちゃんで決定かなー? あっはははははは!!」

「……俺も詳しくはねえがよ。凶とかあるんだな」

「ば、馬鹿な……」


 わなわなと震える柚をよそに、桃が二番手に名乗りを上げた。

 凶なんぞ引く間抜けとは違う。俺は持っている男だとドヤりながら広げたくじは、


「ぎゃははははは! 今年も金銀揃って仲良うございますなぁ!?」

「うわぁ……こういうとこでも息ぴったりやん君ら」

「友情ですわね」

「こ、こんなはずでは……」


 察せると思うが一応言っておこう、凶だった。

 ニ連続で凶とかある意味で運が良い気がしないでもないな。


「はぁー……笑った笑った。でもまあ、ドンケツ二人で奢りなら財布へのダメージは少ねえじゃん。良かったな」


 などと言いつつタカミナが開いたくじは、


「「だーっはっはっはっは! 散々イキっといてテメェも凶じゃねえかタカミナくんよぉ!?」」

「あ、ありえん……こ、こんな……こんなことが許されて良いのか……?」

「まあ、あれやね。奢りは三分割っちゅーことで負担は更に軽減、みたいな?」


 いやー、この時ばかりは表情筋死んでて良かったわ。

 表情に出てたら爆笑してたね、間違いなく。腹筋捻じ切れるぐらい笑ってたわ。

 運を試すまでもねえ。周りについてねえのが揃ってるんだもん。

 などと思っていたが、


《……》


 テツトモに梅津矢島らも気楽な感じで続いたが結果は凶。

 え、やばないこれ? 立ったじゃんフラグ。直近の大きなイベントで確実に厄介ごとに巻き込まれるだろコイツら。

 いや京都組の東区トリオも凶だから俺もなんだけどさ。


「驚きですわね。これは笑顔さんも……」


 皆がじっと俺を見つめる。

 ここまで来たら俺も楽観は出来ねえわ。十中八九凶だよこれ。

 もう見たくもないんだけど……やんなきゃ終わらねえしなぁ。

 ごそごそとおみくじを開き机に叩き付ける。そっと手をどかすとそこには、


《うわぁ……》


 ふざけんな! 大凶!? 大凶って何だよお前!!

 待ち人も来ないし失せ物も見つからないし散々じゃねえかお前これェ!!

 なまじ金銭運と恋愛運が良いのがムカつく! え、この二つ結構良いこと書かれてるのにそれでも大凶!? 他がどんだけ足引っ張ってんだ!?

 つかさ、つかさ、神社はちょっとユーザーに優しくなくね!?

 普通、抜いとくだろ! 凶も大凶も! 気分良く帰ってもらうために接待してくれや!!


「萎えたわ。心底萎えたわ。あーあ、もう帰って寝ようかな」

「かつてないほどニコちんが不貞腐れてる……」

「でも俺、えっちゃんのお陰で何か元気出たわ。下には下が居るんだなって」


 殺すぞ。


「小夜ちゃんはどうなんだ?」

「ってかこれもう小夜ちゃんの確定勝利だろ」

「笑顔さんが綺麗にオチをつけてくれたからこれ以上面白くは出来そうにありませんが……」


 オチとか言わないで?


「あ、吉ですわ。可もなく不可もなく。ネタにもなりゃしません」


 その通りだけどここに居るバッドブラザーズに比べりゃ天上人みてえなもんじゃん。


「というかこれもう、最下位が奢りってのじゃなくて小夜ちゃんに全員で貢いだ方が良くね?」

「ああ……ラック強者だからな。その運にあやからせてもらいてえ」

「俺達に少しでも運を分けてもらおう」


 男八人、顔を見合わせ頷き一斉に言った。


《姫ェ!!!!》

「恥ずかしいので止めて頂けませんこと?」


 おみくじを結んだ後、滅茶苦茶小夜を接待した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 悪運と踊っちまうのかい?
[良い点] (闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように闇堕ちしませんように) 必死である。 [一言] 少なくとも俺が高校卒業するまでは大丈夫だろう。 最有力な…
[一言] 吉で崇められる恥ずかしさ…
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