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天使の贖罪  作者: LoveDonald
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プロローグ 転生

プロローグ 転生


 --- 善悪の戦い ---


 宇宙。


 大小様々な銀河が所狭しとひしめき合う暗黒の宇宙。


 神々が創り給うた数多の銀河が一つ天の川銀河の端でひっそりと神と魔王の一騎打ちが行われていた。


 天使、白い衣を纏い白い翼で宙を舞う大天使。その手には聖剣を携え圧倒的な力で魔を打つ善の象徴。


 悪魔、漆黒の衣を纏い漆黒の翼で宙を舞う天使の理から外れた堕天使。その手には禍々しい漆黒の魔槍を携え絶対的な魔力で天使に抗う魔の象徴。


 その両者が対峙する・・・。

 二人共持てる力を尽くし、お互い最後の一手を打つタイミングを見計らっていた。


 「ルシファーよもう逃げ場は無いぞ、このまま太陽の消し炭にしてくれる!」


 大天使ミカエルはそう言い放つと、太陽を背に逃げ場をなくした魔王ルシファーに聖剣エクスカリバーを振り抜いた。それと同時にルシファーも、


 「ミカエル、お前の罪を断罪するまで、私はまだ終われぬ!」


 そう言い放つと左手に持ったロンギヌスの槍に自らの魂を黒銀の光に変えて纏わらせミカエルの後方めがけて投擲した。


 そしてミカエルのエクスカリバーの刀身が瞬時に伸びたかのように溢れ出た光がルシファーの体を真っ二つに切り裂いた。


 ルシファーの放ったロンギヌスの槍は放物線を描きミカエルの後方、青い惑星「ガイア」の太洋に突き刺さりその衝撃波で大気や海、そして陸地までをも一瞬にして剥ぎ取り、煮えたぎるマグマの惑星へと姿を変えてしまった。


 ほどなくして冷えた地表は黒く静まり返り、宇宙を彷徨うただの岩石へと変化した。その惑星の周りにはつい先程まで生を営んでいた白い蛍の様な数十億の魂の光とそれに紛れる様に一つの黒銀の光が漂っていた。


 「くっ、ルシファーのやつめ、的外れもいいところだ。」


 太陽の業火に焼かれ嘲笑う魔王ルシファーの消え行く影を一瞥し、大天使ミカエルは右のこめかみに指先を押し当て念話を送った。


 「ウリエル、ルシファーのやつガイアを破壊してくれたわ。」


 「あの惑星はかなり高次の精神レベルにまで至っていた惑星だ。神災プロトコルを発動し魂の救済を開始せよ。」


 「了解致しましたミカエル様。」


 「うむ、それと、やつめ最後にロンギヌスを使った。よもや呪われた魂があるかもしれん。1世代までの魂の監視を怠るな。」


 「は、抜かりなく。」


 「・・ルシファー・・ルシフェルめ、いつまでも禍根を残してくれる・・」


 そう言うとミカエルはその空間から姿をけした。



 --- 混濁の記憶 ---



 ミカエルの命を受けたウリエルは全銀河の恒星系の守護者達に念話を送り破壊されたガイアの魂の救済プロトコルを進めていた。


 そして大マゼラン銀河のある恒星系でも、


 「・・・コカビエル、・・・コカビエル、コカビエル!」


 うたた寝をしていたコカビエルは椅子から落ちそうになった。


 「ハ、ハイ!ウリエル様!」


 「ったく何をしているのだ!辺境だからと言って念話が遅れる訳でもあるまい!


 「ハイ、申し訳ありません。」

 

 「もう良い、それより銀河系で神災が発生した。

 ミカエル様とルシファーの戦いに太陽系のガイアが巻き込まれた。

 ミカエル様の命により神災プロトコルを発動し、辺境の地にも1魂転送する。

 プロトコルに則って魂の救済を開始せよ。

 尚、ロンギヌスの影響を考慮し1世代の監視を実施する様に。」


 ウリエルの面倒臭そうな命令を受けたコカビエルは、


 「りょ、了解しました。ウリエル様!」


 見えないにも拘わらずオーバーな敬礼をしながら返事をした。

 念話が切れると同時に、


 「どうせ私は辺境の惑星担当ですよーだ。いつか私だって銀河を任せられる大天使となって命令する側に立ってやる。」


 そして数年の月日が流れ、凍結されていた魂が目覚めた。


 漆黒の闇の中で意識だけが浮遊している感覚・・。 

 顔、体、四肢に至る感覚がない。


 「暗い。ここは・・どこだ・・。 私は・・私は誰だ・・。」


 数年前ガイアが破壊されるまでは普通にサラリーマンをしていたはずの魂がそこにあった。


 しかし彼は何故自分がそこにいるのか、そことは何処なのか、そもそも自分は何者なのか、闇に浮遊する意識となった今、全く判らないでいる。


 「さてさて、次はと・・・あー、ウリエル様から念話があった例の神災ですね・・・」


 ふいに声がした。声というより自分のものではない意識がすぐ近くに現れたと言った方が良いか。


 「全く大天使様も魔王様も無慈悲ですよねー。何十億の命が一瞬ですものね。

 うちの恒星系にはあなただけですが何十億の魂が何十億の惑星で一斉に転生だなんて天使の仕事も大変ですよ。」


 「誰だ、 誰かいるのか?」


 「・・と、それと神災オプシオンで、フル属性とMPマックス、きおくー、記憶は継続?消去?あ、消去ですね・・。」


 別の意識は何かぶつぶつ言っているが自分への応答はない。


 「おい、何いっているんだ・・返事をしてくれ!・・」


 「えーと、ちょっと待って下さいね・・・。あとは、転生先ですねー、えーと、あら?タイミング悪いですねー、うちの惑星は人類種少ないんですよね、では終末魂の検索と、あ、あります、あります、1件あります。歳は5歳ですね、それと世代カウント1世代までは監視です、と。


 「しかし5歳で生涯を終えるとは気の毒な子ですねー。」


 後はちょいちょいと、よしよし、できました設定完了です。 貴方には悪いのですが別の星で転生してもらう事になりました。

 残念な事に貴方の星は無くなってしまいました。

 ですが心配なさらない様に、人類種は少ないですが同じ様な元素で出来た世界ですし、私との念話も転生されましたら記憶には残りません、きっと直ぐに慣れると思います。

 ただ貴方の生い立ちはちょっとややこしい事になっている見たいですが・・。

 まあそれも人生の愉しみの一つという事で、では良い人生を・・・。」


 「ちょっ、待って、・・・」


 叫ぶのもお構いなしに彼の意識は突然に漆黒の闇から光の中に放り出されたのだった。



 --- 転生 ---


 ベッドの上で幼い少女が横たわっている。その命の火が消えそうなのは直ぐに見て取れた。

 ベッドの周りにはその家族たちが何も出来ずに悲しそうに見つめている。

 何故か僕はそんな様子を部屋の隅の上から眺めている。誰もそれには気づいていない不思議な感覚だ。


 「シャル、頑張って! お医者様はまだ来ないの!?」


 母親と思われる女性が少女の手を取り呼びかけているが、少女の鼓動は細く呼吸も途切れ途切れで今にも止まりそうである。


 ベッドの周りには万策尽きた表情の父親と必死に祈る祖父母と姉。


 その時ドアをノックする音がして医者と思われる老いた男が入ってきた。


 「先生、シャルをシャルロットを助けてください!」


 母親が必死に懇願し、医者は早々に診察を始めた。


 「・・いかん・・」


 医者はつぶやくと、毛布を払いどけて少女の胸に手を当て


 「ヒール!」


 少女の胸に魔法陣が展開し緑色の光が浴びせられた。


 それから一定のリズムで胸を押し心臓マッサージを繰り返す。


 しばらくして脈を取るとまたマッサージを行った。


 20分ほど繰り返し再度脈をとると、目線を下にし、


 「残念じゃが、既に手遅れじゃ・・・。」


 医者がそう告げるとその場に母親は泣き崩れ、姉も泣き喚いた。


 父親も目をつむり涙を必死にこらえている。


 ほどなくして少女の呼吸と脈は止まってしまった。

 すると少女から白い影がスッと立ち上がり、僕のほうへ向かって飛んできた。周りの者は気づいていない様である。

 少女の影は僕に向かって優しく微笑み、


 「貴方に託すわ・・・。」


 誰もが少女は死んでしまったと悲しみに暮れる中、突然、窓ガラスがガタガタと振動し、少女のお腹の辺りが光を放ちはじめた。


 その光は光と呼ぶにはあまりに異質な光で黒く銀色に輝いていた。

 光は徐々に強く眩しく輝き出し机や椅、ベッドもギシギシと振動し始めた。

 ほどなくして光も振動もピタリと音がするほど突然に消えた。


 次の瞬間、少女は大きく深くまるで水の底から飛び出てきたかの様に息を吸い込み、上半身をはね起こした。


 「ぷっ、はぁーーっ、はぁ、はぁ・・」


 先ほどまで部屋の隅から見下ろしていた僕は逆に部屋の中の者たちに見下ろされていた。


 誰もが息を飲み唖然とした表情で少女を見つめる中、母親が少女を抱きしめ泣き喚いた。


 「嗚呼ーっ神様!、私のシャル、シャルロットー。」


 「せ、先生、どういう事ですか!シャルロットは助かったのですか?」


 父親が怒鳴る様に医者に尋ねると。慌てた医者もシャルロットの脈や呼吸音、体温を観る。


 「うむ、熱も下がっているし、脈拍も安定している。何より意識がある。

 こんな事は初めてじゃ、まさに神の思し召し・・そう奇跡じゃ。

 取り敢えずは大丈夫だろうが、しばらくは安静にする事じゃ。また明日にでも様子を診に来る。」


 そういうと医者は部屋から出て行った。


 部屋中の者たちが喜び涙を流すなか、ただ一人、当のシャルロットだけはキョトンとした表情でいた。


 「よく頑張ったわね、愛しいシャルロット。」


 「さあ、今夜はもう遅いからよくお休み。 お前もシャルを少し休ませてあげなさい。」


 父親がそう言うと、母親は頷き名残惜し気にシャルロットの手を離した。


 ほどなくして部屋からはだれもいなくなり、シャルロットと呼ばれた少女がベッドで一人寝ているだけとなった。


 (何だ、何処なんだここは? さっきの人たちは誰だ? 知らない人たちばかりだった。そもそも自分は何処の誰なんだ? 記憶が無い。皆、私の事をシャルロットと呼んでいたがそれが私の名前なのか? なんあだか悪い夢を見ているのかひどく疲れた、もう寝よう・・。)


 取り止めの無い考えを手放し少女は睡魔に引き込まれる様にして眠りについた。

 (よしよし、うまく転生出来た様ですね。後は魂の定期監視と・・。)



--- 閑話 ---


 「皆さま御機嫌よう。私の名前はコカビエルと申します。一応 天使をやらせて戴いております。

 天使の仕事は何かですって? 天使の仕事は楽ではありません。

 輪廻転生を司り、担当惑星の人口管理に、時には偶然という奇跡を起こし、なにより人々の神への信仰を促さねばなりません。大変なお仕事なのです。

 どうか皆さまも人生に迷いをお感じになった時は私共天使にご一報下さい。」

 

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