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天使の贖罪  作者: LoveDonald
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第1章12 旅立ち



--- 運命 ---



 「おー、ロンデウス公、ご足労であったな。

 シャルロットも大きくなって。久しぶり会えて嬉しいよ。」


 「先ずは、今大会の優勝おめでとう。そして我が王子を助けてくれた事、さらにはアリーナに居たわが国民と来賓の方々をも守ってくれた事、感謝する。本当にありがとう。」


 「実はこうして呼び出したのは、フェルト魔導士から今回の大会に先立って手紙をもらっておってなシャルロットは見た目の幼さとは逆に精神的には立派に成長しているから、その出自についての経緯を教えてやって欲しいと頼まれてな。」


 王都へきた目的の一つはそれであった。フェルトはシャルロットには内緒に段取りをしていてくれたのであった。


 「フェルト先生、ありがとうございます。」


 「それでシャルロットお前の出自についてだが、私も先代王から聞いた通りの話しか出来ないのだが、10年前、先代王はドワーフの国へ行くために航海に出た。しかしその途中で嵐にあって船が難破してしまったのだ。


 その時、古の種族エルフ族の国に数人の家臣と共に流れ着き、エルフ達に助けて貰ったそうだ。


 だが、エルフ族の民は何らかの理由で毎年、天使達に多くの民が連れ去られており、その年最後のエルフの民達もつれさられてしまったそうだ。


 その時にエルフの女王から託された赤子が次代のエルフ族の女王、そうシャルロットお前なのだだ。」


 「それじゃ僕はやっぱりヒューマンじゃなくてエルフなんですね?」


 「そうだ。そうして先代王はシャルロットを連れて国へ帰って来たが、王族であるが故に、種族が違うものを自分たちの子供とするわけにもいかず、信頼の熱いロンデウス公に託す事にしたのだ。

 ここにシャルロットが成長した後に渡すよう言われていたエルフの秘蔵の書と指輪がある。


 指輪には何らかの魔鉱石が埋め込まれているがどういう属性のものなのか分かっていない。」


 そういって国王は本と指輪をシャルロットに手渡した。


 シャルロットが指輪を指に嵌めると黒銀に輝く光が溢れ出し空中に映像が映った。


 それは美しいエルフの女性で先代女王の姿であった。映像はこちらに話しかけてきた。


 「私はエルフ族の女王リーシア。

 愛しいシャルロット、私達エルフ族は大天使ルシフェル様を神として仰ぐ一族です。

 ルシフェル様は天使達の戦いの度にその魔力と命を奪われる我らエルフ族の事に心を痛め、大天使ミカエルと忌まわしき聖剣を砕く為に、大天使ベリアル様と共に天界を裏切り戦われたのです。


 しかし、結果は残念ながら・・・。


 ですがルシフェル様の力はいずれお前の元に届くと母の心眼は感じています。


 いつかお前がその力を得た時、ルシフェル様が可愛がっていた神獣を伴いルシフェル様の無念を晴らし、我がエルフ一族の復興を成し遂げてください。


 愛しいシャルロット、この様な過酷な運命をお前に託さなければならない母をどうか許して下さい。」


 その言葉を最後に映像は消えた。部屋の中は「しーん」という音がするほど静まり帰った。

 そこに居た者たちは一様に言葉が出なかった。

 いや、神や天使と言った信仰の対象である者が対象となったスケールが大きすぎる話である為、言葉が出せなかった。


 「主様!大天使ルシフェル様は魔王様の事です。主様が某と朱雀、残りの神獣たちと出会うのはまさに運命だったのです!」


 白虎が興奮気味に叫んだ。


 「ああ、そうだね白虎・・。お母さん・・。」


 「シャルロットあまりにもスケールの大きな話だがどうする? 神と戦えという事になるな。

 この世界では神を崇める者も魔王を崇める者も両方存在する。

 しかし今の話を、天使たちの非道な行いとそれを阻止すべく動いたルシフェル様の行いを知れば魔王を支持し従うと言う者が多くを占める事になると私は思う。

 シャルロット王女、私も貴方の目的の一助になりたい。」


 「先生、有難うございます。

 王様もお父様も有難うございました。

 今日の話は今しばらくは伏せておいて頂けないでしょうか?

 私もこれからどうするのか少し考えたいと思います。」


 そして舞踏会も終わりをつげたのであった。



 --- 旅立ち ---



 次の日シャルロット達はリューネブルクへの帰路についた。


 帰りの馬車の中でシャルロットは学園に入ってからの事を考えていた。

 魔法能力検査のハプニング・・、召喚合宿での白虎との出会い・・、校内対抗試合・・、学園対抗試合・・、朱雀との出会い・・、宮廷舞踏会・・、母リーシアからのメッセージ・・。


 (学園に入って短い間に色んな事があった。楽しかったなぁ。)


 そして自分に課せられた大きな使命にシャルロット押し潰されそうになり、泣きながら姉に抱き着いた。


 「ベスー。お姉ちゃん。」


 「な、なによー、シャルびっくりさせないで。」


 ベアトリスは自分の膝に伏せる妹の頭をやさしく撫でた。


 父、母、そしてフェルトと神獣たちはそれをやさしく見守っていた。


 翌日、シャルロットはエルフ族の秘蔵の書を開いてみたが、何が書いてあるのかさっぱりわからなかった。


 (やっぱりエルフの言葉でかいてあるんだよねー。さっぱり読めないよ。先生に読んでもらお。)


 本を持ってフェルトの部屋を訪れた。


 「コンコン、シャルロットです。」


 「入れ。」


 「フェルト先生、国王陛下に頂いたエルフの書なのですが、僕では読めないので見てもらえませんか?」


 「そうだな魔法やこの国の文字は教えたが、エルフの文字は教えて無かったからな。」


 そう言ってフェルトは本を受け取り開いて見た。


 「ん?なんだこれはエルフの文字ではないぞ?私にも読めん。

どういう事なんだ?何かの暗号なのか?」


 シャルロットとフェルトはしばらく本とにらめっこを続けたが

 「今の段階では分からないな。

エルフの里に行ったら何かヒントがあるかも知れないから大事に保管しておきなさい。」


 「分かりました。」


 シャルロットは自分の部屋に戻ると、ベッドに寝転がった。既に寝転がっていた朱雀がすり寄って来てシャルロットの髪を撫でていた。


 (それにしても、天使を打つとか一族の復興とかやれるかどうか分からないけど、まずは他の神獣にも力になって貰う必要があるな。)


 「白虎、朱雀、他の神獣は青龍と玄武と言ったよね?どこに居るのか分かる?」


 「玄武は東方にあるドワーフが住まう山脈に居ると聞いた事があります。」


 白虎が答えた。


 「青龍は恐らくは古の種族エルフの国の北の海に居ると聞いております。」


 朱雀が答えた。


 「よし、僕は旅に出るよ。

まずは玄武と青龍を仲間にするのが目的だ。

お前たちも来てくれるか?」


 「御身のままに」


 「そうと決まればフェルト先生にも報告してこよう」


 そう言うとシャルロットはベッドから飛び降りフェルトの部屋へかけて行った。


 「コンコン・・シャルロットです。」


 「入れ。」


 「フェルト先生、僕決めました。

旅に出てまずは残りの神獣を探そうと思います。」


 「行く当てはあるのか?」


 「玄武はドワーフの国の山脈に、青龍はエルフの国の北の海に居ると白虎・朱雀から聞いています。

それに自分が生まれたエルフの国にも行って見たいのです。」


 「そうか、学園の方もこれ以上お前が居てもイメルダが気を揉むだけだろうし、先ほどのエルフの書もエルフの里に行かない事にはあの文字が読めるかどうかも分らんからな。

私も保護者として同行しよう。」


 「本当ですか?でも私の事に先生を巻き込むなんて。

ご迷惑じゃないですか?」


 「なーに、お前といた方が退屈しなさそうだ。

それに、 「ビジブル」 こういう事だ。」


 「え!? フェルト先生、それは、」


 フェルトの耳が尖ったシャルロットのエルフの耳と同じになった。


 「実は私もエルフ、お前の同胞だ。

父と母が、エルフ族が度々天使に攫われていく状況を案じエルフの里から逃がしてくれたのだ。

その後はヒューマンとして魔法で生計を立て王都で暮らしていた。

そしてシャルロットお前の存在を知り、この屋敷に移って来たのだ。」


 「シャルロット王女様、ミカエル打倒に、エルフの里の復興に、この身をお使いください。」


フェルトは跪いてシャルロットに忠誠を誓った。


 「先生、止めて下さい、どうかお立ち下さい。」


 「王女様、先生は止めてください。

フェルトとお呼び下さい。

 しかしそうは言っても貴方様が王女である事が他に知れる事は不要の災いを招く事になるでしょう。

ですので敢えて今まで通りシャルロット、シャルと呼ばせて頂きます。

私の事はフェルトと及び下さい。

それとお互いこの耳は、「インビジブル」 このようにヒューマンの耳として隠しておきましょう。」


 「わかりました先生、でもこの屋敷に居る間はせめて先生と呼ばせて下さい。

それと先生が私の同族であると分かった事が、私にとってどれだけ心強い事か知っておいて下さい。」


 「わかりました。では明日にでも旅立ちましょう。

私もイメルダに手紙を書いておきます。

ベアトリスには修行の旅に出るとでもしておきましょう。

神獣を仲間にしたらまた戻って来るのですから。」


 「公爵夫妻にも今夜その話をしましょう。」


 夕食が済んだ後、皆それぞれの部屋へ分かれて行き、シャルロットはフェルトの部屋へ行くと二人で公爵の部屋へ行った。


 コンコン・・・シャルロットです。


 公爵夫人が扉を開けた。


 「まあシャルロットさあ入って。あらフェルちゃんもどうぞ。」


 「お父様、お母様、私は王都で自身の出自を知りました。そしてこの身に大きな期待が寄せられている事も知りました。

私は明日、神獣たちとフェルトを伴い、残りの神獣を仲間にする旅に出ようと思います。

しばらく会えなくなりますがどうかお許し下さい。」


 「エルフの王女様、そうお決めになられたのであれば我らに何ら異論はございません。後はどうかご無事で戻ってきてください。」


 「ロンデウス公爵様、奥様、私も実はシャルロットの同胞エルフの一族です。

訳あって長年ヒューマンとしておりましたが、私もシャルロット王女と共に明日旅立ちます。」


 「そうだったかフェルト魔導士が同行してくれるなら心強い。

どうかシャルロット王女様を宜しく頼む。」


 「お父様、お母さまシャルロットはいつまでもお二人の娘です。

王女様なんてお呼びにならないでください。」


 「嗚呼、シャルロット。私の愛しいシャルロット。」


 母はシャルロットを抱きしめた。そして、


 「きっと無事に戻って来るのですよ。」


 フェルトは部屋に戻り、シャルロットはベスの部屋へ行った。


 「お姉ちゃん今夜は一緒に寝ようよ。」


 「何?シャル、怖いの?」


 「うん」


 「いいわよ、おいで。」

 「お姉ちゃん、僕、明日からフェルト先生と修行の旅に出るよ。」


 「え?どうしたの急に!」


 「イメルダ先生とフェルト先生でお話してそうなったみたい。

 ほら白虎とか朱雀とか連れて学校行くのも良くないし。」


 「修行の旅って何処へ行くの?いつ帰るの?」


 「色んな国の魔法機関で試合や交流をしてくるの。

 帰りは・・まだしばらく先かな。」


 「そうなんだフェルト先生がいるなら安心だけど、でもお姉ちゃんは心配だよー。」


 そういってベアトリスはシャルロットを抱きしめた。


 (あの日も、初めてこの子と会った日もこうして寝たんだな・・)


 ベアトリスの寝息が聞こえて来た。


 「お姉ちゃんお休み・・。」


 「お休みシャル・・ロット・・」


 翌日、ベアトリスより早く起きたシャルロットはベアトリスを起こさない様にそっとベッドから出た。


 身支度をして朝食を食べて手荷物の準備をした。

 馬車はラインハルト公爵が準備してくれた。


 「お父様、お母さま、行って参ります。」


 「気をつけてな。」


 「早く帰ってらっしゃい。」


 「はい。」


 シャルロットとフェルト、白虎が馬車に乗り、朱雀が御者を務めた。


 馬車が動き出したとき、


 「シャルー!」


 ベアトリスが3Fの自分の部屋から叫んでいる。


 「ベスー!お姉ちゃーん!行ってきまーす。」


 「いってらっしゃーい!」


 シャルロットは涙が出そうになったが新たな旅立ちに笑顔で出発するのであった。




---閑話---

「皆さまこんにちは、コカビエルです。 今日のシャルロットさんは、おやおや、何処かに出掛けるのかな? 病気がちでしたがすっかり元気になった様で何よりですねー。それとお仲間が一人増えた様ですね。お姉様とは違いますしどういったご縁の方でしょうか?

まあそれは置いといて、そろそろステータスの確認をと、うん?あれ?MP20? Maxを超えてその2倍? ってどういう事ですか? ユニークスキル?って何のスキル?

 アイテムは魔王石の指輪?いやこれ神のアーティファクトじゃないですか? 成長はえ? あ、成長はあまりしてないですね? って、種族エルフって何ですか?この星にはエルフは居ないはず!?

 いや成長していないのにこのステータスとか居ないはずのエルフとか何でしょうか!? 神の理をすっかり超えているじゃないですか!?

 ちょっとこれは直接コンタクトを取る必要がありますねー。」



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