第1章7 校内対抗試合 その1
第1章7 校内対抗試合 その1
--- 校内対抗試合ー特訓 ---
雨期も終わり季節は初夏へと変わっていた。
校内対抗試合がいよいよ来週実施される。
「ねえ、ねえ、聞いた校内対抗試合のステージは3種類有るんだってその戦いの場所へはゲートで転送されるらしいよ。」
ソフィアが情報を仕入れて来た様だ。
「3種類ってどういうフィールド?」
「草原フィールドと森林フィールドと・・後は荒廃都市フィールドだって。」
「今度は魔獣じゃなくて対人戦だもんね、相手も考えて来るから難しいよ」
「でも学科で勉強するより、実技のほうが分かりやすいよね」
「今日お父さんベスの家にお食事に招待されてるから、フィールド毎のフォーメーションとか作戦考えとこうよ。」
「召喚獣を使うのも良いらしいから白虎が出れば間違い無く優勝だね。」
「イメルダ先生に校内試合では白虎の召喚は禁止されてる。」
「えーそうなの!? さすがにそっかー」
ベアトリスはがっかりした様に言った。
「でも校内って事は学園対抗ではOKって事だよね? でも白虎くらい強い魔獣が出てくるのかなー?」
「何だか怖いねー」
放課後はベスの屋敷に全員で集まり、基本のフォーメションや各自の役割を決めた。
「フォーメーションは召喚合宿でも使ったV字フォーメーションだね。」
「前衛は魔法攻撃と召喚獣による攻撃を使うから召喚獣のLvが高い私とソフィだね。」
「後衛は防御魔法と回復をケニーとマリンに任せるね」
「任されたぜ!」
「最後尾はシャロットが適宜攻撃と防御を行うって事でどう?このフォーメーション?」
リーダーのベアトリスが一通りの陣形について考えを述べた。
「問題ないぜ。」
「私もそれでいいわ。」
「シャルは白虎が使えないけど、後ろにいてくれるだけで何だか心強いわ。」
「僕もOK」
「じゃあこれで決定ね。」
「草原フィールドとか障害物の無いフィールドはそれで良いけど、荒廃都市フィールドと森林フィールドはそうは行かない。」
「じゃあ、先ずは荒廃都市フィールドはどうする?」
「固まって行動すると建物ごと崩壊した時に全滅しやすいから、チームを2つに分けて攻略するのがいいかなー。」
「全員バラバラだとどうしていいか分からなくなるしね。」
「僕がフライで上から敵の動きを見てそれぞれのチームに指示を出す。」
「いいねー。それなら敵の視覚や後ろからでも不意打ち出来そうだね。」
「でもどうやって上から指示を出すの?大声で指示する訳にも行かないしね。」
「メッセージを使う。」
「メッセージ?」
「そうメッセージ、試した方が早い、ベス食堂へ行ってくれる?」
「え?何?分かったわ。」
ベスは食堂へ駆けて行った。
「メッセージ・ベス」
シャルロットはおでこに指を当て唱えた。
「ベス聞こえる? もう帰って来ていいよ。」
ベスは慌てて戻って来た。
「シャル! 凄いよ。 これなら何処でだって連絡取れるね!」
「何処まで使えるのか今はまだはっきり解らない。」
「じゃあ荒廃都市はこの作戦で決まりだね。次は森林フィールドだけどどうする?」
ベスが切り出した。
「森林だと枝が邪魔で上から敵の動きは見えない。」
シャルロットが答えた。
「召喚獣を探索した時みたいに木に隠れながらそれぞれが横並びで進むのはどう?」
マデリンが提案した。
「一箇所に固まってると直ぐに見つけられちゃうしね。」
ソフィアが同意した。
「じゃあ木に隠れながら全員が適宜戦う作戦で。各自で練習している魔法詠唱を短くするやつうまく行ってる?」
ベアトリスが確認した。
「簡単な魔法はいいのだけど、イメージが難しい魔法は全然駄目。」
マデリンが答えた。
「何が難しい?」
シャルロットが聞いた。
「アイシクルスピアとかフレイブルスピアとか」
マデリンが答えた。
「この中でアイシクルスピアを使えるのは風と水の属性を持つベスとソフィでフレイブルスピアが使えるのは火と風の属性を持つマリン。
魔法のイメージはアイシクルスピアは風による水の気化熱の冷気で凍ったツララを飛ばすイメージ。フレイブルスピアは燃え盛る火の槍を風魔法で酸素を送って爆炎させるイメージ。」
シャルロットは魔法と属性の説明とそれぞれの魔法のイメージについて説明した。
「そのイメージが湧かない・・・。」
皆、苦笑いをした。
「じゃあもう少し具体的に言うと、アイシクルスピアは汗や水が蒸発する時にヒヤッとするでしょ? あれをもっと強くイメージする感じ。フレイブルスピアは火を燃やした時に風を送ると焔が激しく燃えるでしょ?あれをもっと強くイメージする感じ。」
「あー、何となくわかって来たぞ。」
ケーニッヒが納得した。
「どれくらいのダメージで戦闘不能になるのかなー?」
ソフィアが聞いた。
「今回羽織る魔防服が魔法や打撃を受けた場合、青→緑→黃→赤に変わり赤で退場になるみたいよ。フェルト先生に5人分借りたから今度練習しよう。」
フェルトに聞いていたベスが答えた。
翌日の放課後、シャルロットの屋敷に集まった5人は、
「実際に実技で練習したいけど実技場って学校にしか無いから難しいね。何処かに広くて周りに気を使わない空き地とか無いかなー。」
皆で思案していると、
「この前行ったフリュード森林はどう?」
シャルロットが答えた。
「いや、あそこは遠いでしょう!?」
ベアトリスが言った。
「場所のイメージが出来ているから、ゲートで行ける。」
「え? ホント? シャル、ゲートなんて作れるの?」
「フェルト先生に教えてもらった魔法。もうバルドワジさんの所へは白虎と何回か行った。」
シャルロットは実際には教えてもらってはいないが最近色々なイメージをユニーク属性の魔法で具現化している。ゲートもそのうちの一つである。 この6つ目のユニークスキルのお陰で大抵の事は出来る事が解って来た。
「じゃあ今日はフリュード森林で実技練習しましょ!」
「じゃあシャル、早速ゲートを開いてちょうだい。」
「分かった。ゲート。」
部屋の中の空間に丸い縦長の暗くゆらめくエリアが出来た。
「先に行って見てくる。」
そう言うとシャルロットは白虎を抱えて暗いエリアにすっと入って行った。
程なくしてシャルロットが顔だけ出して、
「大丈夫、おいで、おいで」
みな不安気に暗いエリアをくぐり抜けると、懐かしのフリュード森林のロッジの前に出た。
ロッジの前にはバルドワジ氏も立っており、
「シャルロット様、皆様、ようこそおいで下さいました。」
と挨拶をした。
「こんにちは!」
「今日は皆さんお揃いでどうなさいましたか?」
「実は来週校内の魔法対抗試合があるのですが、リューネブルクには練習できそうな場所が無いのでこちらの森で出来ないかと思いまして来ました。」
ベアトリスが答えた。
「そうですか、そういう事でしたらこのロッジの周囲1km以内であれば使って頂いて結構です。」
「本当ですか、有難うございます。」
バルドワジの許可を得てロッジから500mほど離れた森の中に移動した。
メンバーの実力を上げる為にシャルロットを仮想敵として残りのメンバーがV字陣形で攻撃と防御を行う事にした。
「じゃあまずは サモンベアウルフ あの子を攻撃なさい。」
ベアトリスとソフィがサモンしたベアウルフがシャルロットの方へ一目散に駆けていく。
「グランドスワンプ。(シャルロット)」
ベアウルフ達は急に現れた泥沼に足をとられ身動きが出来なくなった。
「ファイヤボール(シャルロット)」
シャルロットはすかさずファイヤボールをベスたちに向けて放った。
「ディフェンシブマジック エアリアルウォール(ケーニッヒ・マデリン)」
ケーニッヒとマデリンが風の壁を作りそれを防いだ。
「ファイヤーボール(シャルロット)」
シャルロットは今度はファイヤボールを放物線を描きエアリストームの中に着弾させた。
ファイヤーボールは、ケーニッヒとマデリンに着弾した。
「ディフェンシブマジック サンドストーム(ケーニッヒ)」
ケニーがシャルロットの周りにサンドストームを展開した。
「レインストーム(シャルロット)」
シャルはソレにかぶせる様にレインストームを自分の周囲に展開した。
「ファイヤーボール(マデリン)」
マデリンが一直線にファイヤーボールを打つもシャルロットのレインストームに消されてしまった。
「メテオフォール(シャルロット)」
シャルロットがいくつもの隕石を落下させ、全員にダメージを与えた。
「オフェンシブマジック アイシクルスピア(ベアトリス)」
「オフェンシブマジック エアリアルストーム(ケーニッヒ)」
「オフェンシブマジック ファイヤーボール(マデリン)」
「オフェンシブマジック トレントウォーター(ソフィア)」
4人が同時に攻撃魔法を発動した。
ファイアボールはトレントウォターによって消されてしまった。
「ドームオブクリスタル(シャルロット)」
シャルロットは水晶のドームを顕現し攻撃を防いだ。
「ダークスペース(シャルロット)」
ベスたちの陣営が暗黒空間に飲まれた
「え?何?真っ暗だよ。」
「ホーリーアロー(シャルロット)」
魔法陣が5個展開し暗黒空間に向け幾本の光の矢が放たれ、全員がダメージを受けた。
「ポイズンストーム(シャルロット)」
シャルロットが毒ガスの嵐をパーティの中央に展開し、全員がダメージを受けた。
この時点でケーニッヒとマデリンが脱落しベアトリスとソフィアは残す所あと1ダメージとなった。
「ちょっと、タイム、タイム、 何だかシャル一人に俺達4人が押されてるよね。」
「知らない魔法もちょいちょい出てきたぜ。」
「フェルト先生に教えてもらった。敵は色んな属性の魔法を打って来る。まだ手加減してるほう。それに 皆、魔法発動に時間が掛かり過ぎ、Lv2までの魔法は略式で唱えられる様にイメージ出来ないと駄目」
「それからどの属性に対してどの属性が有効かを考えないと駄目。水属性のレインストームと火属性のファイアボールやフレイブルアローを同時に使っても相性が悪いから効果が打ち消されてしまう。」
「後、防御魔法を周囲に展開しているのに直線的に攻撃しても駄目。 放物線を描く軌道をイメージして、上から攻撃する様にする。 そうすれば防御と攻撃を同時に行える。」
シャルが対人戦術に必要な基本を教え、また模擬戦をする事でメンバーも徐々に戦いに慣れて行った。
「アイシクルウォール(シャルロット)」
「フレイブルストーム(マデリン)」
「アイシクルアロー(ベアトリス)」
「アイシクルバースト(シャルロット)」
シャルロットの氷の壁を炎の嵐でマデリンが溶かしベアトリスの氷の矢でシャルロットはグリーンシグナルとなり1点減点を奪うもシャルロット氷の嵐で全滅してしまった。
「やったー!シャルから1点取れた!」
喜び合うメンバーだった。
「今日はこれくらいで終わりにしよう。」
連日の練習で攻撃・防御の宣言をしなくても全員が魔法発動出来る様になり、また、幾つかのLv3の魔法も使える様になっていた。