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天使の贖罪  作者: LoveDonald
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第2章4 青龍

 翌朝、目が覚めたシャルロットはベッドから降りると何か硬い冷たいものを踏みつけて慌てて飛び退くと、玄武が寝ていた事に気づいた。


 (ごめんよ、玄武)


 それから顔を洗って身支度をしていると他の面々も起きて来た。


 「おはようフェルト」


 「ああ、シャルおはよう」


 「主様、おはようございます。」


 「おはよう、お前たち」


 それから全員で揃ってレストランへ降りていき、朝食を摂りながら置いてあった新聞に目を通して居ると、気になる記事があった。


 「フェルトこれ見てよ。」


 「なになに、昨夜ヨツンヘイム近海でイカ釣り漁をしていた漁船が嵐に遭い転覆、乗組員3人が行方不明か。お前はこれが青龍の仕業だと言いたいのだな?」


 「はい。ヨツンヘイム近海で嵐という天候、そして漁船の難破。恐らく先代王の難破も青龍が何らかの理由で襲ったのでは無いかと思います。」


 「なるほど。白虎に朱雀、青龍という神獣はこうも簡単に漁船を襲うほど気性が荒いのか?」


 フェルトが聞いた。


 「気性が荒いのは認めますが、よほどの理由が無い限り人の船を襲う事はありません。」


 「ではよほどの事があるのか、あるいは青龍とは関係の無い事故なのか・・だな。」


 「朱雀、我々を乗せてヨツンヘイム迄飛んで行けるものか?」


 フェルトが美味しそうに朝食を食べている朱雀に聞いた。


 「恐らくは。しかしそれでは青龍と遭遇するのが難しくなるやもしれませぬ。」


 「確かにそうだな。では船で行くしか無いか。」


 「玄武、君は海を泳いでヨツンヘイムまで行く事は可能かい?」


 シャルロットが同じく美味しそうにパンとスープを食べている玄武に聞いた。


 「主様、もちろんです。全員を乗せて泳ぐ事など造作も無い事にございます。」


 「ではフェルト、決まりですね、玄武に乗って海を渡りましょう。」


 ヨツンヘイムまでの行動方針が決まったが、美味しそうに朝食をお代わりして食べている神獣達を待ってあげる事にした。


 (最近皆、人の食べ物がよほど気に入ったみたいだね。良かった。)


 朝食も終わり荷物をまとめてチェックアウトした一行は港まで歩いて行った。


 港では漁師達が船の上で作業をしていたので青龍に繋がる話が無いか聞いて見ることにした。


 「すいません。今朝の新聞にヨツンヘイム近海で漁船が嵐で転覆したと書いてありましたが、何か知りませんか?」


 「うん?あー、昨夜のイカ釣り漁の事故か、確かにありゃー事故じゃねー、龍神様の怒りに触れたんじゃ。」


 「龍神様の怒り?」


 「あー、そうだとも、ヨツンヘイムを守る龍神様の怒りだ。

 ヨツンヘイムに近づく者は龍神様に沈められるんだ、漁師もそれを恐れて普段は近寄らないんだがあの辺りは良い漁場だから、漁をしているうちについつい近づいちまって沈められる船が後を立たんのじゃ。」


 「その龍神様を見た漁師はいるんですか?」


 「ああ、何人も居るとも。海から立ち上る嵐の中に龍神様はその身を隠しておられる。」


 「フェルト間違い無いですね。」


 「そうだな。そうするとヨツンヘイムに行く船は必ず沈められる訳だから我々もヨツンヘイムを目指せば必ず青龍に会えるという訳だ。」


 一行は防波堤へ行くと、


 「じゃあ、玄武早速乗せてくれるかい?」


 「承知しました。」


 そう言うと、仁王像玄武は海に飛び込み、20mはある甲羅が浮かび上がって来た。一行はそれに飛び乗り、シャルロットが、


 「それでは玄武、ヨツンヘイムに向かって下さい。」


 「御意に。」


 凪いで穏やかな日が降り注ぐ甲羅の上はのどかな時間が経過していた。

 白虎は釣り竿を垂れ、朱雀は水着で日焼けをしていた。


 一行は玄武の背で昼食を取り再びのどかな時間を送っていた。3時を過ぎた頃、ヨツンヘイムが遠くに見えて来た時、100mほど離れた東の海から竜巻の様な直径20mほどの水柱が急に空に向かって立ち上った。空には一瞬にして暗雲が立ち込め、水柱は徐々にこちらに向かって来た。


 良く見ると水柱の中に龍の様な生き物が体をくねらせて立ち上がって居るように見えた。


 「フェルトどうやらあれが青龍に間違い無さそうですね。ちょっと話をしに行って来ます。」


 「そうだな。しかし、我々を襲いに来ているんだ、注意して行けよ。」


 「白虎おいで青龍の所へ行くよ!」


 「御意に!」


 そう言うと白虎はシャルロットを乗せて水柱の中ほどの高さに駆け上った。


 「青龍聞こえるか!? 聞こえるのなら返事をしてくれ!」


 しばらくしても返事が無かった。


 「青龍、きさま主様にその無礼な態度はなんだ!」


 (何だ?朱雀の時の様に操られているのか?) 


 「白虎少し刺激を与えて見よう。」


 「御意に、 ヘルサンダー」


 暗雲の中から幾本もの落雷が水柱へと襲い掛かった。


 「グギャー!」


 水柱が突然うねり、シャルロットたち目掛けて飛んで来た。


 白虎はすかさず避けたがうねった水柱が波の様に連続で白虎達を襲い、ついに水柱の中に捉えられてしまった。


 「ぐっ、ゴボゴボ、あれは青龍」


 水柱の中央でこちらを睨む青龍の姿が見えた。白虎はなんとか水柱の外へ退避し、体制を立て直した。


 「白虎、僕が水柱を凍らせよう」


 「ヘルフローズン」


 シャルロットが、水柱の付け根の辺りに魔法を放つと辺りが氷の世界に一変し、水柱は曲がりくねった樹の様に凍り付いた。


 水柱の中には凍った状態の青龍が見える。


 「メッセージ、朱雀」


 「朱雀、青龍の頭の部分だけ氷を溶かしてくれ!」


 「御意に」


 朱雀は鳥獣へと変化し、青龍の顔の高さ迄飛び立つと、


 「トレントファイヤー」


 顔の部分の水柱が溶け。青龍の頭が露わになった。青龍の目は赤く光り雄叫びを上げていた。


 「ギャオォォ・・ギャオォォ・・」


 「青龍落ち着くんだ、私の話しを聞け」


 青龍はシャルロットの声など聞こえないかの如くもがいている。


 「何だ誰かに操られているのか?」


 「主様、あれを!」


 朱雀が見ている方向を見ると暗雲切れ目から3つの何かが赤く光って居るのが見えた。3つの点は三角形の中心に青龍が居る状態を保っている。


 「あれは召喚石! だがあんな高い所で誰が。」


 シャルロットはフライで朱雀に飛び移り暗雲の上に飛んで行った。

 空にいたのは召喚石を持った天使だった。


 「お前たちは天使!? 何をしている!?」


 シャルロットが呼びかけると召喚石を高く掲げ何かを青龍に指示した。


 下では青龍が氷となった水柱を砕き、下から剣山の様に無数のアイシクルスピアを放って来た。


 「ウグッ!」


 朱雀に何本も刺さり、シャルロットも左腕を貫かれた。朱雀はお返しとばかりにフレイブルスピアを青龍に放った。


 「青龍、貴様よくも主様に怪我をさせたな! 灰にしてくれるからそこに直れ!」


 「朱雀待って、あの天使達を狙うんだ。」


 「御意に! おのれ天使ども! ヘルファイヤー!」


 広範囲に放たれた地獄の焔に天使たちは焼かれ、海に向かって落ちて行った。


 すると白虎と肉弾戦を繰り広げていた青龍が、


 「イタタタ、この猫めが何をしておる!」


 白虎に怒鳴り散らした。朱雀とシャルロットは青龍のところまで降りていき、


 「やっと正気に戻ったようだね青龍。」


 と、話しかけた。


 「神獣である私に何を気安く話している。お主など知らぬ! それに朱雀に白虎、玄武まで私に対して3人掛かりで何をしておるのじゃ。いくら四獣の仲とは言え許さぬぞ!」


 「馬鹿者め!お前こそこんな所で何をしているのだ!よりによって主様を乗せた妾を攻撃し主様に怪我までさせるとは許さん、死を持って償うがいい! ヘル・・」


 「待って朱雀。」


 「しかし、主様、妾はこやつを焼き魚にしてやらねば気がすみません・・」


 「いいんだよ朱雀こんな怪我は大した事は無い。

 青龍よお前は今まで天使達に操られていたのが分からなかったのかい?

 恐らく君はここ何年も天使に操られヨツンヘイムに入ろうとする船を難破させていたんだよ。」


 「私が・・お前は誰だ。何故神獣である小奴らを従えておる?」


 「私の名はシャルロット、エルフの女王リーシアと魔王ルシファーの娘だ。」


 「何?魔王様の? お前たち本当なのか?」


 青龍は他の神獣達に確認した。


 「当たり前だ!この海をお前を身動き一つ取れない様に凍り付かせた強力な魔法を身をもって受けてもまだ分からぬか!」


 「何?先程私を氷漬けにした魔法、あれはそなたが放ったものか?」


 「そうだよ。暴れるお前を大人しくさせる為にや無得ずにした事だよ。そして出来ればお前も私と召喚獣としての契約を結んで欲しい。」


 「先程の魔法、こやつ等が忠義を尽くしているお前、いや貴方は本当に魔王様の・・・。分かりました契約を結びましょう。」


 そう言うと青龍の体が氷が砕ける様に細かく砕け散り、目の前にはシャルロットより小さな幼女が宙に浮いていた。


「サモン コントラクト」


 その体に似合わず召喚陣は巨大な物が展開し、青龍はその黒銀の光に包まれ魔王との思い出が走馬灯の様に思い出された。


 「青龍おいで・・・青龍、海を割れ・・・いい子だ青龍・・・。」


 「魔王さまぁー。」


 そう言うと青龍はシャルロットに抱きついてその胸で泣いた。


 「ごめんなさい、ごめんなさい。」


 というと、血を流している左腕の傷口を舐めた。


 すると傷がみるみる癒えて何も無かったかの様に消えてしまった。


 青龍はシャルロットの血を舐めると目が青く光り、頭から小さな角が生えた。


 「青龍何だいこの角?」


 「魔王様の血は我ら神獣に取っての精力剤の様なもの。力が漲り少し竜化しちゃいました。」


 青龍は可愛かった。シャルロットは妹が出来た様な気がして、ぎゅっと抱きしめた。 


 戦いも一段落して全員が玄武の背に戻って来た。


 「こりゃまた可愛いのが加わったもんだな。」


 「フェルト紹介します。この子は青龍、僕の妹です。」


 「幼女に妹が出来たら、それはもう赤ん坊だろ?

 まあ、冗談はさておき、それで青龍、君はなんで天使に操られて船を難破させていたんだ?」


 「解らない。

 私が覚えているのは魔王様が「エルフの里を守ってくれって」って言われたので、ずっとこの地に人が近づかない様に嵐で追い払っていたの、それから天使たちが一杯来たから頑張ってやっつけていたんだけど鎖で縛られてそれからの事は覚えていない。」


 「なるほどどうやら青龍は一人でこの里を守っていたが、天使たちにやり込められて召喚石で朱雀と同じ様に操られていたようだな。」


 「やはり天使達の狙いはエルフの里を隠す事でしょうか?」


 「結果的に魔王様の「エルフの里を守れ」と同じ事になった訳だが恐らくそうだろう。そして天使コカビエルの記憶からもエルフの存在を消し隠していたんだろう。

 いずれにしても今はエルフの里に向かう事が先決だな。」


 「そうですね。玄武、このままヨツンヘイムへ向かってくれ。」

 

  日が暮れる頃、ヨツンヘイムに到着した。


 パイトスが洞窟探査用に買い込んでいた保存食でフェルトが料理を作り、焚き火を囲んで皆で食べた。


 神獣達が久しぶりに全員揃い思い出話をしながら美味しそうに食べて居るのをフェルトとシャルロットは眺め、


 「シャル、これも一つの家族・・なのかもしれないな」


 とフェルトがつぶやいた。


 シャルロットはフェルトにもたれかかり、


 「そうだね。お姉ちゃん。」


 とつぶやいた。


 その夜はテントを張って浜辺で寝た。


 今度は誰が主様と同じ寝袋で寝るかが玄武を除く3名で争奪されていたが、新参者の青龍がシャルロットと寝て、白虎はフェルトと寝ることになった。


 朱雀は寝袋は別だがシャルロットの直ぐ横で優しくシャルロットを撫でながら寝ていた。


 シャルロットは青龍を優しく撫でていた。



---閑話---


 「皆さまこんにちは、コカビエルです。 今日のシャルロットさんは新しいお友達を作られた様ですね。しかもシャルロットさんより幼い可愛らしいお友達ですね。まああの子は大丈夫ですねきっと一時的に保護されているのでしょう。

 しかし、早く青龍さんに会えると良いのですが・・。」


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